漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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硫黄島からの手紙(映画)

2006-12-15 | 映画
家族に届けられた手紙の内容で、切なく涙を流すのかと思ったら
ずいぶん違った展開でした。
この「硫黄島からの手紙」の意味は、現代にやっと明らかにされた
硫黄島の現実をこの映画で届けるということだったのだろう。


硫黄島の地下を迷路のように掘り、逃げ込んだ日本兵たちに
とって手紙は、逃げ場のない世界からの心の逃亡だったん
だろうと思う。

劇中での手紙の内容は、妙に明るくのんきだったりして、
現実との大きすぎるギャップに心が痛む。

実際、戦争中に運よく家族の元に届いた手紙は、ごく一部で
しかも検閲を通過したものだから、硫黄島の苦しみがどれだけ
届いていたか定かではない。

この物語は、
届くことができなかった、手紙の内容、手紙を書く兵士たちの
思いを表現したかったのではないか。

実際はこうだったんだ、と。

この映画の最後の、
戦後、硫黄島の調査に訪れた人々によって、地下壕の泥の中から
数多くの手紙が掘り出され、あふれ出るように落ちて広がる様が
印象的だった。


それにしても、人の運気は神によって弄ばれているのか、
この泥沼の戦いの中では、大いに狂わされる。
皮肉の連続だ。
勇敢な者、忠実な者は死んでいき、良くも悪くも「意外」な
人物が生き延びる。
だから生き延びた者は、深い悲しみと狂気をずっと引きずって
行かなければならないんだろうな。

そして、
捕虜として大事にされたり、あっけなく殺されたり、
さらには、味方に殺されたり。

この映画の中では、日本人対アメリカ人という単純に線引きした
形では描かれてはいない。
あくまで人の運命は、人対人の出会い次第だということなんだろう。


こちらも★の数を決めるのは申し訳ないけど・・・
同じ日本人で感情移入しやすいぶん、邪念も多くなって
★★★☆


監督クリント・イーストウッド

出演 渡辺謙 二宮和也 伊原剛志 加瀬亮 中村獅童