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消費者金融市場の貸出金利は「リスクを正確に反映する」とは言えない

2006年09月04日 13時36分05秒 | 社会全般
ご質問を頂いていますが、長くなるので記事にしました。繋がりは、記事のコメント欄の方からお読み下さい。


理解に苦しむね

以下に回答をしてみたいと思います。


>つまり同一人物への貸出しについて,業者A,B,Cの条件がそれぞれ例の様に異なっていると考えてよいのですね?

そうです。

>一番安いところから借りれば良いだけ

これはその通りです。借り手の行動が合理的であれば、正しい選択が行われるハズですが、現実にはそうなっていないと思われます。その理由はかなり以前から謎とされていますが、今も有力な説明は出てきていません。恐らく、借り手と貸し手の情報格差などの影響があると思います。あとはイメージとかアクセスの容易さとかでしょうか。

>結果として必要以上の金利をとっている業者は市場から消えざるを得ないのですから,「金利がリスクを反映している」と考えることになんの問題があるのですか?

業者が競争で淘汰されることと、消費者金融市場での金利が「リスクを反映している」ということとは違いますよ。

>では銀行もいわゆるサラ金も借り手のリスク評価に大きな違いはないと考えていると理解してよいのですか?

そのような飛躍は書いていないのですが、誤解を与えたかもしれないですね。コメントに書いてありますが、銀行の例は、あくまで「事業性資金の融資の例」として書いたまでです。『銀行貸出は、短期プライムレート+上乗せ=1.4+0.5のような数字が出てくるので。銀行が異なれば、若干数字は変わりますが数倍もの違いはないですね』というのは、消費者金融市場とは異なるものと思います。銀行と貸金業でリスク評価に違いがない、などとは言えないと思いますよ。


銀行が融資する場合に、「短期プライムレート+上乗せ(リスク評価)部分」という構造になっているならば、上乗せ部分が金利に反映される、ということです。

仮に鈴木商店、田中商会の2人に融資する場合、ある銀行では

鈴木=短期プライムレート+0.5
田中=短期プライムレート+1.0

となるとします。この時「短期プライムレート」はその時点では「定数項」ですので、上記0.5と1.0の差は「借り手のリスク評価」の差として、「金利に反映」されます。リスク部分を変数、鈴木・田中部分(つまりは貸出金利)も変数(借り手が十分大きい数だけ存在する)となっていて、リスク部分と貸出金利は一次関数で表現されます。この場合には、「金利はリスクを反映している」と言えるということです。これと同じ事を複数の銀行で調べると、鈴木さんの0.5の部分や田中さんの1.0の部分が、割と狭い範囲に分布しており、プライムレートとの合計値である貸出金利を数倍にするほどの差は滅多にない、ということです。この場合、銀行審査はある水準で同じくらいに機能している、ということです。他の銀行が鈴木さんに貸し出す時には、プライムレート+0.7かもしれませんが、要するに、分布範囲は限られている(例えば鈴木さんでは0.5~0.7という風に)、ということです。


ところが、消費者金融市場を見ると、必ずしもこのような関係が成立しないのではないか、ということを指摘しているのです。


ある製品Xの販売価格構造が次の通りであるとします。

価格X=費用A+利益B

Xを売る業者が多数ある時、費用Aが一定(定数項)であれば、業者ごとの価格Xは利益Bの変動に依存します。この時、価格Xが定数項である費用Aを代表する数字になっていますか?Xは色々な値を取っているのに、それが定数である費用Aを「表す値」であると?
lydiaさんが仰るように、同一人物に貸し出す際の「リスク評価が一定」であるという仮定をすると、貸出金利=リスク評価部分(定数項)+上乗せ部分ですから、XとAの関係と同じ意味合いですよね。これは貸出金利がリスク評価(定数)を示す値などにはなっていない、ということです。


ある業者Mが多くの人々に貸す時に、貸出金利=コストm+リスク評価部分rでコスト部分(利益も含むとして)が定数であるとリスク部分が変数となるのですが、この業者Mと別の業者Nでは、貸出金利=コストn+リスク評価部分r'となっていれば、mやnが定数項であれば貸出金利はリスクに依存する変数とも考えられなくはありません(業者単独で見れば)。そこで消費者金融市場を見るとき、同一人物に貸し出す場合のリスク評価がr=r'というのがほぼ成り立たねばならず(lydiaさんの主張はそういうことですよね)、貸出金利はコストmやnに依存する変数となってしまいます。であれば、貸出金利は「定数r」を代表させられるようなものではないでしょう、ということです。金利構造にもよりますが、リスクを反映するよりも、「コスト差」の方が割合的にかなり大きければ、貸出金利というのはむしろ「コスト差」を表現する値、ということになってしまいますので、貸出金利の分布を「リスク評価の分布」に置き換えることは不適当だと言っているのです。


唯一成り立つ可能性があるのは、全ての業者が費用構造が同一であり、コストm=コストnが全ての業者で成り立つ場合だけですが、前にコメントに書いたように、企業規模等でコストmやnは大きく異なっているのは事実ですので、見かけ上の貸出金利が「リスクを正確に反映している」などということはない、というのが結論です。銀行の場合には、短期プライムレートや長期プライムレートによって代表され、これらコスト部分に貸金業ほどの大差がない為に、リスクが反映されやすいとも言えるのではないかと思いますが、正確には文献などを見た方がいいでしょうね。


最も望ましいのは、「一番金利の低い所」を選択する人が十分多くなればいいのですが、初回借入だけ考えても、貸金大手から借りる人々が多く、もっと低金利の銀行系、クレジットキャッシング、ノンバンクや銀行のカードローンなどは金利が有利にも関わらず借り手が優先的に選択してきたとは言えないのです。




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2 コメント

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Unknown (lydia)
2006-09-04 23:42:33
>これはその通りです。借り手の行動が合理的であれば、正しい選択が行われるハズですが、現実にはそうなっていないと思われます。その理由はかなり以前から謎とされていますが、今も有力な説明は出てきていません。



あたかも借り手が合理的に行動しないことが事実であるかのように書いてありますが,それをサポートする証拠はあるのですか?



>業者が競争で淘汰されることと、消費者金融市場での金利が「リスクを反映している」ということとは違いますよ。



十分競争的ならば後述するようにリスクと金利の間に相関関係を認めることが自然です.



>他の銀行が鈴木さんに貸し出す時には、プライムレート+0.7かもしれませんが、要するに、分布範囲は限られている(例えば鈴木さんでは0.5~0.7という風に)、ということです。



これはつまり

1.銀行のリスク評価のばらつきは小さい

2.銀行間で十分競争が働いているため,(調達金利+リスク評価)以外の超過利潤は生じない

という2点を仮定したことによるものですね.確認していただきたいのですが,上の2つのうちどちらか1つでも成立しないならば,まさくにさんの言うような結論は成立しません.



>価格X=費用A+利益B

>Xを売る業者が多数ある時、費用Aが一定(定数項)であれば、業者ごとの価格Xは利益Bの変動に依存します。この時、価格Xが定数項である費用Aを代表する数字になっていますか?Xは色々な値を取っているのに、それが定数である費用Aを「表す値」であると?



それは単に消費者金融市場について独占力を認めているため,利益という超過利潤が存在するための問題に過ぎません.銀行の例で認めたように十分競争が働くと考えれば利益Bは最終的に0になるのですから,価格は(限界)費用Aで決定されます.したがってポイントは市場に独占を認めるかどうかです.銀行の貸出しについては独占を認めない一方で,消費謝金融の貸出しに独占を認める合理的な根拠はあるのですか?



>そこで消費者金融市場を見るとき、同一人物に貸し出す場合のリスク評価がr=r'というのがほぼ成り立たねばならず(lydiaさんの主張はそういうことですよね)、



話のつながりがよくわからんのですが,まぁその通りです.



>貸出金利はコストmやnに依存する変数となってしまいます。であれば、貸出金利は「定数r」を代表させられるようなものではないでしょう、ということです。



くどいようですが,コスト高さは金利の高さに反映され,金利が高い業者は市場から退場しますから,市場が十分競争的ならばm=nが成立して,金利がリスクを反映すると考えることに何の問題がありますか?



私の印象を述べると,

1.銀行についてはかなり効率的な市場を仮定している

2.消費者金融市場については独占的な市場を仮定している

3.借り手の行動に不自然なまでの非合理性を仮定している

というアクロバティックな仮定を置かない限り,リスクが金利に反映されないという議論は成立しにくく,したがって支持できないということになります.



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リスク測定基準の確立 (吉行誠)
2006-09-05 13:40:11
アメリカのconsumer creditの世界で、risk based pricingといえば、scoringによる特定セグメント債務者層の不良化率が推定可能な状況を指します。信用リスクに対して、プライシングされる。それが実証データで証明されていなければ、機能するかどうかもわかりませんので、validationは、常時モニタリングを要します。

たとえば、

A)住居形態5(持ち家、持ち家mortgage,賃貸、親同居、社宅)

B)居住年数5(1年未満、1-3、3-5、5-10、10年以上)

C)勤務年数5(1年未満、1-3、3-5、5-10、10年以上)

D)職業10(公務員、上場企業、......飲食サービス、営業販売員/代理店、独立自営サービス、タクシー運転、主婦)

E)負債総額6(100万円未満、100-150、150-200、200-300、300-400、400万円超過)

F)借入件数8(カード枚数、与信枠が取れる件数)

たとえば、この6区分で、それぞれについて、7500通りの区分について、過去2年期間の不良化率(90日以上延滞+破産や調停申立など法曹紛争債権、債務整理、死亡、行方不明、詐欺などの債務者特殊事由債権)、30日以上延滞、30日以内延滞実績の比率を計算します。

ひとつの小区分6万には、統計上の信頼度から1万件くらいのローンが欲しいところですが、6億件にもなりますから、サンプル集団を集めるのが困難です。そこで大区分6のそれぞれにデータの正確性が担保される5-10万件(小区分の数x1万)のデータで、検証するとします。5000件あると、データは安定し、推定を信頼できる程度に分散が小さくなります。



これによって、それぞれの小セグメントに含まれると不良債権が推定され、かつ実証検証により、年度別不良化率がわかります。



分析した結果、判明した結果だけですが、アメリカ流のスコアに線形変換した点では、わが国消費者金融の実態は、



借入件数大区分でみると、

1...580-640

2...560-610

3...540-580

4...520-560

5...500-540

6...480-520

7...460-500

8...480未満

ちなみに、アメリカでは、660以上がプライム市場、580-660 subprime市場、580以下がnonprimeで、

prime (0.1~3%の年貸倒率)

subprime(3~7.5%)

nonprime (7.5%以上)

とも言われています。90年代半ばに、多くの銀行がsubprimeに進出していくことができたのは、scoreの発展だったといわれています。

97年OCC(連邦銀行規制監督機関)は、銀行が与信判断にscoring modelを使う場合のガイドラインを発表し、客観的数値、実証的に推定可能であることが求めたら、検査対象としました。

こうして、リスク測定が客観的に可能になるにつれ、必要資本計算が統計上可能になっていき、銀行の進出が後押しされました。



そういうインフラ無しに、リスクに応じたとか、応じてないとか、ジャーナリスティックにいうものではありません。



金融庁は、貸出金額規制して、負債総額150万円未満

、年収の1/3までとか貸付基準をつくって、それを超えて借りる人を不適格債務者、貸付禁止債務者として、市場統制するのでなく、業者が使っているスコアを検討して、アメリカ銀行監督同様に、スコアリングの使用誤りによる消費者保護を考えることをなぜしないのか。現実には、不適格債務者は、市場の70%をこえており、法適用されれば、4件の借入を50万、30万、20万円など信用枠をもっていても、食費の2万円が借りれなくなります。













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