電脳筆写『 心超臨界 』

誠実な心が誠実な行動を生む
( ブリガム・ヤング )

ビスマルクはクラウゼヴィッツの知恵を政治的によく理解したといえよう――山内昌之

2024-05-22 | 04-歴史・文化・社会
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■超拡散『世界政治の崩壊過程に蘇れ日本政治の根幹とは』
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歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」――東京大学教授・山内昌之

  [1] 平和のリーダーシップ
  [2] 古代ギリシャの予言
  [3] ローマ人の勇気と臆病
  [4] 政略に敗れた義経
  [5] 裏切られたサラディン
  [6] リンカーンの決断
  [7] 『戦争論』とビスマルク
  [8] 石原の東亜連盟構想
  [9] 毛沢東の凄み
  [10] 過去は知の宝庫


政治と軍事の摩擦を政治でなく軍事に従わせるウィルヘルム2世が即位すると、ビスマルクは失脚した。戦争中の政治家は口をつぐむべきだという考えは、ビスマルクの戦略的思考とは無縁であった。ドイツ参謀本部などは、『戦争論』を抽象的すぎて読むに値しないとしりぞけた。しかし、戦略的思考への侮べつ的態度は、2度の大戦でドイツに破滅をもたらす大きな要因となったのである。


◆歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」――[7] 『戦争論』とビスマルク
([やさしい経済学 10.01.12日経新聞(朝刊))

ドイツ語に堪能な森鴎外は、小倉の第12師団軍医部長だった折に、同僚将校のためにクラウゼヴィッツ『戦争論』の読書会を主宰した。フランス革命戦争に立ち向かったプロイセン軍人の書物はまず難解といってもよい。普仏戦争でドイツ統一を達成した宰相ビスマルクは、それを「一度も読んだことのない恥」を公言したことがある。NHKドラマ『坂の上の雲』にも出てきたドイツ人メッケルが教えた陸軍大学校の秀才たちでも、理解できたのは第1期首席の東条英数(中将、東条英機首相の父)だけだったらしい。

『戦争論』は軍国主義を賛美した本ではない。むしろ、戦争はあくまでも政治の目標設定に従うべきだと説いた。クラウゼヴィッツは、国際環境を支配する闘争状態を三つに分けて考察している。①戦争は自然の本能ともいうべき憎悪と敵意を伴う「原始的な強力行為」である。②戦争は確実性と偶然が絡み合った「ばくち」である。③戦争は政治の道具としての従属的な性質を帯びることで「もっぱら打算を事とする知力の仕事」にもなる。

こうした議論は、職業軍人よりも聡明(そうめい)な政治家に受け入れられた。ビスマルクは普仏戦争をドイツ統一に利用する政治目的に限定し、この目標を達成して戦争を終える上で鮮やかなリーダーシップを発揮した。彼と組んだ参謀総長のモルトケは寛容で教養も豊かな軍人であったが、ひとたび戦争が起これば政治家は戦場で決着がつくまで戦争から手を引くべきだと信じた。もしビスマルクがいなければ、大モルトケは普墺戦争や普仏戦争で「城下の盟」をもとめたかもしれない。そうなればドイツは欧州世論の非難にさらされ、中欧で孤立していただろう。

現実には反対に、ビスマルクは欧州5大国の勢力均衡を求めることで満足した。彼は偶然性が大きな役割を果たす歴史の要因を考慮に入れた戦略的思考にすぐれ、「戦術上の勝利を得れば戦略はそれに続く」と語った大モルトケ以上にクラウゼヴィッツの知恵を政治的によく理解したといえよう。

政治と軍事の摩擦を政治でなく軍事に従わせるウィルヘルム2世が即位すると、ビスマルクは失脚した。戦争中の政治家は口をつぐむべきだという考えは、ビスマルクの戦略的思考とは無縁であった。ドイツ参謀本部などは、『戦争論』を抽象的すぎて読むに値しないとしりぞけた。しかし、戦略的思考への侮べつ的態度は、2度の大戦でドイツに破滅をもたらす大きな要因となったのである。
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