1月7日(月)、浅草公会堂に出掛け「新春浅草歌舞伎」を観て来た。ここ浅草公会堂は、歌舞伎興行が可能な様に、例えば本格的な花道も設置されていて、毎年新春歌舞伎が上演されてきたそうで、今年は14年振りに市川海老蔵が出演しかつ”座長”も務めるとの事。
このチケット、東京新聞販売店の抽選に応募し、当選してゲットした。応募のFAX用紙に「3月からの夕刊講読も検討中」と書いておいたオマジナイが効いたのかも知れない。但し3階席である。
まだ幕の内の賑わいの残る浅草。やや風邪気味の私はその余韻を味わうのは諦め、公会堂へと急いだ。開場前に既に長い列が出来ていて、海老蔵人気の効果絶大。
この日の第2部は
1・義太夫狂言 毛谷村
2・口上 海老蔵
3・勧進帳
1年半前、謹慎明けの海老蔵を新橋演舞場で見て以来である。口上で海老蔵は一通りの挨拶の後、「勧進帳では”にらみ”を沢山やります」と言った。歌舞伎用語のいろはを詳しくは知らない私は、家人に聞くと「“見得”をきる時の表情の表現方法で、片方の目は真直ぐ、片方は寄っている」との事で、邪気払いにも効くそうだ。今日は双眼鏡を持ってきているので、この辺もしっかり観よう心に決めた。
さて勧進帳。昨年10月には弁慶の幸四郎、富樫の団十郎の組み合わせで、心理劇として観た。今回は海老蔵の弁慶、片岡愛之助の富樫である。二人が初めて相対する場面から緊張感が感じられる。タイマンを張る雰囲気である。愛之助演じる富樫に対し海老蔵の弁慶もすっくと立って、気魄の対決。
富樫が繰り出す難問の数々。山伏の祈祷をやってみろ、勧進帳を読んで見ろ、更には山伏問答。これらを見事に切り抜ける弁慶。山伏一行であることを納得し、一行を通す富樫が最後に目にした小柄な山伏姿の義経。疑いを掛けられ、弁慶は義経を打擲する。有名な場面である。これを見て、同じ武士として、弁慶の志を察し、見逃す事とし弁慶に酒を振る舞う富樫。富樫と弁慶の対決がこの物語の一番の見どころと思える展開。
しかし、ここからは弁慶の一人舞台。大酒を食らい、ふらふらとしながらの見事な舞い。跳びあがって舞台を叩く足音が甲高く場内に響く。動作にも力強さが漲り、幸四郎とはまた違う弁慶である。双眼鏡を通して観る海老蔵の”にらみ”、迫力満点。
富樫共々、家来たちがその舞いに見惚れている間に、義経達は虎口を脱するのであった。
映画「小川の辺」で見事な決闘場面を演じた愛之助が、海老蔵に負けず劣らずの気魄ある舞台であったことも書き添えておきたい。