先日、「図書室3」のカテゴリで紹介した「北条政子」を読んで、頼朝や政子とその周辺人物、東国武士団についてもちょっと興味が出てきたので、同じ永井路子さんの著書であるこの本を読んでみました。面白かったのでこちらで紹介いたします。
☆源頼朝の世界
著者・永井路子 発行・中央公論新社 中公文庫 価格・680円
本の内容紹介
東国武士団の棟梁源頼朝を変革の時代の中に描く。ー平氏による貴族政権に立ち向かってついに壊滅させ、はなやかに歴史の表舞台におどりでた頼朝と、北条政子や東国武者らをめぐる権謀術数うずまく激烈な抗争のドラマ。
☆もくじ
源頼朝を巡る人びと
源 頼朝
北条政子
頼家と実朝
比企尼と阿波局
北条義時
逞しき東国武者
三浦一族
伊豆の軍団
荒野のつわものたち
西国の権謀家たち
後白河法皇
源 通親
後鳥羽院と藤原定家
あとがき/解説
この本は、鎌倉幕府の創設者である源頼朝と、彼を巡る多くの人々の生の軌跡を紹介したものです。
永井路子さんの歴史エッセー全般に言えることなのですが、この本もその例にもれず、人物が生き生きしていてとても身近に感じられ、かつ斬新でわかりやすいです。
源頼朝は、「この人のためなら何かしてあげたい」と思わせる雰囲気を持っており、それが彼の運の良さにつながった…という永井さんの頼朝論は面白かったです。
また、彼を取り巻く東国武士団、特に、鎌倉幕府の主導権を巡って北条氏に70年にわたる戦いを挑んだ三浦一族に興味を引かれました。
頼朝と東国武士団を結ぶパイプ役として、乳母の比企尼の存在があったというのも興味深いです。つまり彼女の養子が比企能員、娘婿が河越重頼と安達盛長であり、彼らは流人時代から頼朝に奉仕していたようなのです。河越重頼は娘が義経に嫁いだ関係で失脚してしまいますが、比企能員と安達盛長はのちに、鎌倉幕府の重要人物になるのですよね。比企尼の存在がどんなに大きかったかがわかるというものです。今まで私は、東国武士団に関してはあまり関心を持っていなかったのですが、なかなか魅力的で面白い人が多いなととても新鮮に感じました。永井さんも本文中で述べていますが、新しい時代を作っていくのはこういう人たちなのだな…と強く感じました。
それと同時に、私が以前から関心を持っている京の朝廷側の人たちについても触れられていて嬉しかったです。
激動の時代の中で右往左往していたような所がある後白河法皇、権力に対しては常に積極的な源通親…。特に、「通親は鎌倉幕府を倒そうという野望を持っていたのかもしれないが、彼の本質は朝廷や貴族の権威という古い体質であり、新しい時代の担い手にはならなかったのではないか。」という永井さんの見解はなるほどと思いました。
藤原定家と後鳥羽院との息詰まるような人間ドラマも面白かったです。
この本を読んで思ったことは、「鎌倉幕府は最初から北条氏が権力を握っていたわけではない。」「京の朝廷を抜きにして、初期の鎌倉幕府は語れない。」の二点です。つまり初期の鎌倉幕府は、京と鎌倉の多くの人が関わり合い、絡み合って成り立っていたということでしょうか。この本でぜひ、そんな魅力的な人たちのいきざまを堪能してみて下さい。
☆源頼朝の世界
著者・永井路子 発行・中央公論新社 中公文庫 価格・680円
本の内容紹介
東国武士団の棟梁源頼朝を変革の時代の中に描く。ー平氏による貴族政権に立ち向かってついに壊滅させ、はなやかに歴史の表舞台におどりでた頼朝と、北条政子や東国武者らをめぐる権謀術数うずまく激烈な抗争のドラマ。
☆もくじ
源頼朝を巡る人びと
源 頼朝
北条政子
頼家と実朝
比企尼と阿波局
北条義時
逞しき東国武者
三浦一族
伊豆の軍団
荒野のつわものたち
西国の権謀家たち
後白河法皇
源 通親
後鳥羽院と藤原定家
あとがき/解説
この本は、鎌倉幕府の創設者である源頼朝と、彼を巡る多くの人々の生の軌跡を紹介したものです。
永井路子さんの歴史エッセー全般に言えることなのですが、この本もその例にもれず、人物が生き生きしていてとても身近に感じられ、かつ斬新でわかりやすいです。
源頼朝は、「この人のためなら何かしてあげたい」と思わせる雰囲気を持っており、それが彼の運の良さにつながった…という永井さんの頼朝論は面白かったです。
また、彼を取り巻く東国武士団、特に、鎌倉幕府の主導権を巡って北条氏に70年にわたる戦いを挑んだ三浦一族に興味を引かれました。
頼朝と東国武士団を結ぶパイプ役として、乳母の比企尼の存在があったというのも興味深いです。つまり彼女の養子が比企能員、娘婿が河越重頼と安達盛長であり、彼らは流人時代から頼朝に奉仕していたようなのです。河越重頼は娘が義経に嫁いだ関係で失脚してしまいますが、比企能員と安達盛長はのちに、鎌倉幕府の重要人物になるのですよね。比企尼の存在がどんなに大きかったかがわかるというものです。今まで私は、東国武士団に関してはあまり関心を持っていなかったのですが、なかなか魅力的で面白い人が多いなととても新鮮に感じました。永井さんも本文中で述べていますが、新しい時代を作っていくのはこういう人たちなのだな…と強く感じました。
それと同時に、私が以前から関心を持っている京の朝廷側の人たちについても触れられていて嬉しかったです。
激動の時代の中で右往左往していたような所がある後白河法皇、権力に対しては常に積極的な源通親…。特に、「通親は鎌倉幕府を倒そうという野望を持っていたのかもしれないが、彼の本質は朝廷や貴族の権威という古い体質であり、新しい時代の担い手にはならなかったのではないか。」という永井さんの見解はなるほどと思いました。
藤原定家と後鳥羽院との息詰まるような人間ドラマも面白かったです。
この本を読んで思ったことは、「鎌倉幕府は最初から北条氏が権力を握っていたわけではない。」「京の朝廷を抜きにして、初期の鎌倉幕府は語れない。」の二点です。つまり初期の鎌倉幕府は、京と鎌倉の多くの人が関わり合い、絡み合って成り立っていたということでしょうか。この本でぜひ、そんな魅力的な人たちのいきざまを堪能してみて下さい。