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「中国軍特殊部隊による台湾攻撃」という愚(追加あり)

2010年01月04日 17時30分59秒 | 防衛問題
またまた、オレの妄想とか架空戦記シナリオみたいな話が登場ですか。まあ、そういうのは嫌いじゃないからいいんだけどさ。

コレね>はてなブックマーク - ヘリコプターの進化と沖縄海兵隊ヘリ部隊の合理性 週刊オブイェクト


起こってないことを想定するのは、それなりに理由というか考える道筋のようなものがあるわけである。その過程に問題点があるとか不合理な部分があるとか、そういうことを考えてゆくのが普通であろう。しかし、何故か「都合の悪い部分は考えない」という人たちはいるわけである。いやまあ、自分を振り返ってみても、そうではあるのだけれど、あんまり意味のない想定をするのは効率的とは申せまい。

以下、個別の論点について考えてみる。


①台湾は正式には国ではない

最も重要な部分がこれ。
国際的には承認されていない。簡単に言えば、宙ぶらりんの曖昧な地位にいるのが台湾である。中華人民共和国と中華民国の言い分のどちらが正しいか、正当性があるか、というのは定かではない。ただ、外見上の中国というのは中華人民共和国政府であるように見られている。安保理は現実に中国がイスに就いているわけである。

台湾が国際的に正規の承認を受けた国家ではないことは、誰しも知っている。
けれど、実効支配は戦後の台湾政府(とりあえず今はこう呼ぶ)が行ってきていて、WBCの代表チームも中国と台湾で別々であるし、五輪なんかも中華台北とかいう名称で出場している。

海外における多くの識者は、中国と台湾が一つの同じ国家であるという認識は正確にはもっておらず、基本認識としては別々な国のように見ている。ただ、国際関係の正規の立場からいえば、やはり明確に決着がつけられているわけではない。


②中国人民軍は台湾解放軍ではない

仮に、中国が台湾に特殊部隊を送りこもうという場合、中国は台湾に新たな独立政府を樹立させたりする必要性がない。何故なら、そもそもは「一つの中国」なのであり、台湾は中国領であるという認識だからである。なので、台湾を軍事的に占領支配したとしても、それは「国内での活動」という立場をとるのであって、別に台湾を独立させるとか、新たな政権を樹立するなどという手続を必要とするわけではないし、そういう意図も無意味である。

なので、仮に台湾政府中枢を崩壊させ、中国が軍事的に占領支配を完結できたとしても、それは「中国国内の出来事」に過ぎない。すなわち、中国が台湾に傀儡政権のようなものを樹立するという意図がそもそもおかしいのであって、あるとしても、完全吸収して大陸側と統一してしまう、というようなことだけである。


③介入側にこそ特殊部隊を送り込む意味がある

台湾に少数の米海兵隊や特殊部隊を送り込む場合、これには意味があるのである。どういう目的があるかといえば、例えば「新政府樹立」を宣言させ、国外に政府機能を逃亡・移転させる、というような場合である。つまり、中国人民軍が台湾に手出しした途端に、台湾政府に独立を公式に宣言させ、これを支持・支援するという名目や、中国人民軍による戦争犯罪や虐殺等が行われているという介入の大義名分をもって軍事的に台湾介入を行う、ということである。

よって、中国人民軍により台湾の政府中枢が攻撃されたような場合においては、適当に正統性のありそうな台湾政府要人を台湾から脱出させ、国外において暫定政権樹立とかを米国及びその他複数国の立会いなどで認めることとし、当該暫定政府との協定を米軍その他が締結して、台湾に本格介入するといったような手続を行う、というようなものではないだろうか。国家としての国際承認は戦後でも可能であるので、暫定政権さえ維持されればいいというようなことでは。

本当に即応というのが必要とされるのは、こうした事態の場合である。

現実には、軍隊派遣などの場合であると、安保理決議を経る手続が必要となるので、拒否権がある限り中国は反対できる。そうすると、米軍及びその他協力国の軍隊派遣は、国際法違反となり得る。中国側の主張としては、内政干渉であるということも可能である。現に、チベットに中国人民軍が侵出したといっても、米軍等外国軍は介入してはいまい?要するに、そういうのとほぼ近いのである。


④中国人民軍が台湾を占領支配する利益とは?

よくオタなんかが言うのが、中国には台湾に向けて発射できる大量のミサイルを保有している、というものがある。確かに攻撃可能性ということをいえば、そうなのだけれども、それを打ち込むと台湾の経済的価値は大幅に毀損される。また、軍事的占領政策が実行できたとしても、長期に渡る内政不安とかテロなどが頻発するようになることが予想されるので、台湾の価値はもっと低下することになるであろう。中国に対する世界的非難は大きくなり、大陸側の商売にさえ大きな支障を来たすようになるであろう。

そういったトータルの収支を予想するなら、台湾を軍事的に攻略して占領支配し、完全統一を目指す必然性というものはないだろう。何故なら、現在においても、台湾は中国であるということを他国に半ば強制的に認めさせていることに成功している、という背景があるからである。経済発展の協力を行う方が、双方にとって都合がよいのである。

もしも、本格的な世界制覇の野望のようなものを抱くのだとすれば、中国が世界経済から切り離されてもよいというくらいの、超強力な軍事力と経済力を持ったような時で、そういう世界制覇の野望を達成する為に足場をひとつずつ確保してゆこうというような場合なら、台湾を獲るかもしれない。遠大な「信長の野望」みたいなものかもしれんけど(笑)。台湾を獲れば、日本や南方のアジア圏攻略にも有利に作用する可能性が高まるから。果たして、そんな計画をもって長期的な軍事戦略を実行してくるのだろうか、という疑問はかなりあるわけではあるが。


⑤南オセチア問題とコソボ紛争

08年にグルジアが侵攻したことで軍事衝突が発生した。南オセチアも台湾とやや似ている問題である。

・グルジア→南オセチアの独立を認めず
・南オセチア→独立を宣言し別な政治体制を敷いている(一部国際承認)
・ロシア→平和維持軍として駐留、独立支持

グルジアが中国、南オセチアが台湾、ロシアがアメリカ、という構図であれば、ほぼ近いということになろう。
台湾は南オセチアみたいな状況にはないけれどもね。米軍が駐留しているわけではないから(笑)。

前記③で述べたように、台湾を分離独立させ、独立政府との協定などを締結・調印してしまうと、台湾に米軍が進駐することは可能となるだろう(2国間調印ではなく、あくまで複数国間というのが必要になる可能性は高いとは思うが)。即応とは、そういうようなことである。

コソボ紛争では、米国やNATOのとった軍事介入によってやはり独立承認ということになり、同じく台湾に独立運動を働きかけて独立させる、ということを可能にするのは米国等介入側ということになるわけである。中国軍ではない。


中国がもし先に台湾に仕掛けてしまうと、これを口実として正式に台湾の独立を宣言され、それが国際社会で承認されてしまえば今の「中途半端」な事態よりも悪化するということになってしまうわけである。
なので、中国人民軍側から先攻して、特殊部隊を送り込んで台湾政府打倒みたいなことをやってしまうと、「白黒決着をつけさせる」ということの誘因となってしまい、逆効果となりかねないだろう。


⑥アフガンの場合

ソ連が侵攻した時の話をする人たちはいるが、それは「侵攻(介入)側」の理屈である。現政権を転覆させ、新政権樹立に成功すると、軍事介入は正当化されるのだから。ソ連が去った後も、米軍やNATO軍が攻めていった01年以降であっても、同じく北部同盟などのうちから有力者をピックアップして暫定政権を作らせ、その政府との協定を締結するわけである。つまり、外部からの介入側にとっては、新政府を作らせる意味というものがあるわけである。アフガンの国内的に正統性のあったであろう「タリバン政権」を転覆させたのは、実質的に米軍やNATO軍ということになるわけで、特殊部隊云々という話はそういう事例だから、ということになろう。


◇◇◇◇


中国軍が台湾に送り込む場合というのは、立場が異なっているのであるから、現実の効力というのは別である。
例えば「内乱罪」とか「反逆罪」といった、「国内テロ殲滅」というような大義名分を正当化できる場合だけであろう。日本でいえば、四国が突如独立を目論んで自衛軍を結成し、武力で四国を封鎖するというような事態であろうか(笑)。そういう国内騒乱みたいなことが発生したということなら、多分日本中の自衛隊のかなりの戦力を投入して、「四国独立自衛軍」を攻撃することになるであろう。要するに、そういうような事態が発生しなければ、中国軍が軍事的に台湾を攻撃する意味というのは、殆どないであろう。


あるとすれば、前述のような数百年単位で目指す「遠大な信長の野望」計画とか、持ってる戦力を試したくて仕方のないような軽はずみな指導者のマヌケな命令とか、そういう特殊な場合くらいではないか。
いやまあ、「そういう人間が登場しないと言い切れるのか」みたいな大袈裟なご意見が出されやすいとは思いますがね。そういう稀な事態さえもカバーしろ、とか言う人たちはいるんでしょう。


追加:19時半頃

JSF氏よりTBを頂いたみたいです。前回同様、ウチのような場末のオメガブログにまでありがとうございます(笑)。
ついでながら、次の記事に書いたのをお読み下されば幸いです。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/7d79772814ba24140f739df02486c202




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3 コメント

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Unknown (まさくに)
2010-01-05 19:16:50
>denさん

>台湾国民が中国への統一を諸手を挙げて歓迎す>るなら、こんなに問題がややこしくなっていな>いと思いますが。

まさしく、そう思います。台湾人は大陸側との統合など望んでいるとも思われません。であればこそ、中国軍が軍事的に現台湾政府を打倒して別な政体とか本国に準拠する体制(特別区や自治区等のようなもの)としたとしても、うまく統治ができるかというと困難であろうというのが予想です。なので、中国軍が飛び込んでゆくメリットというものがないように思えます。

>KKAさん

喧嘩を売りに行っているわけではございません。何故沖縄から移動させられないか、という点についての論拠として、台湾有事ということが挙げられ、それは特殊部隊による活動ということで、その即応として沖縄海兵隊のヘリ部隊が必要というのがJSF氏の主張です。

このような前提は果たしてどの程度の妥当性があるのか、という点を検証してゆくことに意味があると思っただけで、論拠として出された読売記事や英文雑誌記事の内容ということからしますと、若干疑問と考えました。

>誰も100%の答えなんぞ出せもしない

というご指摘はその通りでありまして、当方の主張も存分に穴が開いてございますけれども、そうではあっても「普天間基地の代替施設は沖縄」という定型的な意見の論拠としては、非常に説得的であるというものを見かけておりません。その割に、沖縄説の主張者たちは、既に100%の答え(他の選択肢は考慮に値しない)が判っているかのような振る舞いと断定的な物言いには辟易しています。
返信する
Unknown (KKA)
2010-01-05 15:09:13
最近は他人のブログに喧嘩売りに行くのが流行ってんのかね
どこの誰も100%の答えなんぞ出せもしないのにどいつもこいつも俺の意見が完璧と言わんばかりに言ってさ
返信する
Unknown (den)
2010-01-05 10:47:11
>何故なら、そもそもは「一つの中国」なのであり、台湾は中国領であるという認識だからである。
>なので、台湾を軍事的に占領支配したとしても、それは「国内での活動」という立場をとるのであって、
>別に台湾を独立させるとか、新たな政権を樹立するなどという手続を
>必要とするわけではないし、そういう意図も無意味である。

中国側の視点で見ればそうでしょうが、台湾の「国民」の意思はどうなりますか?
国民はそれを喜んで受け入れるのでしょうか?

台湾国民が中国への統一を諸手を挙げて歓迎するなら、
こんなに問題がややこしくなっていないと思いますが。
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