江戸糸あやつり人形

江戸時代から伝わる日本独自の糸あやつり人形。その魅力を広めるためブログを通して活動などを報告します。

益田の糸操り 本番

2010-04-01 00:01:55 | 人形について
僅か3ヶ月、7回の稽古でどこまでいけるか、全く五里霧中だった。
初めにも書いたと思うが、そもそも私を受け入れてもらえるかどうかが問題だった。

事前にDVDで確認はしていた。
技術的なところ、芝居そのものへの解釈、演出などなど。
技術的なところはある程度教えるとしても、限られた回数でしっかり身に付くとは
思えない。
表現する、芝居をするには、いろんなことを自分で考えなければならない。
そのきっかけになればよいと考えていた。

1回目はご挨拶と実際に人形を遣って見せてもらった。
2回目から本格的に稽古と思いきや、人形が相当に痛んでいる事に気付いた。
このまま稽古をしても、とてもじゃないけれども人形を遣えるようにはならないと
3回目から人形を直し始める。
ところが始めてみると、半端じゃない。
結果全ての人形を手直しした事になった。

人形は、技術的につたなくとも、なにを伝えたいのかしっかり意識していれば
観客に伝わるものだ
そう師匠に教えられてきた。
私は同じことを益田の人にも伝えていく。
一つのシーンをとっても、登場人物のいろんな思いが交錯する。
一人の人間の中に二重、三重の思いがあったりする。
そこをどう表現するか、それによってドラマが動くのですよ。
そうやって教えているとき、ふとそういえば考える役者がいなくなったなと思ってしまう。
何も役者に限った事ではない。
高村薫さんは、世の中には考えない人が多すぎると怒りまくっていた。

本番は、私が教えた以上の出来になった。
ここぞという見せ場では拍手が起こる。
愁嘆場ではシーンとして、涙を流す人も。
益田の人たちには初めての経験だとか。
終演後楽屋に行ったら、きらきら輝いている顔、顔、顔・・・
皆弾けんばかりの満面の笑みだった。
こういう経験をしてもらいたかった。
良かった、心底良かったと思う。
コメント (3)
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