ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

名曲がいざなうもの

2020年12月15日 | 随筆
 コロナ感染者数のニュースに、心が痛むこの頃です。年末の心ぜわしさもあって、心なしか疲れを覚えます。
 こんな時はクラシックが心を癒やしてくれますから、お気に入りのCDを出してきて聴いています。フォーレの「夢のあとに」を聴いていて気づいたのですが、これは、『北の国から』と云う倉本聰のドラマで、蛍(*主役の純の妹)が不倫関係になった医師の待つ落石(オチイシ)に向かう車内で、運転している兄に「お兄ちゃん、聴いていい?」と断ってかけた曲でした。座席に深々と身を沈めた蛍に、フォーレの曲が穏やかに優しく届きます。聴いている私まで、蛍の切ない心が伝わって来る様でした。
 フォーレの曲は、様々なCDに入っていますから、聴いた覚えはあったのですが、何という曲かその時は思い出せず、この場面の雰囲気にうってつけの選曲でしたから、曲名を是非知りたいと思いました。思い切ってフジテレビへ電話してしまいました。思い立つと行動に移すことは素早い方ですが、この場合は何も知らないことに何となく気が引ける電話でした。
 落ちついてしっかりした男性の声で「あれはフォーレの夢のあとに、と云う曲で○○と云う会社と△△と云う会社からCDが出ています」と親切に教えて頂きました。「待っていました」と云わんばかりのよどみない答えに驚きました。沢山の方が見て居られて、局の対応も素早いのだと、その時改めて大変な人気のテレビドラマであることを認識したのでした。
 最近になって私達は、何回目かのこのドラマの「’98時代」を近くのレンタルビデオ屋から借りてきて見ました。北の国からの音楽担当は「さだまさし」です。メインテーマの曲「北の国から」もそうですが、改めて聞くと、この「夢のあとに」は、同じ巻の其処ここにさりげなく入っていていて、蛍の心を表現する場面で背景に流れています。
 このドラマには何とも言えない温かみがあって、感動深い優れたドラマです。日本の長編のテレビドラマに、これほど何時も温かく深い感動を覚えるドラマがあっただろうか、と振り返っています。CDの棚の「北の国から」のOriginal Score Verasionに組まれている15曲を聴きながら、心に満ちて来る当時の様々な場面を思い出しています。五郎・純・蛍・れい・シュウなどのテーマ音楽から立ち上がる、出演者の笑顔やしぐさが、じんわりと私の心を満たします。
 出演者が登場する度に、バックに静かに流れてくる音楽によって、見て居る人は直ぐにドラマの雰囲気に馴染みます。音楽がこのように人々の心を穏やかに支配していく幸せを思うと、年末の忙しさもさして苦にはならない気がして来ます。自分勝手ですが、今年も穏やかに暮れて行く幸せ感に満たされて感謝しています。
 この一年は、思いがけなくコロナ渦という不幸に襲われて、大変な苦渋の年になりました。人類はこんなに弱かったのか、なにもかも征服して地球上の王者になった様にも思えたのですが、肉眼では見えないウィルスに叩きのめされたようで、改めて人間とは弱い存在だと知らされました。
 
 謙虚な心に入れ替えて、令和3年を生きて行きたいと願っています。