電脳筆写『 心超臨界 』

人生の目的は目的のある人生を生きること
( ロバート・バーン )

従軍慰安婦という嘘 《 「51年目の戦争責任」――小山和伸 》

2024-06-24 | 04-歴史・文化・社会
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平成8年(1996)年5月20日に教育テレビで放映された「51年目の戦争責任」は、教育番組にはほど遠い捏造番組であった。この番組では、慰安婦募集に関連して軍が出した通達文を改竄して紹介し、不正な方法で慰安婦を集めている不届きな業者を取り締まるよう指示した軍部について、不正な方法を用いてでも慰安婦を調達せよと命じていた証拠を突き止めたとして、その非道を嬉々として糾弾してみせたのである。


◆NHKの驚くべき捏造報道「51年目の戦争責任」

『これでも公共放送か NHK!』
( 小山和伸、展転社 (2014/03)、p36 )

〈 驚くべき改竄事例 〉

先ず、問題の資料「陸支密大日記」(防衛省防衛研究所蔵)の原文を以下に紹介する。

陸支密

副官ヨリ北方方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒案

支那事変地ニ於ケル慰安所設置ノ為内地ニ於テ之カ従業婦ヲ募集スルニ当リ故ラニ軍部諒解等ノ名儀ヲ利用シ為ニ軍ノ威信ヲ傷ツケ且ツ一般民ノ諒解ヲ招ク虞アルモノ或イハ従軍記者慰問者等ヲ介シテ不統制ニ募集シ社会問題ヲ惹起スル虞アルモノ或イハ募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少カラサルニ就テハ将来是等ノ募集ニ当リテハ派遣軍ニ於テ統制シ之ニ任スル人物ノ選定ヲ周到適切ニシ其実施ニ当リテハ関係地方ノ憲兵及警察当局トノ連繋ヲ密ニシテ以テ軍ノ威信保持上並ニ社会問題上遺漏ナキ様配慮相成度依命通牒ス


この通牒文を、概略現代文に直せば以下のようになる。

  支那事変地域での慰安所を設置するに当たって、日本国内で従業婦
  を募集する際に、ことさらに軍部の了解を得ているようなことを言
  って、軍の名を利用して軍の威信を傷つけ、また一般人に誤解を招
  くような業者がある。或いは、従軍記者や慰問者などを介在して無
  秩序に募集を行い、社会問題を引き起こしかねない業者もある。ま
  た、募集の担当者の中には不適切な者がいて、まるで誘拐のような
  方法を取る者までいて、警察に検挙され取調を受けているなど、注
  意が必要な者も少なくない。従って、将来慰安婦の募集に関しては、
  募集担当者の人選が適切になるよう十分注意し、関係地方の憲兵と
  警察は連絡を密にして、社会問題によって軍の威信が傷つくことが
  ないように、十分に配慮するよう命令通達する。

さて以上、この通牒文の主旨が不正な業者の取り締まりに万全を期せ、という点にあることは明らかであろう。そして取り締まりに万全を期するため、軍と警察、すなわち官憲の相互連携を密にせよと命令通達しているのである。

しかるにNHKは、本通牒文の用語をつまみ食いしてつぎはぎし、

  慰安所設置、従業婦等ヲ募集、募集ノ方法誘拐ニ類シ、募集ニ当タ
  リテハ派遣軍ニ於テ統制シ、実施ニ当タリテハ関係地方ノ憲兵及警
  察当局トノ連繋ヲ密ニシ、社会問題上遺漏ナキ様配慮、

といった単語と文節を用いて、あたかも軍と警察が誘拐に類するような方法を用いてでも慰安婦をかき集め、しかもそれが社会問題化しないように、うまく収めるよう命じていたと放送したのである。誠に驚くべき改竄という他はない。

ここまでして、NHKは旧日本軍を、あるいは戦中・戦前の日本および日本人を悪に仕立て上げたいのであろうか。

〈 偏向したゲスト選定 〉

番組にゲストとして出演していたのは、中央大学の吉見義明教授、および神奈川大学の阿部浩己助教授(当時)であった。吉見義明教授は、悪名高き詐欺本『私の戦争犯罪』(吉田清治著 昭和58(1983)年)に依拠しつつ、ひたすら旧日本軍の性犯罪を言い募り続けている人物である。

一方、阿部浩己助教授は国際法の専門家という立場で、このNHK番組に招かれており、当時国連で留意採択された「クマラスワミ報告」に基づき、日本政府が適切な謝罪・賠償を怠ってきたため、旧日本軍の性犯罪が遂に国際的な問題となったとの主旨で、法律家としての専門的見解を述べたわけである。

しかしながら、この放送当時すでに『私の戦争犯罪』に関しては、平成4(1992)年3月における秦郁彦千葉大学教授(当時)の韓国済州島での現地調査によって、当地で慰安婦狩りをやったとする吉田証言記述については、当時をよく知る住民からの裏づけ証言が一件も取れず、全く根拠の無いデタラメであることが明らかとなったとの結論が公表されていた。公表時期は、平成4(1992)年4月30日の産経新聞が最も早く、次いで平成4(1992)年5月『正論』6月号、平成5(1993)年3月『文藝春秋』と続く。

特に平成5(1993)年3月、『文藝春秋』に掲載された秦郁彦教授の論文「昭和史」の謎を追う」は、同教授の第41回菊池寛賞受賞理由に挙がる著作となっており、番組放送期の平成8年に、NHKがこれを知らぬはずはない。『私の戦争犯罪』については、「51年目の戦争責任」放映のほとんど直後といってよい、平成8(1996)5月29日付『週刊新潮』誌上のインタビューで、著者吉田清治が史実証言に捏造があったことを認め、平成10(1998)年には秦教授との電話会見で、事実捏造を認め謝罪している。この経緯は、『慰安婦と戦場の性』(秦郁彦著 平成11(1999)年)にまとめられている。

番組では、慰安婦募集において「強制連行があった」とする吉見教授が、ゲストとして史実改竄に基づいた自説を滔々と論じ、「強制連行はなかった」とする秦教授は、ビデオ出演で僅か1分間という不公平が、公然とまかり通っていた。
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