さすが内閣府(なーんてね、笑)。最近頑張っていますね。大変勉強になる資料があったので、挙げておきます。
今週の指標 No792
これをもって、単純な考察や結論を導くのは困難かもしれませんが、中々良い分析であると思います。グラフで見た方が判りやすいですが、一応、サマリー部分を一部引用させて頂くと、次の通りです。
具体的には、日経NEEDSから取得できる東証一部上場企業の財務諸表から個別企業のパネルデータを用いて、賃金交渉モデルに基づき実証分析を行った(詳細は備考参照)。先行研究によると、企業の雇用調整速度は、赤字に陥るなど企業の存続が危ぶまれる状況で早くなること、また、内部者(従業員)の影響力が強いと調整速度が遅くなることが知られている。 そこで、検証仮説として、債務を抱えた企業ではその存続が危ぶまれることから賃金抑制度も強くなるのではないか、その際、内部者の影響力が強い企業では賃金抑制は弱く、株主など外部者の影響力が強い企業(機関投資家の持ち株比率が高い企業及び株式の安定保有比率が低い企業)は賃金抑制も強いのではないかと仮定した。
検証結果(図3)をみると、企業計でみて債務の存在は賃金に対して抑制的な効果を持つ。しかし、株主から影響を受けやすいと考えられる企業とそうでない企業に分けて分析すると、前者の場合のみが賃金に対して抑制的な効果を与えることが分かる。 この結果は、企業経営に対する株主の影響が相対的に強い企業では、債務の高まりが賃金を抑制する一方、株式持合い等によって株主の経営に対する影響が相対的に弱い企業では、従業員の利害が優先され、債務が高まったとしても、賃金がそれほど抑制されないことを示唆している。
これには良い面と悪い面があると思われる。統治の問題として、「経営が甘くなりやすい」というようなことが起こりやすくなるのかもしれない。平たく言えば放漫経営だ。しかし一方では、従業員に対する分配効果が高くなると考えられ、優秀な企業経営者の下においては、債務負担以上のリターンを得られる限り経営的な問題は発生せず、従業員の忠誠心や労働意欲という別な形で貢献が得られる可能性も考えられる。
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続々・イルカはサメになれない~株主と従業員
外国人投資家が日本株を多く保有するようになり、従業員は給料を削られる(=賃金抑制効果)ようになってしまった、と前の記事に書いたのが、あながち大外れでもなかったのだな、と思った。
私の考え方としての大前提を書いておく。
売上が減るとかで業績が悪い時、「首切り」とか減給で対処するのは、誰でも考え付く方法なのであまりに普通である。一般の家庭であっても、収入が減ってしまった場合に「父ちゃんの小遣い」をまず減額、次に息子・娘の小遣いを減額、みたいなことは誰でも考えられるし、実行可能性は容易だと思える。それは平凡な主婦であってもできる、ということ。やりくり上手とは、父ちゃんや息子・娘の「不満度」をほとんど変えることなく、家族が気付かないくらいに収入減少分をカバー(どこかで節約している、ということだ)することなのである。でも、収入が減ったからと言って、いちいち息子や娘を放り出すかね?「おまえは何処かへ行ってくれ」とか、果たしてできるのか?そういうことをどうしても考えてしまうのだ。そりゃ、本当に会社が苦しくなったら、人員整理も止むを得ない場合はあるだろう。けれど、それは「最終手段」であって、経営側が死ぬほど努力をした結果なのかと言えばそうでもないんだよ。リストラした人数が多い方が経営者の評価として上がる、というのは、どう考えても解せないのですよ。
それは要するに、首切りに伴う「苦痛」や「摩擦」はかなりあるだろうから、それでも「俺は実行できるぜ」と言って、やってのけられるヤツが「優秀な経営者」みたいに言われるのだよ。非情さを持ってりゃいいのかよ、って話になってしまう。それは、本質的にはオカシイんじゃないか、と思うのですよ。以前書いたのだけれど、トヨタの奥田さんを割りと信頼していたのは、従業員を見捨てることをしなかった経営者だったからだ(成果主義は日本にとって本当に良かったのか?)。実際見たことも会ったこともないので、本当の実力や評価は知らない。私の買いかぶりに過ぎないのかもしれない。だが、リストラしないという姿勢を明確に打ち出したことは、企業経営者として高く評価されるべきだと私自身は思っている(企業経営に関わる経験がないからそんなことが言えるだけなのかもしれない)。企業経営者として守るべきものは、必ずあるはずだ。
ところが日本の経営者たちの多くは違っていたのだ。
退席しますので、後で追加したいと思います。
今週の指標 No792
これをもって、単純な考察や結論を導くのは困難かもしれませんが、中々良い分析であると思います。グラフで見た方が判りやすいですが、一応、サマリー部分を一部引用させて頂くと、次の通りです。
具体的には、日経NEEDSから取得できる東証一部上場企業の財務諸表から個別企業のパネルデータを用いて、賃金交渉モデルに基づき実証分析を行った(詳細は備考参照)。先行研究によると、企業の雇用調整速度は、赤字に陥るなど企業の存続が危ぶまれる状況で早くなること、また、内部者(従業員)の影響力が強いと調整速度が遅くなることが知られている。 そこで、検証仮説として、債務を抱えた企業ではその存続が危ぶまれることから賃金抑制度も強くなるのではないか、その際、内部者の影響力が強い企業では賃金抑制は弱く、株主など外部者の影響力が強い企業(機関投資家の持ち株比率が高い企業及び株式の安定保有比率が低い企業)は賃金抑制も強いのではないかと仮定した。
検証結果(図3)をみると、企業計でみて債務の存在は賃金に対して抑制的な効果を持つ。しかし、株主から影響を受けやすいと考えられる企業とそうでない企業に分けて分析すると、前者の場合のみが賃金に対して抑制的な効果を与えることが分かる。 この結果は、企業経営に対する株主の影響が相対的に強い企業では、債務の高まりが賃金を抑制する一方、株式持合い等によって株主の経営に対する影響が相対的に弱い企業では、従業員の利害が優先され、債務が高まったとしても、賃金がそれほど抑制されないことを示唆している。
これには良い面と悪い面があると思われる。統治の問題として、「経営が甘くなりやすい」というようなことが起こりやすくなるのかもしれない。平たく言えば放漫経営だ。しかし一方では、従業員に対する分配効果が高くなると考えられ、優秀な企業経営者の下においては、債務負担以上のリターンを得られる限り経営的な問題は発生せず、従業員の忠誠心や労働意欲という別な形で貢献が得られる可能性も考えられる。
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私の考え方としての大前提を書いておく。
売上が減るとかで業績が悪い時、「首切り」とか減給で対処するのは、誰でも考え付く方法なのであまりに普通である。一般の家庭であっても、収入が減ってしまった場合に「父ちゃんの小遣い」をまず減額、次に息子・娘の小遣いを減額、みたいなことは誰でも考えられるし、実行可能性は容易だと思える。それは平凡な主婦であってもできる、ということ。やりくり上手とは、父ちゃんや息子・娘の「不満度」をほとんど変えることなく、家族が気付かないくらいに収入減少分をカバー(どこかで節約している、ということだ)することなのである。でも、収入が減ったからと言って、いちいち息子や娘を放り出すかね?「おまえは何処かへ行ってくれ」とか、果たしてできるのか?そういうことをどうしても考えてしまうのだ。そりゃ、本当に会社が苦しくなったら、人員整理も止むを得ない場合はあるだろう。けれど、それは「最終手段」であって、経営側が死ぬほど努力をした結果なのかと言えばそうでもないんだよ。リストラした人数が多い方が経営者の評価として上がる、というのは、どう考えても解せないのですよ。
それは要するに、首切りに伴う「苦痛」や「摩擦」はかなりあるだろうから、それでも「俺は実行できるぜ」と言って、やってのけられるヤツが「優秀な経営者」みたいに言われるのだよ。非情さを持ってりゃいいのかよ、って話になってしまう。それは、本質的にはオカシイんじゃないか、と思うのですよ。以前書いたのだけれど、トヨタの奥田さんを割りと信頼していたのは、従業員を見捨てることをしなかった経営者だったからだ(成果主義は日本にとって本当に良かったのか?)。実際見たことも会ったこともないので、本当の実力や評価は知らない。私の買いかぶりに過ぎないのかもしれない。だが、リストラしないという姿勢を明確に打ち出したことは、企業経営者として高く評価されるべきだと私自身は思っている(企業経営に関わる経験がないからそんなことが言えるだけなのかもしれない)。企業経営者として守るべきものは、必ずあるはずだ。
ところが日本の経営者たちの多くは違っていたのだ。
退席しますので、後で追加したいと思います。