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『日本はなぜ貧しい人が多いのか』(原田泰著)の土居評

2009年11月30日 11時16分31秒 | 経済関連
昨日の読売新聞「本よみうり堂」欄での書評を拝見。いつだったか、田中先生も書いておられた。
読売新聞は方は、土居慶大教授の書評である。確か「必殺仕分け人(笑)」に選ばれ、お忙しいというか、今「最も旬」の渦中にある評者である。
記事では、中々よい記述があったので、取り上げてみたい。
(記事の引用部は『』で示す)


『タイトルにある問いかけに対し、本書は、社会保障制度の不備が一因だとする。失業給付制度はその一例だ。失業の可能性が少ない正社員には手厚いが、失業の可能性が高い非正規社員は未加入が多いのが現状だ。所得の底割れを防ぐ取組みが、今後の重要な課題といえよう。』


日本における「知の喪失」時代の危機にあって、こうした本職の(本物の)専門家たちが声を上げてゆくこと、正しい知識を広め伝えること、これが極めて重要なのだ。同時にそれは、他の研究者たちの評価に耐えうるものでなければならない。理屈や解説にも、ある種の「robust」が求められる、ということである。とりわけ、経済学分野の話なのですし。

そのベースとなるのは、実証的な、或いは説得的なデータに基づく議論であろう。多くの解説者の言葉には、データなき自説、軽い独自論評といったものが横行する中で、たとえ「重箱の隅」と揶揄されようとも、事実の積み上げとデータから解明を試みるということこそ、最も重視されるべきことであると思う。そうした意味においては、一つのテーマ(たとえば貧困)について、多様な切り口やデータを用いて本質に迫るという本書は、大いに期待ができそうだ。記事では更に次のように続く。


『日本銀行の役目は、物価の安定を通じて経済を安定させることだが、物価が少しでも上がれば金融を引き締める政策を採っているため、物価がデフレ傾向に偏る点に言及している。生活者としては、物価が下がる分には不満がないかもしれないが、それによって企業経営が苦しくなり、雇用や給料が減ってしまっては身もふたもない。デフレを止めなければ、生活は豊かにならないとの著者の意見には説得力がある。日本銀行は、何も出来ないとあきらめる前に、デフレを止めるべくもっと毅然たる態度を国民に示さなければならない。』


遂に、土居先生の認識もここまで到達したか、という思いが致しました(笑)。
日本の経済学者で影響力のある方々が本気で取り組めば、きっと政府をも動かせるはずですよ。勿論、日銀も、です。本当の意味で、専門知に打ち克てるのは、専門知だけです。専門家たちの徹底した議論と知識の洗練こそが、誤った論拠を木っ端微塵に吹き飛ばせる唯一の方法です。神学論争などという次元ではなく、もっと現実に即した、日々の生活の中にある問題を解決する論理が必要とされているのです。そういう点において、こうした専門家たちに期待したいです。


『様々な社会経済の通説に対し、経済学の考え方とデータを用いながら喝破して、本質を研究する著者ならではのアプローチは、読む者を痛快にさせる。』

そうでしたか。
痛快になるかどうかは別として、土居先生にここまで言わしめるとは、多分「鮮やかな切り口」ということなのだろうと思いますので、これは凄い本なのかもしれない。

急いで本屋に行かなくちゃ(笑)。




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