凍りのくじら |
どこかダークなファンタジー系のミステリー作家、前二作でそういった印象を持っていた辻村深月でしたが、ここにきていい意味で裏切られました。
自分の居場所を見つけられずに醒めた目で世の中を見ていた女子高生の日常、そんなものが世代も性別も違う自分に共感を持って感情移入ができるわけもなく外れかなぁ、と思いながら読んでいたのですが、中盤からぐいぐいと引き込まれて止まらずに朝方までに一気に読み終えるぐらいの熱中です。
もちろん女子高生の気持ちや感じ方などは分かるわけもなく読み手を選ぶような気もしますし、やや苦痛を伴った前半がありましたので自分としては満点な出来とは受け取れませんでしたが、それでもお気に入りの作家に仲間入りでその全てを読んでみたいと思わせるのに充分すぎる作品でした。
とにかく人物設定が巧いなぁ、がその感想です。
ここでそれを仕掛けるか、というような後になってみなければ分からない伏線の撒き方も見事ですが、その登場人物が活き活きとしているのが特徴です。
ふわふわとしたファンタージーチックな描写があったかと思えば現実味のある会話が続いたりのバランスもよく、難しい他人との距離感をテーマにしているものよいのでしょう。
例によってハッピーエンドを命題にしているかのようなエピローグも今回は邪魔をしませんでしたし、特に女性、もしくは女の子の親御さんにはお奨めです。
2013年12月22日 読破 ★★★★☆(4点)