23.06.26
23.06.26
23.06.27
帝人の栗原英資さんは、使用済みのペットボトルを新品同様のペットボトルにリサイクルする技術を開発しました。帝人ファイバー徳山事業所内には、開発した技術を適用し、年間約20億本に相当する約6万2千㌧の使用済みボトルを処理できるプラントが設置されています。しかし、現在は使用済みボトルが高値で中国に輸出されていて調達が難しいため、プラントは休止のままだそうです。
理由は、ペットボトルのリサイクルに必要なエネルギーの石油換算量が、石油から直接ペットを生産する場合の石油消費量の3倍となるからです。他の家電や建設資材、食品などのリサイクルもみな同様に資源のムダを生む構造があります。
名古屋大学の武田邦彦教授は、ゴミ減量や資源節約には、耐久性が高く長持ちする商品を開発し、利用者がモノを大切にできるだけ長く使うことの方が、よほど重要で効果的だ、とやみくもなリサイクル推進を批判します。
◆やみくもなリサイクル推進を批判する――武田邦彦
「リサイクル資源のムダ――物持ちのよさこそ重要」
名古屋大学 武田邦彦 教授
( 2006.01.16 日経新聞(朝刊)「常識を疑う②」)
リサイクル活動の目的は、ゴミの排出量を減らし資源を有効利用することだ。しかし、逆に資源のムダ遣いを招いているとしたら――。リサイクルをやみくもに推進することに批判的でモノを大切に長く使うことを訴える武田邦彦名古屋大学教授に聞いた。
――大量生産・消費・廃棄型社会を変えるのにリサイクルは有効では。
「現実にゴミの減量につながっていない。例えば、容器包装リサイクル法に基づくペットボトルの回収は1997年以前はゼロで、生産量は20万㌧程度だった。それが2003年度には21万㌧回収したが、生産量も44万㌧に増えており、ゴミは減っていない」
――回収しないとゴミは一層増えたのでは。
「減量対策なら、燃えるゴミと一緒に集めて焼いて発電したり、排熱を利用したりする方が合理的だ。リサイクルに要する費用が事業者で年間4百億円以上、地方自治体は多めに見積もって3千億円に上る。費用対効果の面で大きな問題だ」
――しかし、資源節約の意味はあるのでは。
「リサイクルによって資源を無駄にしていることが多い。ペットボトルの場合は分別や運搬、再生品として加工するために必要なエネルギーは石油換算で年間約160万㌧。これだけの石油を原材料に使えば、再生するよりも約3倍のペットが生産できる。つまり同じ量のペットを作るのに石油を3倍使っている」
――他の分野のリサイクルはどうか。
「国が進めている家電や建設資材、食品などのリサイクルにも同様の構造がある。家電のリサイクルでは利用者が1台3千円程度負担しているが、ゴミとして処理すれば約5百円で済む。家電を解体、再利用できるものを分別する費用が発生するからだ。これはリサイクルに必要な資源を購入するのに充てられていることを意味している」
「資源が有効利用されれば、ゴミ処理に必要な費用負担が軽くなり、利用者にメリットがあるはず。しかし、そんな話は聞いたことがない」
「リサイクル後の用途にも問題がある。建設廃材の使用済みコンクリートを路盤材に使えば約6年で日本中の平野はすべて舗装されてしまう。その後は何に使うのか」
――リサイクルの利点はないのか。
「民間事業者が行っている鉄スクラップや古紙の回収には意味がある。リサイクルのため投入する資源が少なく、コストが抑えられるから経済的にも成り立っているわけだ」
「いつまでもボランティア活動や行政の補助金がないと成立しないようなリサイクルは、環境の保全、資源の節約につながらない。ゴミ減量や資源節約には、耐久性が高く長持ちする商品を開発し、利用者がモノを大切にできるだけ長く使うことの方が、よほど重要で効果的だ」
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帝人の栗原英資さんは、使用済みのペットボトルを新品同様のペットボトルにリサイクルする技術を開発しました。帝人ファイバー徳山事業所内には、開発した技術を適用し、年間約20億本に相当する約6万2千㌧の使用済みボトルを処理できるプラントが設置されています。しかし、現在は使用済みボトルが高値で中国に輸出されていて調達が難しいため、プラントは休止のままだそうです。
理由は、ペットボトルのリサイクルに必要なエネルギーの石油換算量が、石油から直接ペットを生産する場合の石油消費量の3倍となるからです。他の家電や建設資材、食品などのリサイクルもみな同様に資源のムダを生む構造があります。
名古屋大学の武田邦彦教授は、ゴミ減量や資源節約には、耐久性が高く長持ちする商品を開発し、利用者がモノを大切にできるだけ長く使うことの方が、よほど重要で効果的だ、とやみくもなリサイクル推進を批判します。
◆やみくもなリサイクル推進を批判する――武田邦彦
「リサイクル資源のムダ――物持ちのよさこそ重要」
名古屋大学 武田邦彦 教授
( 2006.01.16 日経新聞(朝刊)「常識を疑う②」)
リサイクル活動の目的は、ゴミの排出量を減らし資源を有効利用することだ。しかし、逆に資源のムダ遣いを招いているとしたら――。リサイクルをやみくもに推進することに批判的でモノを大切に長く使うことを訴える武田邦彦名古屋大学教授に聞いた。
――大量生産・消費・廃棄型社会を変えるのにリサイクルは有効では。
「現実にゴミの減量につながっていない。例えば、容器包装リサイクル法に基づくペットボトルの回収は1997年以前はゼロで、生産量は20万㌧程度だった。それが2003年度には21万㌧回収したが、生産量も44万㌧に増えており、ゴミは減っていない」
――回収しないとゴミは一層増えたのでは。
「減量対策なら、燃えるゴミと一緒に集めて焼いて発電したり、排熱を利用したりする方が合理的だ。リサイクルに要する費用が事業者で年間4百億円以上、地方自治体は多めに見積もって3千億円に上る。費用対効果の面で大きな問題だ」
――しかし、資源節約の意味はあるのでは。
「リサイクルによって資源を無駄にしていることが多い。ペットボトルの場合は分別や運搬、再生品として加工するために必要なエネルギーは石油換算で年間約160万㌧。これだけの石油を原材料に使えば、再生するよりも約3倍のペットが生産できる。つまり同じ量のペットを作るのに石油を3倍使っている」
――他の分野のリサイクルはどうか。
「国が進めている家電や建設資材、食品などのリサイクルにも同様の構造がある。家電のリサイクルでは利用者が1台3千円程度負担しているが、ゴミとして処理すれば約5百円で済む。家電を解体、再利用できるものを分別する費用が発生するからだ。これはリサイクルに必要な資源を購入するのに充てられていることを意味している」
「資源が有効利用されれば、ゴミ処理に必要な費用負担が軽くなり、利用者にメリットがあるはず。しかし、そんな話は聞いたことがない」
「リサイクル後の用途にも問題がある。建設廃材の使用済みコンクリートを路盤材に使えば約6年で日本中の平野はすべて舗装されてしまう。その後は何に使うのか」
――リサイクルの利点はないのか。
「民間事業者が行っている鉄スクラップや古紙の回収には意味がある。リサイクルのため投入する資源が少なく、コストが抑えられるから経済的にも成り立っているわけだ」
「いつまでもボランティア活動や行政の補助金がないと成立しないようなリサイクルは、環境の保全、資源の節約につながらない。ゴミ減量や資源節約には、耐久性が高く長持ちする商品を開発し、利用者がモノを大切にできるだけ長く使うことの方が、よほど重要で効果的だ」