いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

「郵政解散」選挙で問われるもの

2005年08月09日 13時26分35秒 | 社会全般
小泉政権が発足以来、政治の中で格闘してきたもの―それは、旧来の政治システムだった。国民の前に新たな政治・統治システム構築の兆しをもたらし、不十分とはいえ「改革路線」という共通認識を広めた功績は大きい。郵政民営化という困難への挑戦がなかったら、多くの国民にも「構造改革」とか「財政改革」「行政改革」といったことも知られないままであったかもしれない。そして、派閥政治からの脱却を目指し、守旧派勢力の政官癒着、政官業構造の破壊に挑んだことも、重要な功績であると思う。「自民党をぶっ壊す」というのは、そうした守旧派達によって延々と続けられてきた派閥政治、権益優先の政治の打破を意味しており、それが今現実に行われようとしているのである。今回の選挙はそういう重要な意義が含まれているのである。


国民側からすると、国民にとっての最も有益なエージェント足り得る人々は誰なのか、どの統治ユニット(政党)がそれに相応しいか、ということを選択する選挙でもある。小泉自民や民主党に共通するキーワードは共に「改革推進」なのであり、仮にどちらが政権を摂るにせよ改革は実行されていくはずである。特に標的とされているのは、勿論「官」である(菅直人氏ではないですよ、笑)。


岡田代表は、「政官業癒着構造を持たない民主党が切り込んで、官から主導権を取り返し、官の利権温床を粛清し、公務員給与2割削減、3年で10兆円歳出削減を実行する」と豪語した(これは、私から見れば願ったりかなったりだが(笑)、それを実行できる政治力というのは、本当にあるのか疑問でもある。霞ヶ関の抵抗は、半端じゃないだろうからね)。岡田代表は増税する前に、まず削減を10兆円します、ということを宣言しているのだろう。消費税分の税収を歳出カットするとなれば、多くの部門から相当の反発が強まり、それを果たして乗り越えられるのか。そこが最大の疑問なのである。また、この経済学的影響もどういったことになるのかよく分らないが、短期間での大幅な緊縮財政は、景気動向に大きくマイナスに作用する懸念があるのではないか。


一方の小泉自民も、「役人天国」のままではいけない、これを絶対に改めさせる、と幹事長や竹中氏が発言していた。つまりは、官僚主導・「官」腐敗の改革を行うというのが、どちらの政党も目標としている、ということだ(それならいっそ民主党も協力しろよ、と思うんだけれどもね。まあいい)。今後の構造改革、行財政改革遂行の第一歩として、「まず、郵政民営化という難題にチャレンジしよう」というのが、今回の郵政関連法案であったのだが、これが否決されはしたものの、まだチャンスがあると小泉首相は思っているのだろう。何より、派閥政治の解体、守旧派勢力のあぶり出しを国民の前に明らかに出来ただけでも、意味があった。既得権益や特定組織の利益誘導にしがみつき、旧態依然の考えを改めることない連中は、政治の場から去れ、ということだ。そういう旧来の政治手法では、今後の難題を乗り越えられない、ということを示した。郵政法案の審議過程では、多くの国民にそれが伝わらなかったのだ。


これはマスメディアの責任もあると思う。郵政改革の先に見据えるものが十分に理解されていなかったからだと思う。郵政改革の内容についてもそうなのですが、そこから繋がる行財政改革が本当に実行できるようにするためには、そういう政治システムが整ってなければ、元々数の多い利権・既得権益を守ろうとする派閥勢力に負けてしまって、結局改革が頓挫するか、従来ずっと続けられてきた「先送り」「玉虫色」で終わってしまう。そこに早くから気づかず、国民に訴えられなかったメディアも、同じように責任を感じて欲しいと思う。テレビのコメンテーター達やその他出演者達も、郵政民営化の目的がよく分らないと度々言っていたのは、政府側の説明の悪さもそうだし、伝えるメディア側にも工夫不足があったのだと思う。私も自省が必要だと思っている(本当に)。国民という大きな力を、現政権にもたらすことが出来なかった。現実には、そんな大それたことは自分に出来ないと分っている。だが、一歩を踏み出さねば、次には繋がらないとも思っている。小さい一歩でもいいから、ブログに書くという自分に出来ることを通じて、誰かに伝わって欲しい、と願っている。


そういう訳で、今回の選挙では国民からすると、「どのように改革していくか」という方法論の比較をして、好きな方を選ぶということになるだろう。それとも、どちらが信用できそうか、という視点かもしれませんけれども。自公、民主のどっちにしても、特別会計や公庫公団の問題、公益法人の問題、公務員改革等、今後きっと切り崩しに合うはずだ。そこに焦点を当てさせるであろう、今回の解散が、国民にとって真の利益となるようにマニフェストを出して貰いたい。


そして最も重要なのは、国民自らが真剣に考え、「政治を変えるのは自分達だ」という気持ちと、政治への責任を国民が持つということだ。うまく行くのも行かないのも、やはり国民の責任なのであり、政治への姿勢という点で自らも変われるかどうかが求められていることなのかもしれない。政治を変えようと思うならば、国民も一緒に変わって行かねばならない、ということなのだろう。そこに思い至れるかどうかも、今回の選挙で見えてくるかもしれません。


「政治的無関心でありながら失敗は政治家のせいにする、何でも他人を当てにしたり人任せ、自己保身・利益ばかりを優先して考える、国民の責任を果たそうとせず放棄する」そんな大衆というのは、まるで「女王の教室」に登場する愚かなクラスメート達と何ら変わりがないような気がします・・・そう考えるとやっぱり恐ろしいですね。

そうならないように、日本国民のバランス感覚を信じたいとも思います。


色々追加ですみませんが・・・

昨日の閣議決定の前に、麻生親分、島村農水相、村上行革相が反対したとのことでしたが、その気持ちは判ります。むしろ全会一致よりも自然ですし、諌める人間がいる方が首相の意志の最終確認にもなります。

島村さんは、普通の対応をしたんだろうと思います。最後まで拒否するというのも、内閣に選ばれた人間としての責務を考えれば、当然と言えるでしょう。小泉さんを首班指名した自民党の代弁者という気持ちもあったでしょう。解散回避を信念として首相に伝えることには、自民党議員としての責任を一身に背負おうという気持ちもあったのではないかと。それでもなお、小泉首相の決意は固いのだ、と。島村大臣の首を賭けてでも(これがどれ程の重みなのかは、私には量りかねますが)阻止できなかった小泉首相の決意の強さは、いかばかりか、と。

私はそういう風に捉えており、単に反小泉とかではないと思います。ですので、島村さんの評価はむしろアップしましたね。これで、国会史に名を残すことになったでしょう。


また余計な追加ですが、以前に書いた記事を入れておきます。それから「郵政民営化まとめ編5」にも、たくさん入っていますので、お気軽にどうぞ(笑)。
えっ、読みたくない? そうですよね、・・・ガックリ。

私的政治思考の変遷


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
マスコミのせきにん (kirokokia)
2005-08-09 18:27:53
マスコミの責任のもう一つとして、明らかな迎合と議論の煽りが感じられたように思えます。

私はあまりテレビを見ないのですが、今回は両親とテレビを見ながら話をしました。少しでも家族で話し合う機会がほしいと思ったので。

そこで出た結論は、「テレビの司会者ってなんで出演者に遠慮するのかねぇ」というものでした。

また、今回の解散劇にしても、もう、あたかも解散して面白くしてくれと言わんばかりの報道があったのではないかと思っております。

返信する
官の支配からの脱却 (o_sole_mio)
2005-08-09 22:47:11
こんばんは



コメント頂きました通り、どの統治システムを選択するかによってこれからの社会のシステムを選択していく、そういった位置づけの選挙ではないかと思います。準備期間は短いですが、そういった魅力ある選択肢を政治の側に期待したいと思います。



一方で国民の側も一票を投じることでそういった政治システムが洗練されていくことを認識すべきだと思います。一番気がかりなのは投票率で、今回投票率の低下が止まらなければ、日本の民主主義は危機的状況ではないかと憂慮しております。

返信する
悩んでます (ぽん吉)
2005-08-09 23:37:50
はじめまして。

郵政民営化に関するページは大変勉強になりました。

僕は最近「郵貯崩壊~仁科剛平著」という本を

読んで正直、小泉首相でいいのか?と悩んでます。

特殊法人改革もウヤムヤですしね・・

本当に改革者なんだろうか?と悩んでます。

郵貯崩壊という本には民営化した郵貯は不良債権を

抱えた地銀などのゴミ箱になるとありました。

大和銀行と同じ運命を辿るとも書いてありました。



小泉首相が特殊法人改革を行えなかったのは

守旧派がいたからであって、今回の選挙で

それらの勢力と決別できれば今度こそ本当に

改革を行うのでしょうかね・・・

返信する
解散、断行。かくなるうえは……。 (yodaway2)
2005-08-10 00:26:41
戦わずして勝つ――となれば、それはそれで良かったのかもしれませんが、無理やり反対派を封じ込めて、肝心の民営化の中身が後退しまくっていくよりも、ひょっとすると、選挙で黒、白つけるのもよいのかもしれませんね。現政権について、正直に言えば、外交では、もっと違うやり方、工夫の仕方があるのではと思っています。しかし国自体が、内政がしっかりしていないことには、外交も成り立ちません。私の場合、少なくとも、今回の選挙では、郵政民営化を基本に判断せざるを得ませんね。――TB、sたのですが、誤って2回送ってしまいました。すみません、ひとつ、消しておいてください。^^
返信する
コメント有難うございます (まさくに)
2005-08-10 11:43:55
>kirokokiaさん



今後自民と民主の「争点」争いが進めば、違いが見えてくるかもしれないですね。どちらも「改革のやり方」比べであろうと思いますが。



>o_sole_mioさん



投票率が回復するかどうかですね。民主党は何とか高投票率を狙っているでしょう。今回は国民の関心が一気に高まりましたので、6割程度いけるかもしれません。



>ポン吉さん



初めまして。仁科本は度々登場しますが、それ程恐れる必要はないと思います。郵貯ははっきり言えば消滅した方が大多数の国民にとっては得だという考え方があります。国民は郵貯に預けるよりも、もっとダイレクトに貯金金利より多い運用利益を貰える方法を選ぶ方が、国民も国も民間企業も得です。特殊法人改革は少し進みましたが、今後もっと切り込みが必要です。が、族議員・官僚達の抵抗は強く、弱い政治基盤ではそこには届きません。道路公団を見れば判るとおり、手が付けられない状態が続いてきたのですが、やっと僅かに切り崩しが出来たのです。今の小泉改革がなければ、恐らくこれも難しかったでしょう。



>yodaway2さん



色々な意味で、国民の選択に晒されるわけで、そうした視線が政治を少し変えられることに繋がれば、と思います。外交は、・・・外務省内にある各スクールと議員達の結びつきがあったり、経済界との関係があったり、そういう勢力の複雑さが絡んでるのも難しいのでしょうね。
返信する
小泉がんばれ! (NY)
2005-08-14 13:08:44
はじめまして。

私は今回の小泉さんの行動は高く高く評価しています(他の部分で問題はありますけどね)。自分の信念を曲げず「殺されてもいい」と言う覚悟。これこそが政治家がまず持たなければいけない感覚ではないかと思います。あとは国民が判断すればいいこと。この非常にシンプルな形を作ってくれたことに心より感謝しています。今日本の政治はいい方向へ向かう過渡期だと思います。郵政民営化やその他の懸案の是非も国民にとってもちろん重要ですが、今最も大事なことはシンプルな分かりやすい形をまず作るということなのではないでしょうか?そのためには政治家が国家のことを考え自ら強い信念をもち自らの責任・覚悟をはっきりしていく・・・その結果対立軸がはっきりして国民も危機感を持って政治に対しての関心・責任感も高くなる。まずこの流れを作らないと日本はいつまで経っても良くならないと思います。私は今回の選挙はその流れをはっきりと今後作り上げていく為の選挙と考えています。自己保身のみに明け暮れる腐れ政治家を一掃したいところですね。またこの「流れ」が逆戻りしないように小泉さんを応援したと思っています。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。