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日本経済復興の処方箋~その2

2010年03月01日 14時02分59秒 | 経済関連
Ⅱ 日銀の量的緩和政策の意義と時間軸効果(policy duration effect)

まず、時間軸効果について述べておく。少なくともgoogle scholarでは、内輪の人物(日銀の人)以外の英語論文は直ぐに見つけ出せない。日銀以外の日本人著者の英語論文はあるものの、日本人以外では見かけないとすると、恐らく海外研究者の間では殆どが認知されていないというものではないか、としか思えないわけである。
勿論、医学論文なんかの初めての治療法とか特殊な症候群なんかで、注目されるのがずっと後になってから、というのと同じく、もっと長い年月が経過しないと脚光を浴びないというものであるかもしれない。そこまで海外研究者が鈍感とも思えないが。単に着目するに値しない内容のものであれば、誰も見向きもしないということなのではないか、としか私には思えないのである。


1)日銀の量的緩和政策

リーマン・ショック後のFRBやBOEの採っている政策とは、趣を異にしているように思われる。平たく言えば、日銀の量的緩和政策とは、「日銀当座預金残高ターゲット」政策、という代物であった。その当初の目的とは、「デフレ脱却」という効果を意図したものとは思えなかった。

多分、日銀をはじめその他日本人研究者たちのいくつかの論文があると思うが、量的緩和政策の対デフレ効果というのは、「あったかもしれないが、あんまり目立った効果はなかったみたい」というような結論に落ち着くのではないかと思う。だって、そもそもはそういう目的で政策導入がなされたものとは思われないからである。

大恐慌時代の世界及び日本経済の教訓を思い起こせば、最も強力な破滅ルートが「取り付け騒ぎ→銀行倒産」ループというようなものだ。90年代後半から日本経済を恐怖に陥れた最大要因であったのは、「不良債権」という名の増殖性の怪物だった。まるでガン細胞のように増殖し、転移(企業やセクターを飛び越えて拡大)するというものだった。都市銀行であった拓銀だけじゃなく証券会社などの倒産を招き、更には大手小売や老舗企業などの破綻を来たした。2000年代に入ってからも、ITバブル崩壊に見舞われ、「不良債権」の増殖は続いた。金融機関の国有化などといった大袈裟な騒ぎが継続された。

不良債権増加の銀行を避ける為に、預金者たちが引き出しを集中すると、銀行倒産を招きやすくなる、ということを日銀は恐れたのだろう。銀行を潰さないという決意を示す姿勢が、日銀には求められていた(現実には、取り付け騒ぎはまるで起こらなかったが)。
こうした事態を受けて、日銀の当座預金残高を拡張するという「量的緩和政策」が決定された。平易に言えば、上記の「取り付け騒ぎ」というルートを強力にブロックする、というものである。副次的効果としては、資金需要が旺盛になれば、日銀の金庫からは「いくらでも引っ張れますよ」、という程度だった。あくまで短期資金だったので、貸出増に繋がる部分には限りがあったであろうけれども。


2)銀行貸出は増加したのか?

各銀行や金融機関などは貸し剥がしを散々やってきた後であったはずだから、新たな借り手とか貸出需要を見つけるというのが、そう簡単だったとも思われないのである。日銀と銀行の金庫の間をいくら行ったり来たりしても、世の中全体には資金が回っていかないということに変わりはなかったのではないか。

信用乗数低下と貨幣供給のこと

「流動性の罠」と緩衝系としての国債


日銀が貸出需要を作り出せるわけではないので、直接的な効果はなかったはずである。いくらマネタリーベースを増加させても、マネーサプライを増やすのが難しいという主張は、当座預金残高膨張策があくまで受動的な政策(資金需要が増加すれば日銀の金庫を出て市中に回ります、という性格のもの)だから、間違っているというわけではない。それゆえに、日銀にはどうしようもありません、という言い訳を可能にしてしまうのである。

(貸出額の増減に関しては、ゼロ金利や量的緩和策などだけの問題ではないですし、これについては別な機会に述べたい。)


3)時間軸効果(policy duration effect)はデフレ対策たりえたか?

これも諸説あって、評価は分かれるかもしれない。ただ、概ね「デフレ対策としての効果は(殆どないか)あってもごく僅かで、政策効果としては乏しかった」という結論に落ち着くのではないか。これまでのペーパーでいくつか評価されているだろう。

当座預金残高維持というのが、取り付け騒ぎを防ぐという「連想防止」を主眼としているのであれば、そもそもデフレ脱却効果を持たせようと期待するのは主たる目的ではないし、本筋からは外れている。敢えて「時間軸効果」という目的外の副次的効果があるのではないか、ということを強調したりしなくてもいい、ということである。「ないよりマシ」という程度だったのではないか。


4)量的緩和政策の意義

逆に言えば、作用は強力ではなかったが故に、害を及ぼす効果の発現も少ないと見られるので、重篤な副作用というものを気にせずとも使える、という手段ではあるだろう。いうなれば、「とりあえず、ルート確保=点滴」とか、「とりあえず酸素マスクで酸素投与」といった、初歩的手段というような位置づけである(実際には、点滴による輸液にも問題点があるし、酸素投与に害がないわけではない)。今の病状に対しては、「特別の治療効果を持たないが、やったとしても病状悪化を招くわけでもなければ別な疾患をもたらすわけでもない」、ということ。

・金融機関救済という姿勢
・金融緩和的であることを説明する表象
・「何らの手立ても講じない」という批判に対するアリバイ作り
などという部分には一定の意義があったのではないか。

ただ、デフレ対策としては、国債買入増額や為替介入などの方が効果が大きかったのではないか。


日銀のバランスシート拡張には、いくつかの手段がある。
その中で、最も「日銀としてのダメージとリスク」の小さいものを選択したのだ、ということは言えるのではないだろうか。「日銀当座預金残高ターゲット」政策、すなわち量的緩和政策と日銀が称する手段は、一番当たり障りのないものだった、ということだ。これは、自信のない人間が、とりあえず選択してしまいがちな典型的なパターンのように見える。責任を負いたくない人間が、責任回避の為にとる行動はまさしくこういう選択なのではないか、ということである。


09年8月>未だに反省できない日銀

一体、いつになれば目覚めるのか。




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