電脳筆写『 心超臨界 』

計画に失敗すれば、失敗を計画したことになる
( アラン・ラケイン )

そういうふたつのモデルがあるんだけれど、いまの時代は両方要るんじゃないかと――河合隼雄さん

2010-10-28 | 08-経済・企業・リーダーシップ
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『こころと脳の対話』
【 河合隼雄 & 茂木健一郎、潮出版社、p40 】

《「中心統合」の欧米、「中空均衡」の日本 》

【河合】 それがね、一神教的モデルでいくと、やっぱりセンターがほしいんですよ。僕はそうじゃなくて、統合的ではなくて、バランスというかね、そういう考え方のほうが僕は好きなんですよ。

僕は日本の神話をモデルに考えてましてね。日本の神話の場合は、簡単にいうてしまうと、三つの神さまがいるなかで、ふたつの神様はものすごい葛藤とか対立があるんですよ。

で、三つ目の真ん中の神様が大事なんやけど、真ん中は何もしないんですね。たとえば天照大神(あまてらすおおみかみ)と須佐之男命(すさのおのみこと)が対立する神で、月読尊(つくよみのみこと)が真ん中の神であって、無為なんですね。

そういうのをずっと調べていって、僕は「中空均衡構造」という呼び方にしたんです。真ん中はプリンシプル(原理)もパワーももってないんですよ。だから、全体がバランスをとれるんだと。

「中空均衡構造」に対して、すごくわかりやすいのが「中心統合構造」。これは、センターが全部統合していると。これは中心がプリンシプルとパワーをもっているわけです。

日本のモデルは「中空均衡」。あちらのモデルは「中心統合」。いちばんよくわかるのは、日本の場合は、リーダーがだいたいなにもせずに、みなさんのお伺いでやるでしょう(笑)。向こうは本当にリーダーになるわけですよ。リードしていくわけですね。

そういうふたつのモデルがあるんだけれど、いまの時代は両方要るんじゃないかと。僕は自分の生き方を見てても、すごく「中心統合」でバンバンやっているときと、まったく「中空均衡」になってなにもしないときと、両方分けているわけですよ。

おそらく21世紀というのは、そういうひとつのモデルとか、ひとつのイデオロギーとかで統合的にいく時代が終わって、むしろ、矛盾しているものをもっているというのが生命体の特徴だと。だから「矛盾を抱えながらいかに生きるか」ということが、21世紀の根本ではないかと自分はおもっている。という話をよくするんですよ。

これを聞いて感心するだけの人もいるけど、さすがアメリカ人には、こう僕にいう人がいるんですよ。

「そうするとお前は、時によって中心統合し、時によって中空均衡でやっているのか」というから、「そうや」というたら、「それなら、お前、それは中心統合や」いうんですよ。(笑)

【茂木】 なるほど。

【河合】 「統合か中空かを決定しているものがあるかぎり、中心統合構造や」というから、「そんなふうに考えるのがあなた方の特徴や」と。みんなの顔見とったら、フワーッと決まるときもあると。(笑)

これは自分ではなくみんなが決めているんだと考えると、中空均衡でしょう。でもみんなの顔を見ているときに、「やっぱり中心統合でいこうか」となったりね(笑)。そうなると根本的には中空均衡といえるかもわからない。僕は決定なんかしてないよ、と。

【茂木】 それは文化庁長官としての発言ですか。

【河合】 そうそう(笑)。文化庁長官として、このごろあまりなにもしてないよ、と。

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