漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

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上田早夕里著「破滅の王」戦争と科学、人類の道は?圧巻の長編

2020-07-09 | 

世界中が戦争をしていた1930~40年代の物語。関東軍防疫給水部本部、細菌戦...
上海自然科学研究所の細菌学者に、軍の手がのびじわじわと戦争に巻き込まれる。

終わりの見えない戦争をどう終わらせるか?

ある細菌学者は、強毒性の細菌を見いだし、まんまと菌株を複数の外国に分けた。
きっと誰かが菌を撒く、抗菌対策がないままに敵味方なく感染死者が増えれば、世界は戦争を止めて協力するだろう、戦争を終わらせるための死人は、仕方のないことだと。

フィクションだが、登場する実在した人物たちが、上田早夕里さんの圧倒的な筆力を借りて物語りを紡ぐ。 
巻末の参考文献は、日中の戦争からナチス、細菌学まで6ページに及んでいた。

圧巻の長編でした。

そして驚くべきことに、細菌R2v(キング)はまだ世界にあって、
その感染者は、1943年に見いだされてからこの物語が書かれた2017年で6億人以上、死者は5億人以上、
いくつかの抗菌剤が開発されたが未だに対策はない。

戦争の暗部まで端折ることなく書き尽くす上田早夕里、きっと気持ちの熱い人だと思う。 

昔読んだパティスリーの物語も菓子知識と菓子職人の現場の厳しさが凄かった。



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