(中国コロナ切手 修正前(上)と修正後の記念切手のデザイン。「黄鶴楼」(上修正前の右下)はごく薄くなっている)
【「多数の証拠がある」けど「確信はない」】
アメリカ・トランプ政権が、新型コロナについて中国科学院武漢ウイルス研究所から発生した、そしてそれを中国が隠蔽しようとしてコロナに関する公表が遅れたことで感染が世界中に広がった・・・と、中国を厳しく批判していることは周知のところです。(下記記事タイトルは“武漢起源説”となっていますが、正確には“武漢ウイルス研究所起源説”です)
****新型コロナ ポンペオ米国務長官、武漢起源説に「多数の証拠」****
ポンペオ米国務長官は3日、ABCテレビの報道番組に出演し、新型コロナウイルスの起源について、ウイルス感染が最初に確認された中国湖北省武漢市にある中国科学院武漢ウイルス研究所から発生したことを示す「多数の証拠がある」と述べた。
トランプ大統領は4月30日、ウイルスが研究所から流出したとの「確信を深めている」と語っていた。
ポンペオ氏は「(トランプ政権は)ウイルスの起源が武漢市であると最初から指摘していた」とし、「全世界も今やそれが事実であることを理解できたことだろう」と強調した。同氏は一方で、研究所が起源だと断定するための検証作業を進めているとした。
ポンペオ氏はまた、ウイルスが人工的に作られたものではないとする米情報機関の分析を支持する立場を明らかにした。【5月3日 産経】
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別に、生物兵器としてつくられたとまでは言っていませんが、何らかのミスで研究所から漏れ出したとトランプ政権は主張しています。
****トランプ米大統領「中国は間違いを犯し、隠した」=新型コロナの起源と主張****
トランプ米大統領は3日、FOXニュースの番組に出演し、新型コロナウイルスの発生源を中国湖北省武漢市のウイルス研究所とする説をめぐり「中国は恐ろしい間違いを犯し、それを隠そうとした」と主張した。
トランプ氏は4月30日、武漢市のウイルス研究所が新型ウイルスの発生源とする証拠を「見た」と主張。この日は、詳細は明らかにしなかったものの「実際に何が起きたかに関する非常に強力な報告を行う」と語った。
一方、米情報機関が1月23日の段階で、新型コロナウイルスを「大きな問題」とみなしていなかったとも指摘。トランプ氏が同月末に中国からの渡航禁止を決定したのは、情報機関の意見によるものではなく、自分自身の判断であり「数十万人の命を救った」と自賛した。【5月4日 時事】
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中国のミス・隠ぺいで感染が世界に拡散し、トランプ大統領の英断で数十万人が救われた・・・・随分トランプ大統領に都合のいい話です。
アメリカの「証拠がある」云々は、イラクでも、イランでも、毎回聞かされる話ですが、実際のところは・・・
少なくともイラクの「大量破壊兵器」云々では大ウソ(あるいは大間違い)だったことが明らかになっています。
今回の件は・・・ここにきて少しトーンダウンしてきたようにも。
****コロナ発生源、武漢研究所の「確信ない」 ポンペオ米国務長官****
ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は6日、新型コロナウイルスが中国・武漢の研究所で発生したとの説について「確信はない」と述べた。ポンペオ氏は先の週末、新型コロナウイルスが同研究所で発生した「大量の証拠」があると主張していた。
ポンペオ氏は国務省での記者会見で、「確信はない」と言及。その一方で「研究所から流出したという証拠が大量にある」と改めて主張し、「どちらの説明も真実でありうる。私も政権当局者も両方の説明をしてきた。すべて真実だ」と述べた。
諜報(ちょうほう)の専門家や国際アナリストの間では、新型コロナウイルスが海鮮市場で人間に接触したとの説が有力視されている。米同盟国間の情報共有の枠組み「ファイブアイズ」でも、研究所で発生した「可能性は極めて低い」との見解が広がった。
米情報機関は、海鮮市場説と研究所説の両方について可能性を調査中だとしている。(中略)
ポンペオ氏はこのところ、中国の新型コロナ対応に対する激しい批判を繰り返してきた。米国では感染による死者が7万1000人を超えたほか、数カ月後に大統領選を控える重要な時期に経済も停滞しており、トランプ政権には自らの対応への批判の矛先をそらす狙いがある。【5月7日 CNN】
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「大量の証拠」はあるけど「確信はない」・・・・普通、そういうときは「証拠」とは言いませんけどね。
今のところ、世間一般の見方は、「米国では感染による死者が7万1000人を超えたほか、数カ月後に大統領選を控える重要な時期に経済も停滞しており、トランプ政権には自らの対応への批判の矛先をそらす狙いがある」というものです。
中国側の反応は“「狂気の沙汰」、中国がポンペオ氏の発言非難 コロナの研究所発生説めぐり”【5月4日 AFP】ということで、内容を敢えて紹介するまでもないでしょう。
【「独立した調査が必要だ」とする豪 中国は経済的報復をほのめかし威圧】
【5月7日 CNN】にあるファイブアイズとは、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの情報機関が密接に連携する多国間協定の枠組み。記事にもあるように、新型コロナウイルスの起源は中国・武漢の研究所だとするトランプ米大統領らの主張について、「可能性は極めて低い」との見解を示しています。
微妙な立場に立たされているのがオーストラリア。
コロナ以前から、オーストラリアは政治的なアメリカとの同盟の一方で、経済的には中国に大きく依存しており、米中の対立で難しい立場にあることは再三取り上げてきました。
コロナに関しては、爆発的感染が中国から世界へ広がった経緯について、「独立した調査が必要だ」と首相が発言していることで、中国側の不興を買っています。不興というより、経済的報復措置をほのめかして威圧もしています。
****豪「感染源の調査が必要」、中国「豪の行動に失望」…対立先鋭化****
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、オーストラリアと中国の対立が先鋭化している。スコット・モリソン豪首相が、感染源などの調査が必要との考えを示したのに対し、中国が強く反発している。
モリソン氏は先週、コロナウイルスの爆発的感染が中国から世界へ広がった経緯について、「独立した調査が必要だ」と述べた。
これに対し、駐豪中国大使の成競業氏は、豪州メディアのインタビューに「国民はオーストラリアの行動にいら立ち、失望している」と語った。さらに、事態が悪化すれば中国で豪州産ワインや牛肉の消費が落ち込み、豪州への旅行客や留学生が減るかもしれないと警告した。
豪州にとって、中国は輸出額の約3割を占める最大の貿易相手だ。成氏の発言は、経済的報復措置をほのめかしたものとみられる。
豪ABC放送によると、サイモン・バーミンガム豪貿易相は28日、「重要な保健分野の政策が、経済的な脅しで変えられることはない」と不快感を示した。【4月28日 読売】
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中国はオーストラリアの対応が腹に据えかねているようで、中国紙・環球時報の胡錫進(フー・シージン)編集長は「(オーストラリアは)中国の靴の裏にくっついたガムに少し似ていると思う」と発言して論議をよんでいます。
****豪州は中国の靴の裏にくっついたガム―中国紙編集長****
中国紙・環球時報の胡錫進(フー・シージン)編集長は29日、オーストラリアに対する批判的な発言をしたことについて「後悔していない」との見解を示した。
胡氏は27日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で、「オーストラリア政府は最近、米国に追従して中国への非難が行き過ぎている」と批判。「オーストラリアはいつも同じこと(中国に対する非難)をしている。中国の靴の裏にくっついたガムに少し似ていると思う。時にはこすり落とすための石を探さなければならない」と述べた。
また、読者に対し、「米中関係が大幅に悪化すれば、オーストラリアと中国の関係は同じ程度悪くなるだろう。オーストラリアの米国への協力の度合いは英国のそれよりもはるかに大きい。新型コロナウイルスの流行の終息後、オーストラリアとビジネスをしたり、子どもをそこに留学させたりすることについては、より強くリスクを意識しなければならない」と注意喚起した。
そして29日、同氏は再び微博でコメントを投稿。「同僚から、私が2日前に微博で言った、オーストラリアは『中国の靴の裏にくっついたガム』のようだという発言が英字メディア、特にオーストラリアのメディアで話題になっていると聞いた。恐らく私はオーストラリア人を触発し、『彼らの感情を傷つけた』のだろう。
しかし、私はこのように書いたことを後悔していない。この言葉を元のまま繰り返す」とし、「オーストラリアは中国の靴の裏にくっついたガムみたいだ」と改めて述べた。
その上で、「数年前に私が書いた社説でオーストラリアを(『張り子のトラ』と比較して)『張り子のネコ』と表現したこともオーストラリア人をとても不快にさせた。私は、中国はオーストラリアを怒らせたことがなく、これまでずっと友好的に接してきたと言いたい。オーストラリアの方が、最近喜んで米国の手先となり、米国に忠誠を尽くすために、絶えず中国を挑発しているのだ」と批判した。(後略)【5月2日 レコードチャイナ】
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オーストラリアは、別にアメリカのお先棒を担いでいる訳ではないと弁解しているようです。
****新型コロナ、豪政府が米国の武漢研究所発生説に困惑****
複数の関係筋によると、新型コロナウイルスの発生源を調べる「独立調査」を求めているオーストラリア政府が、米国の対応に困惑している。
米政府は新型コロナが中国湖北省武漢市の研究所から発生したと主張。これを受け、中国政府は、オーストラリアが求める独立調査は、中国に責任を押し付ける米国主導の策略の一環だと反発している。
オーストラリアの政府関係者は、先入観を持たない国際的な独立調査を目指していると主張。中国に責任を押し付けようとする米国の姿勢が独立調査の実現を難しくする要因になっているとの認識を示した。
オーストラリアのバーミンガム貿易・観光・投資相は8日、ABCラジオとのインタビューで、独立調査を提案したことで中国との通商関係が悪化するのではないかとの批判に対し「米国の言いなりになって(調査を求めて)いるのではない」と発言。
「オーストラリア政府の一部の主張と米政府の一部の説明には大きな違いがある。オーストラリアは独自の分析、独自の証拠、独自の勧告に基づいて、この問題を世界保健総会に提起する」と述べた。
中国外務省は、独立調査を求める動きを「政治工作」と非難。オーストラリアに対し「イデオロギー的な偏見を捨てる」よう求めている。【5月8日 ロイター】
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【ドイツ 米への追随を拒否】
英語圏のファイブアイズがトランプ米大統領らの主張について、「可能性は極めて低い」と見ているように、ドイツも同様の立場です。
****ドイツ情報機関、新型コロナ「中国研究所発生説」を疑問視=報道****
ドイツ連邦情報局(BND)は、新型コロナウイルスが中国の研究所から発生したとの米政府の主張を疑問視する報告書を作成、感染拡大を防げなかった米政府の対応から国民の関心をそらす意図があったとの結論を出した。独シュピーゲル誌が8日報じた。(後略)【5月8日 ロイター】
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「アメリカには付き合いきれない」というのがドイツの立場。
****ドイツ、トランプ氏の中国懲罰に付き従うことを拒否―中国メディア****
中国メディアの環球網は2日付で配信した記事で、「ドイツの当局者は、トランプ米大統領による中国への懲罰に付き従うことを拒否した」と報じた。
記事によると、米ワシントン・イグザミナーはこのほど、ドイツの当局者が同メディアとのインタビューで「現在の優先事項は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)との闘いだ」「補償の問題は発生しない」と語ったとし、「ドイツは、トランプ大統領がパンデミックをめぐり中国への懲罰を模索する列に加わることを拒否した」と報じた。(後略)【5月4日 レコードチャイナ】
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トランプ大統領の苛立ちが爆発しそうではありますが・・・。
【中国はWHO調査に協力姿勢 中国から世界に拡散したことを薄めようとする対応も】
中国側は、WHOの調査には協力姿勢をみせて、“余裕の対応”も。
****WHOが新型コロナの発生源調査へ、中国は反対しないのか****
2020年5月7日、中国外交部の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は、新型コロナウイルス発生源を調査するためにWHO(世界保健機関)が中国訪問を望んでいることについてコメントした。
華報道官は7日に行われた同部の定例記者会見で、日本メディアの記者から「WHOが新型ウイルス発生源の調査をするために専門家からなる代表団を中国に再派遣しようとしているが、中国政府としてどう考えるか」との質問を受けた。
この質問に対し華報道官は「問題の遡及は科学的な問題であり、科学者や専門家にゆだねて十分な科学的論証の下で判断してもらう必要がある。わが国はWHOと密接かつ良好な意思疎通を保ち続けてきた。引き続きWHOに協力し、ともに新型ウイルスに対処していく」とコメントした。
また、インドメディアの記者から「国連常駐の中国政府関係者や華報道官の態度から、中国としてはWHOの調査に原則として反対していないとの認識でよいのか」と質問されると、「わが国はこれまでWHOの作業に反対すると言ったことはなく、支持し続けている。われわれは引き続きオープンで透明な、責任ある態度にてWHOと協力していく」と述べるとともに、「わが国が反対しているのは、米国など一部の国がウイルスの遡及調査を政治化しようと企てていることだ」と語った。【5月8日 レコードチャイナ】
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ただし、華春瑩報道局長はWHOの調査について「感染終息後の適切な時期」に行うべきだとも述べています。【5月8日 時事より】
それって、いつのことでしょうか?
一方、(研究所起源の話は別にしても)中国は新型コロナが中国から拡散したということについても“薄めよう”としています。
****中国コロナ切手、武漢色薄め発行 起源説警戒か****
中国政府は8日までに、新型コロナウイルス感染症の克服を記念する切手を11日に発行すると発表した。4月の発行を予定していたが、ウイルスの起源が湖北省武漢市であることを想起させるデザインを問題視する声もあり、延期していた。新たな切手は武漢市の名所が目立たないよう薄く修正された。
中国国家郵政局が、感染症対策が大きな成果を収めたとして3月に公開した記念切手には武漢市の名所「黄鶴楼」がはっきり描かれていたが、修正されたデザインではごく薄くなっていた。
中国は、新型コロナの起源が武漢市の研究所の可能性があるとする米側の主張に強く反発している。【5月8日 共同】
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まあ、切手のデザインは中国の勝手ですが、以下のような話も。
****EU、中国政府の検閲受け「中国でコロナ発生」削除に同意****
欧州連合は、EU大使らが中国紙に寄稿した論説記事について、中国政府の検閲を受けて新型コロナウイルスが中国で発生したと言及した箇所を削除することに同意した。EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は7日、この判断を擁護した。
27か国のEU大使が共同執筆した論説は、中国の政府系英字紙チャイナ・デーリーに掲載されたが、「中国で新型コロナウイルス発生」に言及した箇所は削除された。
ボレル氏の報道官は、削除が中国外務省の要請で行われたと認めたが、それにもかかわらず大使らが紙面に掲載すると決定したことを擁護した。
報道官によると、EU当局者は検閲要請に「非常に深刻な懸念」を示したという。
「EU代表団はそれにもかかわらず、EUの政策優先事項に関する非常に重要なメッセージを伝えることが重要であると考え、かなり不本意ながら論説の掲載を進める決定をした」と報道官は述べた。
ボレル氏は記者団に対し、中国において外国の外交使節団は「中国当局が定めた条件と範囲内で活動」しなければならないと説明。また、「中国が現在、メディアに対する検閲と統制を行っている国であることは周知の事実だ」と述べた。
論説記事は、EUと中国との外交関係樹立45周年を記念して発表され、両者の関係の緊密化を呼び掛ける内容だった。
しかし、EUの虚偽情報対策の専門家によると、中国政府は武漢を新型コロナウイルスの発生地と言及する箇所を削除するよう求めてきたという。
EUが中国の検閲に屈する決断をしたことに、欧州政界の一部からは反発の声が上がっている。
EUは2週間前、新型コロナウイルスの虚偽情報に関する報告書を取り下げるよう中国から圧力を受け、それに屈したといううわさの火消しに追われたばかり。
米紙ニューヨーク・タイムズは、EUが先週、中国政府からの圧力を受けて偽情報の動向に関する定期報告書の発表を延期した上、最終版では批判を弱めたと報じている。 【5月8日 AFP】
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中国の検閲、EUの弱腰への批判となるのでしょうが、ただ、論説寄稿とは言っても「外交文書」ですから、双方の立場に関する一定の政治的配慮がなされるのは「ある」ようにも思うのですが・・・。