浜離宮の一角に広い広場があり、到着すると、そこで合気道の演武が行われていた。集いし観客は、設えられた3列の椅子だけでは足らず、立ち見が出るほどの賑わい。11時に、鷹匠とその門下生と思しき5人が、各々鷹を手に止まらせ、楕円を描く様な周回歩を始めた。これは、鷹にこの場所やその周辺の景色を見せる為の、大事な“準備運動”との事。この5人のうち、4人が女性であることに、まずビックリする。
程なく術が披露され始めた。最初の演技は50mほど離れた場所に立った門下生の側から鷹を飛び立たせ、他の門下生の腕への軟着陸。この術が終わると、止まり木に相当する腕側の実演をしたい人の募集がなされた。「応募したい方は手を挙げて下さい」との放送。早速私は大きく手を挙げたが、ご指名は叶わなかった。(写真:周回歩)
(鷹匠)
(鷹を手に止まらせる門下生)
(鷹にハトを見せている)
続いて、ハトを用意し、飛び立ったばかりのハトを、鷹が目にもとまらぬ速さで咥え捕る術が演じられた。鷹が見事にこの技を成し遂げると観衆から大きな拍手が沸き起こった。(上の写真参照)
次がメインの“急降下術”(と言ったかどうかは聞き取れなかったが)。浜離宮の目の前には47階の電通ビルが聳え立っている。その屋上からの急降下。観衆一同息を凝らして見守る中、鷹は漸く飛び立ち、何回か旋回をしながら、徐々に高度を下げて、一気に浜離宮のこの地点目がけて急降下を開始した。その時である、カラスの一群が鷹の動きをけん制し始め、遠目には鷹を襲うようにも見えた。自分たちのテリトリーへの侵入者への、反撃が開始されたのだ。
カラスは20羽はいただろう(これを烏合の衆という)。警戒心の強い鷹は、浜離宮園内の森を目指して逃げていき、急降下は失敗。しかし生き物たちの生態の一端を見ることが出来て、私は満足した。多くの観客からも、失望でなはなく感嘆の溜息が聞こえた。(写真:悠然と舞う鷹)
(カラスに追われる鷹)
これにて諏訪流放鷹術の中心演技は終了。風の力を借りずに、低空をも飛び続け、時に猛スピードを出せる筋力を持つ一方、警戒心が強い、この不思議な鳥の一面を興味深く見終えた。来年は最前列で観ようとは、何処へでも行きたがる私ではなく妻の発案。
浜離宮は、江戸時代には将軍家の別荘があった地。その名残の放鷹術か(?)。1945年に、東京都に下賜された恩賜公園の今は、東京湾の海水を巧みに取り入れた公園となっている。放鷹術終了後散策した感じでは、六義園の方が趣が深いように感じられたのは、“身びいき”か。
この日も快晴で、朝、富士山が望めた。三の茄子以外の 一富士 二鷹 を見たことになる。浜離宮を後に、電通ビル46階にある“ソラシオ汐留”に向かった。(写真:電通ビル)