頭の中は魑魅魍魎

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『判決破棄』マイクル・コナリー

2018-10-04 | books
LA刑事のハリー・ボッシュシリーズと、リンカーン弁護士(固定した事務所を持たず車の中が事務所)のミッキー・ハラーシリーズの融合作品。

弁護士のハラーは地区検事長から呼び出される。一時的な検事をやって欲しいとのこと。24年前に、ジェサップという男が少女を殺害した事件。新たなDNA検査によって、被害者の服に付いていた精液は、被告のものではないと分かった。既に24年も刑務所にいるので、告訴を取り下げれば莫大な額の賠償金を払わねばならない。再審となれば勝たねばならないが、検事局では多くの者が以前の事件に関わっているので、無関係の者に検事として裁判を取り仕切って欲しいとのことで、ハラーに依頼が来たのだ。難しい事件ではあるが、元妻で左遷された検事のマクファーソンとボッシュに手伝わせてくれるならと了承する。対する弁護士はなかなかの辣腕。ボッシュの捜査から様々なことが分かるが、果たして裁判に勝てるのか・・・

ううむ。面白い。面白過ぎる。トゥインタラスティングだ。

ボッシュとハラーそれぞれの目線で、章を交互に描かれる。捜査も面白いのだが、なんといっても法廷のシーン。たまらなく面白い。

陪審員は事件についてニュースを観たり新聞を読んだりしてはいけないことになっているけれど、もしそうしてしまったらどうなるのかとか、証拠の扱い方、証人の扱い方など、裁判におけるテクニックがこれでもかと出て来る。私はアメリカのリーガル・サスペンスを読むのが好きなのだけれど、一つはこの裁判で見られる闘いや闘いの技術に興味があるからだと思う。スポーツが面白いのはルールがあって、その上で闘うからだと思うけれど、裁判も同じように、ルールが厳密に決められた(しかも素人読者の私はそもそもルールに詳しくないので、ルールそのものを知るのも楽しい)ある種のスポーツなわけで、だから楽しんで読めるのだと思う。

途中の、身の毛もよだつようなシーンや、ラストの意外な展開などがわ単なるリーガル・サスペンスでない、極上のエンターテイメントに仕上げてくれる。とってもオススメ。シリーズものなので基本的には前の作品から順に読んだ方がよいのだけれど、本作はあまり以前の件が関係ないので、ここから読み始めるという手もあり。


判決破棄 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)
マイクル・コナリー
講談社
判決破棄 リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)
マイクル・コナリー
講談社



今日の一曲

Mr. Bigで、"To Be With You"



先日飛行機で隣に座った女性。何というか周囲のことを完全に無視している様子で、あまり感じのいいひとではなかった。しかし後で考えてみたら、中国か韓国の人で、日本語を解さないがゆえの挙動だったのかも知れないと思った。彼女の着ていたパーカーには、2017 Mr.Big Japan Tourと書いてあった。では、また。

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