電脳筆写『 心超臨界 』

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この世で恥ずべきものはない
( ゲーテ )

日本史 鎌倉編 《 フィギャア・ヘッドとしての「皇室」――渡部昇一 》

2024-07-13 | 04-歴史・文化・社会
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フィギャア・ヘッドがフィギャア・ヘッドであることを止(や)め、実力も持とうとする努力の典型的な例が、北条氏の執権政治をひっくり返した「建武の中興」(建武元年=1334)である。「承久(じょうきゅう)の変」のときの後鳥羽上皇は北条氏を斥(しりぞ)けることに失敗して、執権政治を確立させてしまったが、それから十四代目の後醍醐天皇は成功なさったわけである。「天皇御親政(ごしんせい)」というスローガンは、フィギャア・ヘッドを執権にしようということに、ほかならない。


『日本史から見た日本人 鎌倉編』
( 渡部昇一、祥伝社 (2000/02)、p34 )
1章 鎌倉幕府――近代国家意識の誕生 = 元寇が促した「一所懸命」からの脱却
(1) 「善政」は万能ならず――北条一門の破滅

◆フィギャア・ヘッドとしての「皇室」

政治のうえで、単なる飾りにすぎないような高位の職をフィギャア・ヘッド(figure-head)と言う。元来は船首につけた飾りの彫刻像のことである。外国にもフィギャア・ヘッドがあるが、北条時代のように、政治の上部構造がすっかりフィギャア・ヘッドになっているのは珍しかろう。

つまり日本には東西に比類を見ないキング・メーカーと、フィギャア・ヘッドの構造があるのだ。宮廷対幕府で、宮廷がフィギャア・ヘッドで、幕府が実力者というのみならず、幕府自体の中でも、将軍が完全なフィギャア・ヘッドになってしまうという特異な現象があるのだ。この現象は、日本史には絶えず繰り返して現われてくる。

フィギャア・ヘッドがフィギャア・ヘッドであることを止(や)め、実力を持とうとする努力の典型的な例が、北条氏の執権政治をひっくり返した「建武の中興」(建武元年=1334)である。「承久(じょうきゅう)の変」のときの後鳥羽上皇は北条氏を斥(しりぞ)けることに失敗して、執権政治を確立させてしまったが、それから十四代目の後醍醐天皇は成功なさったわけである。「天皇御親政(ごしんせい)」というスローガンは、フィギャア・ヘッドを執権にしようということに、ほかならない。

日本の場合は、フィギャア・ヘッドにちゃんとした系統がある。つまり皇室であるが、これはその淵源を神話時代に持つフィギャア・ヘッドである。その存在は、つねに国民によって意識されているから、現在の政権、つまり執権に不満な人が利用するのには都合がよかった。

革命には「正義」の旗印が必要であるが、「フィギャア・ヘッドに政権を」というのは、「正統論」として、つまり「正義」として作用する。北条氏の政権に不満を抱くようになった武士たちは、フィギャア・ヘッドの呼びかけに応じて執権政治を倒したのである。また幕末の志士たちのスローガンも、「将軍の世を、フィギャア・ヘッドの世にしよう」というのであった。別の言葉で言えば、「尊皇」であり、王政復古である。

面白いことには、戦前の極右の青年将校たちも同じようなことを言っていた。彼らは昭和維新というようなことをスローガンにしていたのだが、別の言葉で言えば、明治憲法による立憲君主制の下に発達してきた社会の上層部が、彼らの目には新しい幕府に見えてきたということである。

数年前に流行した言葉で言えば、エスタブリッシュメントが出来るということは、日本人にとっては幕府に類比されやすい、ということである。
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