電脳筆写『 心超臨界 』

悲観論か楽観論かの問いにはこう答える
私の知識は悲観的なものだが私のやる気と希望は楽観的だ
シュヴァイツァー

◆世界の「常識」は東京裁判史観

2024-08-13 | 05-真相・背景・経緯
§6-1 世界の「常識」は東京裁判史観
◆世界の「常識」は東京裁判史観


こんな番組が原爆記念日頃に繰り返し世界に流されていたことに、意図を感じてしまう。「軍国主義日本を凶暴残忍なアジアへの侵略者と決めつけたい。そうすることで無慈悲な原爆投下を正当化し、白人による3世紀にも及ぶアジア植民地化を免罪したい」という意図だ。


『知れば知るほど』
( 藤原正彦、新潮社 (2019/7/26)、p19 )

旅で海外に出ると、ニュースはどうしても新聞よりテレビということになる。現地テレビ局のニュースは言葉が大てい分からないし、たとえ分かっても地元のニュースがほとんどだ。自然とCNNかBBCワールドということになる。とりわけBBCワールドは世界の動きを的確に伝えるだけでなく、優れたドキュメンタリーを放送したりするので私の好みだ。

8月上旬、オーストラリアにいた。現地テレビは日本のテレビと同様につまらなく、BBCワールドばかり見ていた。

原爆記念日の頃、旧日本軍の慰安婦がとりあげられていたので思わず目が釘(くぎ)づけになった。この特派員報告を要約すると、日本では歴史修正主義者が大きな勢力となり、嘆かわしいことに慰安婦までが否定される勢いにある、という内容だった。歴史修正主義者とはもともと、ナチスによるユダヤ人虐殺(ぎゃくさつ)などなかったと主張する極右勢力を指した言葉で、欧米では「非人間」に近い蔑称(べっしょう)だ。

3人の人々が登場した。

1人目は歴史修正主義者の代表として田母神俊雄(たもがみとしお)元航空幕僚長だった。「日本の軍部が慰安婦の強制連行に関与したという証拠は何一つない」と力説した。

2人目は元慰安婦という韓国人老女であった。「2人の男にいきなり手荒くつかまえられ、汽車で中国へ運ばれました。粗末な小屋に住み、ろくな食料も与えられないまま慰安婦として毎日何人もの日本兵を相手にしました。耐えきれず崖(がけ)から身を投げた者や首を吊(つ)った者もおりました」。慣れているのか淀(よど)みなく語った。

3人目は元日本兵という90代の松本氏だった。「私の隊には6人の慰安婦がおりました。私は衛生兵として月に一度は性病チェックをしました。慰安婦を否定する人がいますが、単なる嘘(うそ)つきです。私はこの目でちゃんと見てきたのですから」。松本氏は90代とは思えないほどの力強さと鋭い眼光で、やはり慣れているのか口滑らかに語った。

番組は特派員自らの語りで終わった。「この老日本兵の証言にもかかわらず、日本では慰安婦を否定する人々が勢いを増してきました。そのような人々の一人は現在、首相の地位にまで上りつめています」。記憶をたどると大体こんな内容だった。この番組は翌日も再放送されていた。

私が驚いたのは無論締めくくりの言葉だった。安倍首相はもちろん、広く日本中に、慰安婦を否定する人を私は1人も知らないからだ。慰安婦は戦時下、兵士による強姦(ごうかん)を防ぐため多くの国の軍隊に付随していたもので、軍による強制連行があったかどうかで国家犯罪か単なる娼婦かに分れる。

1980年前後に元日本兵の吉田清治氏が、軍の命令で自身が済州島で女性を強制連行し慰安婦にしたと何冊かの著書に書き、この吉田証言を1983年以降、朝日新聞がくり返し取り上げたことで初めて国際問題となったのである。本人が創作と認めた後も朝日新聞は史実として扱っていたが、ようやく2014年になって吉田証言は虚偽と認めた。強制連行があったという最大の「証拠」が消えてしまったのである。

BBCワールドが世界で最も信頼されるテレビニュースの1つだけに衝撃だった。こんな番組を見た世界の人々は、安倍首相をはじめ大多数の日本人は大嘘つきで狂信的な歴史観に捉(とら)われていると見るだろう。日本の発言は全(すべ)て説得力を失うことになりかねない。外務省が抗議すべきだろう。

こんな番組が原爆記念日頃に繰り返し世界に流されていたことに、意図を感じてしまう。「軍国主義日本を凶暴残忍なアジアへの侵略者と決めつけたい。そうすることで無慈悲な原爆投下を正当化し、白人による3世紀にも及ぶアジア植民地化を免罪したい」という意図だ。

アメリカ製の極めて一方的な東京裁判史観が、今や世界の常識になっていることを痛感させられる。我が国は正しいと信ずる歴史観を、世界中からの逆風にひるまず堂々と冷静に述べる必要がある。
(2015年9月19日号)
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