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オール人力狙撃システム試作機

クラスター爆弾の補足編

2008年06月08日 17時39分40秒 | 防衛問題
以前にこちらの記事にTBをいただきましたが、更に追加TBをいただきました。元記事は既に追加後でしたので、新たな記事にしました。

意味のない防衛計画~「クラスター爆弾」について(追記)

この続きはコチラ>意味のない防衛計画~「クラスター爆弾」について・2

この記事中で
「無駄なコメントからは得るものが乏しいので、みなさんが支持している(?)JSF氏にでも「答え」をお聞きになってはいかがかと思います。」
と書いたところ、回答をお寄せ下さいました。


今回も、当方の理解不足をご指摘いただき有難うございます。

追加の部分を一部引用します。
=====
まず(b)がおかしいです。私はそのような事は一言も言っておりません。まず「怒りのぶろぐ」さんが『クラスター爆弾を装備する以前はどうだったんですか?』と仰られていたので、私は『クラスター爆弾を装備する以前は地雷を装備していました』、と答えました。要するに地雷が有るのならクラスター爆弾は要らなかったのです。地雷が禁止されたので、しょうがなくクラスター爆弾を導入したのです。
=====


そうでしたか。どうやら、当方の記述が無力化されたようでございます。


そこで、少し調べてみました。

地雷 - Wikipediaによれば、

『日本は1998年9月30日に、この条約を受諾して締約国となり、2003年2月8日に保有していた対人地雷のうち、訓練用など一部を除いたすべての廃棄を完了した。』

ということだそうです。


さて、ここでオブイェクト氏の主張を振り返ってみましょう。

>要するに地雷が有るのならクラスター爆弾は要らなかったのです。地雷が禁止されたので、しょうがなくクラスター爆弾を導入したのです。

①対人地雷があるのなら、クラスター爆弾は要らなかった
②対人地雷が禁止されたので、しょうがなく導入した
(文には直接「対人」とは入っていませんが、文脈から当然に対人地雷のことであるとして話を進めます)


ここで事実確認をしておきます(少し前の記事に取り上げた福田毅氏のペーパーより)

ア)航空自衛隊保有の「CBU-87/B」は87~02年に約148億円分調達していた
イ)陸上自衛隊保有の「MLRS」(M26)は92年から導入された
ウ)対人地雷禁止条約は98年受諾、03年に廃棄完了


多分、80年代に自衛隊は「対人地雷を保有していた」でしょう。また、ウ)から03年に廃棄完了するまでの間にも保有していたでありましょう。推測されるのは、対象となる「87~02年」の間に対人地雷を保有していた、ということです。

そうなると、「対人地雷を保有している」にも関わらず、クラスター爆弾を導入した、ということですね。上記主張①の「対人地雷があるのなら、クラスター爆弾は要らなかった」ということに反して、自衛隊は無駄にクラスター爆弾を導入した、ということですね。杜撰(過剰?)な防衛計画であった、ということがオブイェクト氏の主張から窺えます。

ア)のCBU-87/Bは不必要であったにも関わらず、導入決定された、ということが判明しました。せめて、条約受諾となった98年以降か、廃棄完了となる03年以降に調達するのであればまだしも、80年代から無駄な装備を調達していた、ということでしょう。

イ)のMLRSも同様に、地雷があったので必要性に乏しかったのに導入された、ということになります。



主張②の「禁止されたのでしょうがなく導入した」ということですが、そうであるなら、条約を受諾してからか、廃棄完了後から導入されるはずですが、実際にはそうではないようです。仕方なしに導入したのだ、というより、全く別の目的や使途の為に導入されたようにしか見えません。
更に②の主張からすれば、対人地雷の「代替兵器」としての「クラスター爆弾導入」ということを意味するものと思えますけれども、それには「指向性散弾」が代替兵器と位置づけられており、導入するのであれば「クラスター弾」ではなく「指向性散弾」ということになるのではないかと。

対人地雷廃棄にともない、代替として指向性散弾が導入されたようです。
参考はこちら>対人障害システム

一部を引用しますと以下の通り。

『1 事業の目的:
11年3月の対人地雷禁止条約の発効に伴い、従来、対人地雷が果たすこととされていた敵徒歩兵を遅滞・阻止することによる火力効果の増大及び時間の余裕の獲得等の機能が欠落し 防衛上の欠落が生じているこのため、対人地雷の代替装備として対人障害システムを整備し、防衛上の欠落を補完する。

(中略)
2 
(1)の③ 当該年度に実施する必要性対人地雷禁止条約の発効に伴い対人地雷機能が欠落しており、更に14年度には対人地雷の廃棄が完了するため、また、当面の措置として以前から導入している指向性散弾には不十分な点があるため、努めて早期に対人地雷の代替装備として対人障害システムを整備する必要がある。

(中略)
(2)の② 他の代替手段との比較検討状況11年3月の対人地雷禁止条約の発効に伴い、陸上自衛隊においては、現在、隊員が目標を視認して発射するよう設計された「指向性散弾 (注)を導入しているが、指向性散弾で敵の侵攻を遅滞ないし阻止する」ためには、例えば同一の場所に複数の指向性散弾を配置するなどの工夫を要し、また、操作人員を指向性散弾近傍に配置することが必要であり、遠隔操作が不可能であるため人員の安全が確保できず、また、多数の要員を配置する必要があるといった問題点があり、これらの問題点をクリアした装備を代替装備として整備する必要がある。(注)対人障害システムの障害Ⅱ型は、指令装置・監視装置を用いることにより、指向性散弾を遠隔操作できるようにしたものである。』

=====

防衛庁の文書での記述は、対人地雷が禁止になったので仕方なしにクラスター弾を導入した、というオブイェクト氏の主張②と整合的ではないように思われます。


空自のCBU-87/Bについては、次のように回答されています。

PEACEBOAT - インフォメーション - ニュースリリース

1.航空自衛隊は、敵の着上陸侵攻に際し、侵攻部隊の陣地、戦車等の車両、物資の集積所等を攻撃し、これを阻止する作戦を行うため、通常やクラスター爆弾などの対地攻撃兵器を保有しており、このうち、クラスター爆弾については、装甲貫徹力・破片効果・焼夷効果〔注1〕を有する子爆弾を散布することにより、通常爆弾にはできないような広範囲の敵を攻撃する場合にしようすることとしている。
〔注1〕
装甲貫徹力 :敵戦車等の装甲を貫く能力
破片効果 :敵車両等を破片により行動不能にする効果
焼夷効果 :敵の物資等を燃焼し使用不能にする効果

=====


この使用目的は、そもそも対人地雷とは異なるように見受けられます。


これらの検討から、主張①と②に沿って考えてみると、
・対人地雷を保有していたことから「クラスター爆弾は要らなかった」にも関わらず導入
・「対人地雷が禁止されたので、しょうがなく導入」ではなく、それ以前から導入
・対人地雷の代替兵器はクラスター爆弾とは別(指向性散弾)に存在
・使用目的は対人地雷とは異なる

ということではないかと。


これとは関係ありませんが、離島やテロ潜入の話というのは、クラスター爆弾保有を正当化する理由には使えない、ということかもしれません。対人地雷でそれら防衛作戦というのは、実効性ので面考え難いので。

いずれにせよ、「CBU-87/B」や「MLRS」は当時必要なかったにも関わらず、無駄に資金投入されたのだ、ということは判りました。どうも有難うございました。




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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-06-09 12:16:00
これをちゃんと読んでもう一度考えなさい。
http://www.kojii.net/opinion/col080609.html
返信する
Unknown (Unknown)
2008-06-09 02:23:46
前回のコメ欄において、「最後のお答え」だからこちらもコメしないと申しましたが、
ちゃっかり離島防衛に使えないとか書かれているので、前言撤回でコメさせていただきます。


「(前々からそんな流れだったけど、ついに)政府が対人地雷禁止条約を受諾したぞ!早速代替兵器になるクラスター爆弾の調達を開始しよう!」

あなたの想定に従えば、これが正しい代替兵器(案)の模索方法なるのでしょう。
でも、こんな後手後手の対応をする組織を誰が支持するんですか。
「(前々からそんな流れだったけど、ついに)年金問題が社会問題化したぞ!早速年金問題を改善していこう!」
この対応をとった政府がどういう批判にさらされたか、あなたはその目で見たはずです。


>この使用目的は、そもそも対人地雷とは異なるように見受けられます。

CBU-87/Bの子弾には、対装甲・対人両用だったと思います。
そして、敵車両「等」ということなので、対ソフトスキン(生身の兵士も含みます)用と言えるでしょう。対人兵器の代替になります。

もちろん、クラスター爆弾自体の開発目的は、当然ながら対人地雷の使用目的と同義ではありません。
(クラスター爆弾の類は、対人地雷の禁止が騒がれるずっと前から存在しているからです)
ただ、「日本の」クラスター爆弾の使用目的は、主に「敵の着上陸侵攻に際し、~(中略)~これを阻止する作戦を行うため」とあります。
そして、リンク先の回答の中には、「対人地雷は、敵の侵攻を遅滞ないし阻止し防衛火力を有効ならしめる手段」という記述もあります。
つまり、どちらも敵軍の侵攻(着上陸)を阻止する目的を有しています。
また、どちらも保持することで、相手側の侵攻意欲を削ぎます。(地雷があるかもしれない・クラスター爆弾を投下されるかもしれない場所へ喜んで出向く兵士はいません。)
もともと違う特徴を持つ兵器ではありますが、「使用(保有)目的」は異なるようには思えません。


今申し上げたように、多目的に使えるクラスター爆弾は、対人地雷の使用目的「も」ある程度カバーしていると考えるべきです。

>これとは関係ありませんが、離島やテロ潜入の話というのは、クラスター爆弾保有を正当化する理由には使えない、ということかもしれません。対人地雷でそれら防衛作戦というのは、実効性ので面考え難いので。

ですから、このように「対人地雷は離島などでの防衛に使えないので、クラスター爆弾も使えない」と結論付けるのは間違いです。
※対人地雷とクラスター爆弾は、同じ使用目的を有してますが、クラスター爆弾はその使用目的にしか使えない兵器ではありません。
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