オリオン村(跡地)

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凍りのくじら

2013-12-22 21:33:04 | 読書録

凍りのくじら

講談社

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どこかダークなファンタジー系のミステリー作家、前二作でそういった印象を持っていた辻村深月でしたが、ここにきていい意味で裏切られました。
自分の居場所を見つけられずに醒めた目で世の中を見ていた女子高生の日常、そんなものが世代も性別も違う自分に共感を持って感情移入ができるわけもなく外れかなぁ、と思いながら読んでいたのですが、中盤からぐいぐいと引き込まれて止まらずに朝方までに一気に読み終えるぐらいの熱中です。
もちろん女子高生の気持ちや感じ方などは分かるわけもなく読み手を選ぶような気もしますし、やや苦痛を伴った前半がありましたので自分としては満点な出来とは受け取れませんでしたが、それでもお気に入りの作家に仲間入りでその全てを読んでみたいと思わせるのに充分すぎる作品でした。

とにかく人物設定が巧いなぁ、がその感想です。
ここでそれを仕掛けるか、というような後になってみなければ分からない伏線の撒き方も見事ですが、その登場人物が活き活きとしているのが特徴です。
ふわふわとしたファンタージーチックな描写があったかと思えば現実味のある会話が続いたりのバランスもよく、難しい他人との距離感をテーマにしているものよいのでしょう。
例によってハッピーエンドを命題にしているかのようなエピローグも今回は邪魔をしませんでしたし、特に女性、もしくは女の子の親御さんにはお奨めです。


2013年12月22日 読破  ★★★★☆(4点)

 

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8 コメント

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こんばんは。 (kaorin)
2013-12-23 00:49:41
う~ん、最近、レンタルビデオ(ホラー 笑)
中心だった私ですが
オリオン様のレビュー読んで、ふむふむ、
現実に戻る時期が来たと感じました!
悪魔な映画なんて子供だましよ(怒)

他人との距離感・・・自分にとって永遠の謎、
悪魔より難しい課題ですわ(泣)
この作品読んだら、タメになるかしら?
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お返事 (オリオン)
2013-12-24 00:19:04
冬のホラーですか(笑)
どうも最近は映画よりも読書に勤しんじゃっています。
観たい映画よりも、読みたい本が多いんですよね。
若い女性から見た他人との距離感はオヤジな私にはあまり分かりませんでしたが、女の子の父親観は世のパパに読んでもらいたいです。
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冷たい校舎 (ちえま)
2013-12-24 21:25:16
わけあって辻村作品をこのところまとめて読んでいました。『冷たい校舎の時は止まる』はデビュー作とは思えない完成度だとみました。もっとも最近読んだ『子どもたちは夜と遊ぶ』はある意味で救いようのない内容でしたが、いすれにしても、タイプはまったくちがいますが有川浩と並んで、引き出しの多い女性作家だと思います。『凍りのくじら』は未読なので、そのうち読んでみます。
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お返事 (オリオン)
2013-12-24 23:47:45
どんなわけなんだろう(笑)
仰せのように引き出しは多そうですね、その根底にはファンタジー系な描写があるようですが、シリアスなものだったりほのぼのとしていたり、いろいろと驚かせてくれそうです。
次はメジャースプーン、楽しみです。
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久々にハマった作家かも (9ちゃく)
2013-12-29 01:45:47
たった今,読み終えました。
オリオンさんよりも早く読み始めたというのに,ゴールははるかに遅れてしまいましたが(汗)

前の2作品とはかなり趣の異なる作品,というかミステリー色は薄かったですね。
読み終えてみれば,なるほどミステリーだったのだなと,そんな意味でも軽いどんでん返しでした。
おっしゃるとおり,人物描写は秀逸で,今までの登場人物に似ているようで別の個性を持っており,
今回は若尾にさえ同情してしまいました。「生きにくい」人を描くのが本当に上手いですね。
我らが「sukoshi futebuteshii」彼と同じ名字の登場人物もいて親近感を覚えたり覚えなかったり(笑)
ますますハマりました。明日からはメジャースプーンです。
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お返事 (オリオン)
2013-12-29 23:57:06
中盤から一気に読んじゃいました。
おかげで寝不足になりましたが、それ以上に得るものがあったと思います。
若尾は・・・男からしても同情はできなかったかしら。
でもいそうな感じで、それが登場人物のリアルさに繋がっているのだと思います。
「sukoshi futebuteshii」は・・・実父かと思ってました(汗)
メジャースプーンは来年かなぁ、とりあえずは楽天koboで購入済みです。
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名前の操作 (ちえま)
2014-01-22 09:05:35
読了しました。『冷たい…』ほどには引き込まれませんでしたが、悪くはありませんでした。とにかく、共通した「ひんやり感」はいいです。

辻村作品のポイントは、ずばり名前の操作ですね。名の「読み」が明かされないとか、ニックネームとフルネームの関係とか、姓が伏されているとか。『冷たい…』は虚構の世界の中だったのでよしとしても、『凍りの…』はちょっとアウト?かなと思いましたが、まあ、結局幽霊だったので許しときましょう(笑)。
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お返事 (オリオン)
2014-01-23 00:10:10
ひんやり感、ありましたね。
どこか斜め目線の冷めた主人公の、しかし時折に見せる熱さとの対比がよかったように思います。
叙述トリックってのはやられた感と不公平感のようなものとのバランスが難しいような。
この作者はそのバランスが絶妙かなぁ。
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