電脳筆写『 心超臨界 』

絵画は黙したままの詩であり
詩は語りかけてくる絵画である
( プルタルコス )

人体の部分がつねに黄金比を示す

2004-12-28 | 700-生物・生命・自然
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「ダ・ヴィンチ・コード 上」ダン・ブラウン、角川書店、p128
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突然、ハーヴァードの授業の記憶がよみがえった。“美術における象徴”という授業で、壇上に立って自分の大好きな数字を黒板に書いているところだ。

1.618

ラングドンは振り返って、教室を埋めつくす熱心な学生たちへ顔を向けた。「だれかこの数について説明できるか?」
後方の席にいる脚の長い数学専攻の学生が手をあげた。「PHI。黄金比です」

(中略)

スライド映写の準備を進めながら、ラングドンは黄金比がフィナボッチ数列から導きだされることを説明した。その数列は、隣り合うふたつの項の値に等しいことで名高いが、隣り合うふたつの項の比がある数に近づいていくという性質も持っている。その数こそ黄金比すなわち約1.618だ。

その摩訶不思議な性質についての数学的な解明はさておき、真に驚嘆すべきは、黄金比が自然界の事実の基本的な構成に深くかかわっていることだと、ラングドンは説いた。植物や動物、そして人間についてさえも、さまざまなものの比率が不気味なほどの正確さで1.618対1に迫っている。

「黄金比は自然界のいたるところに見られる」ラングドンはそう言って照明を落とした。「偶然の域を超えているのは明らかで、だから古代人はこの値が万物の創造主によって定められたにちがいないと考えた。古(いにしえ)の科学者はこれを“神聖比率”と呼んで崇(あが)めたものだ」

「待ってください」最前列の席にいる女子学生が言った。「わたしは生物学専攻ですけど、自然界でその神聖比率とやらに出会ったことがありません」
「そうかい」ラングドンはにっこり笑った。「ミツバチの群れにおける雄と雌の個体数の関係について学んだことは?」
「ありますよ。雌の数はつねに雄を上まわります」
「正解。では、世界じゅうどのミツバチの巣を調べても、雌の数を雄の数で割ると同じ値が得られることは知っているかい」
「えっ?」
「そう、黄金比になるんだ」
女子学生は口を大きくあけた。「信じられない!」

「ほんとうなんだよ」ラングドンはことばを投げ返し、微笑みながら巻き貝の殻のスライドを映写した。「これがなんだかわかるね」
「オウムガイです」生物学専攻の女子学生は答えた。「軟体動物の頭足類で、殻のなかの隔室へ気体を送りこんで浮力を調節します」
「そのとおり。どこであれ、この螺旋(らせん)形の直径は、それより90度内側の直径の何倍になるか想像できるかい」
女子学生は不安げな表情で渦巻く殻のカーブを見つめた。
ラングドンはうなずいた。「黄金比だ。神聖比率。1.618対1」
女子学生は目をまるくした。

ラングドンはつぎのスライドへ移った。ヒマワリの頭花を拡大した映像だ。「ここでは逆方向の螺旋がいくつも渦巻いて並んでいる。それぞれの渦巻きを、同様に90度内側と比較したときの直径の比率は?」
「黄金比?」全員が口をそろえた。

「ビンゴだ」それからラングドンはつぎつぎスライドを入れ替えた。渦状に並んだ松かさの鱗片(りんぺん)、植物の茎に葉がつく配列、昆虫の体の分節――すべてが驚くほど忠実に黄金比を示していた。

「こいつはびっくりだ!」だれかが叫んだ。
「なるほど」ほかの学生が言った。「でも、これが芸術とどんな関係があるんですか」
「そう!」ラングドンは言った。「いい質問だ」スライドをもう一枚映す。黄ばんだ羊皮紙に、レオナルド・ダ・ヴィンチによる名高い男性裸体画が描かれている。〈ウィトルウィウス的人体図〉。題名のもとになった古代ローマの著名な建築家マルクス・ウィトルウィウスは、その著書『建築論』のなかで神聖比率を賛美している。
「ダ・ヴィンチは人体の神聖な構造をだれよりもよく理解していた。実際に死体を掘り出して、骨格を正確に計測したこともある。人体を形作るさまざまな部分の関係がつねに黄金比を示すことを、はじめて実証した人間なんだよ」
教室内の全員が半信半疑の面持ちを見せた。

「信じられないとでも?」ラングドンは強い口調で言った。「こんどシャワーを浴びるときは、巻き尺を持っていくといい」
数人のフットボール選手が笑いを噛み殺した。
「肉体派の諸君だけじゃなくて」ラングドンはつづけた。「きみたち全員がだよ。男も女もやってみるんだ。まず頭のてっぺんから床までの長さを測る。つぎにそれを、へそから床までの長さで割る。答えはなんだと思う?」

「黄金比のはずがない!」フットボール選手のひとりが思わず叫んだ。
「いや、黄金比だ」ラングドンは答えた。「1.618。ほかにも例をあげようか。肩から指先までの長さを測り、それを肘(ひじ)から指先までの長さで割る。黄金比だ。腰から床までの長さを、膝から床までの長さで割る。これも黄金比。手の指、足の指、背骨の区切れ目。黄金比、黄金比、黄金比。きみたちひとりひとりが神聖比率の申し子なんだよ」
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