平安夢柔話

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『なんて素敵にジャパネスク』 読了

2007-03-13 09:15:30 | 読書日記
 先週水曜日に、再読していた「なんて素敵にジャパネスク」全十冊を読み終わりました。風邪をひいてしまったために一時中断してしまったので、結局4週間かかってしまったのですが(ちなみに4年前に初めて読んだときは20日間で全十冊を読了しました)、それでも私にしては速い方です。それだけ夢中になってしまったということでしょうね。

 読み終わった感想を一言で言うと、とにかく「面白かった」です。最後の最後まではらはらどきどき、そして、泣かせてくれました~。それで、せっかくなので読みながら思ったことや考えたことを少し書かせていただきますね。

 2月13日の日記でも書きましたが、初めて読んだとき、私、読む順番を間違えてしまったのですよね。それで今回は正しい順番(『2巻』→『ジャパネスク・アンコール!』→『続ジャパネスク・アンコール!』→『3巻』)というように読んでみました。すると、4年前とは全く違ったおもしろさを味わうことができました。特に、守弥に心ひかれる瑠璃姫にすっかり感情移入してしまいました。

 吉野で記憶をなくして迷い込んできた峯男と、高彬の従者の守弥が同一人物かもしれないとわかったときの瑠璃姫の驚き、そして、白梅院で再会したときのどきどき感…。それら一つ一つが心に迫ってくるように思えて、私もどきどきしてしまいました。どうしても忘れられない吉野君とそっくりの声で、「もうお帰りなさい」と言われ、それで心が救われた瑠璃姫ですから、守弥にどきどきする気持ちわかるなあ。
 
 4年前に3巻や4巻の守弥に関する場面を読んだときは、『続ジャパネスク・アンコール!』をまだ読んでいなかったので、いまいちぴんと来ませんでした。今回は正しい順番で読んだので、この場面を堪能できました。これから『なんて素敵にジャパネスク』を読まれる方、くれぐれも読む順番を間違えないで下さいね。

 煌姫に関しても、4年前とは全く違うイメージを持ちました。4年前はいきなり、新三条邸に居候することになった煌姫と巡り会わされたので、彼女が何者なのかいまいちわからなくてとまどってしまい、どうもぴんと来なかったのですよね。煌姫が守弥と組んで、瑠璃姫と高彬の仲を引き裂こうとした…ということを瑠璃姫に打ち明けたときも、「これって煌姫の作り話では?」という、とんちんかんなことを思ってしまったのでした。

 でも今回は、煌姫と守弥の陰謀の場面を『ジャパネスク・アンコール!』ですでに読んでいますから、「そうそう、そうだったのよね~」という感じでうなずきながら読んでいました。そして、「私はまだ、高彬さまと契ることをあきらめていませんのよ。」と言いたげな煌姫のリアリストぶりがひしひしと伝わってきました。

 それにしても登場人物が個性的ですよね~。そこが、この小説の魅力なのでしょう。まず、主人公の瑠璃姫が風変わりですし…。でも明るくてまっすぐで、曲がったことが大嫌いなところはやっぱり大好きです。あんな風にまっすぐに生きられたら本当に良いでしょうね。瑠璃姫の腹心の侍女の小萩の忠誠ぶりには感動しますし、煌姫はリアリストだけど本当はすごく優しい性格の女性だということもしっかりと書かれていてすっかり感情移入してしまいました。

 あ、そうそう、4年前にはほとんど注目しなかったのですが、今回再読してみて印象に残ったのは由良姫です。あのまじめな高彬の妹かと思うくらい、情熱的な姫ですね~。入内を嫌がって家出したり、突然髪を切ってしまったり…。由良姫が傷心したままで物語は終わってしまいましたけれど、瑠璃姫の弟の融と結ばれると良いなと、個人的に思ったりしました。

 それと、「源氏物語」を連想する登場人物も何人かいました。落ちぶれた宮家の姫、煌姫は、末摘花を連想してしまいます。でも、性格や行動は末摘花とは全く違いますが…。
 また、後見のない桐壷女御は、光源氏の母、桐壷更衣を連想してしまいます。そういえば桐壷という殿舎は、帝が還御している清涼殿から一番離れているとか…。なので、あまり実家の権勢が強くない后妃が入る殿舎だったのかもしれません。そのあたり、調べてないのではっきりわからないのですが…。機会があったら調べてみますね。

 …というように、今まで女性の登場人物のことばかり書いていたのですが、男性の登場人物も負けず劣らず魅力的です。

 危うく殺されそうになった瑠璃姫の前に、馬に乗って白馬の王子様さながらにグッドタイミングで現れた鷹男、頭が良く、策略を巡らそうとするけれどなぜか抜けている守弥、何事にも動じず、愛する人のためなら命を賭けてくれそうな帥の宮、みんな素敵ですけれど、やっぱり高彬が一番好きです。というか、今回再読してみて、ほれ直しました。

  吉野君を逃がそうとして馬に乗って飛び出したものの落馬をしてしまった瑠璃姫に向かって、「もう気はすんだかい?」と言ってみたり、吉野君のことを忘れられない瑠璃姫を責めるのではなく、優しく包み込むところなどは本当に「いい男だなあ」と思いました。「僕で我慢しなよ。」にはしびれます。

 そして物語の最後の方での見事な活躍…。このことに関しては、山内直実さんのコミック版がまだ別冊「花とゆめ」にて連載中なので、原作小説を読んでいない方のために詳しいことは書きませんが、本当に瑠璃姫のことが好きなのだなと思いました。瑠璃姫が都にいてはまた、いろいろなことに首をつっこんでややこしいことに巻き込まれてしまうので、さりげなく鳥羽の鴛鴦殿に逃がしてしまうあたりにも、瑠璃姫に対する愛情を感じます。瑠璃姫が、「私はやっぱり高彬が好き!」と実感するところも感動的でした。

 さて、『なんて素敵にジャパネスク』は、帥の宮事件が決着するところで終わっています。でも、吉野君がどうなったのかとか、融の恋野行方とか、まだかたがついていないことも結構あるのですよね。それで、続きを読んでみたいなあという気持ちはあります。しかし、今回再読してみて、「やっぱりこの小説はここで完結しているのでは?」という印象を受けました。そして、あとは自由に想像すればいいかなと…。上でもちょっと書いたように、融と由良姫が結ばれるとか、高彬と瑠璃の娘が鷹男と承香殿女御との間に生まれた皇子に入内するとか…。そんなことを考えると楽しくなってきます。

 とにかく、少女小説だからといって馬鹿にできないくらい、恋愛あり、ミステリーあり、陰謀ありの変化に富んだ、はらはらどきどきの物語でした。楽しませて下さった、作者の氷室冴子さんに感謝です。

 ところで、こういった面白い小説を読んだあとに読む本って、何を読もうかすごく迷うのですが…、幸い、「なんて素敵にジャパネスク」のあとに読み始めた本もなかなか面白くて、読書に夢中になっています。鎌倉時代の休廷を舞台にした杉本苑子さん著の『新とはずがたり』という小説なのですが、こちらは読み終わりましたら「図書室3」の方で紹介したいと思っています。

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