(5月5日、アーダーンNZ首相は豪州のビデオ会議に参加【5月5日 日経】 アーダーン首相は出産休暇を取ったことでも話題になりました。)
【高い評価のアーダーンNZ首相 「強く、そしてお互いに優しく」】
ニュージーランドおよびアーダーン首相は新型コロナ封じ込めに成功した国・指導者として高く評価されています。
その手法は、一言で言えば厳格なロックダウン(都市封鎖)でした。
****科学と共感力で「成功」NZに注目集まる 各地でロックダウン緩和の動き****
新型コロナウイルスの感染拡大防止策をめぐり、一部の国や地域で緩和の動きが見られる中、感染拡大抑制の成功例としてニュージーランドに、そしてジャシンダ・アーダーン首相のリーダーシップに世界中から注目が集まっている。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は20日、新型コロナウイルスの市中感染を封じ込めるという「ほとんどの国ができなかったことを達成した」と述べ、28日からロックダウン(都市封鎖)の緩和を開始すると発表した。
学校や事業の一部が再開され、移動制限も緩和されるが、アーダーン氏は、時期尚早な緩和開始で、これまでの犠牲を無駄にしてはならないとしている。
ニュージーランド政府の新型ウイルス対応を批判する声も一部にはある。しかし、政府が市民に示してきた共感力や明確で分かりやすい説明、そしてあくまでも科学を重視し信頼するというその姿勢は、模範的な政府対応だったと、BBCのシャイマア・ハリル記者は書く。
一晩で方針転換
今年3月、ニュージーランドはモスク(イスラム教礼拝所)銃撃事件からまもなく1周年を迎えようとしていた。13日に追悼式典が予定される中、世界保健機関(WHO)は同11日、新型ウイルスの感染拡大はパンデミック(世界的大流行)だと宣言した。
BBCのハリル記者は当時、WHOによるパンデミック宣言直後の大規模集会に不安はないのか、アーダーン首相に尋ねた。首相は、既存の科学的助言に基づき、懸念はないと答えていた。
ところが、事態は一夜にして一変した。アーダーン氏は追悼式典を中止しただけでなく、全世界からの入国者に対して、入国後14日間の自主隔離を実施すると発表した。
これは世界的に最も早期で、最も厳格な自主隔離措置の1つだった。そしてここから、1週間後の完全なロックダウンに至った。
「我々は厳しく、そしてこの早い段階から対応する。(中略)国内の感染者数は102人だけだが、イタリアもかつてはそうだった」と、アーダーン氏は当時、市民に語った。
ロックダウン開始から2週間で、ニュージーランドでは新しく確認される感染者の数が着実に減少した。1人の感染者が他の人に移す割合は、1人未満だったと確認されている。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると(日本時間22日午前現在)、人口約490万人のニュージーランドで確認された感染者は1451人、死者は14人となっている。
ニュージーランドの「成功」の鍵は
言うまでもなくニュージーランドは小さい国で、これまでに1万以上が死亡するなど甚大な被害が出たニューヨーク市(人口約840万人)よりも人口が少ない。島国なので国境を封鎖するのも簡単だ。こういった条件がすべて、新型ウイルスの流行発生時に有利に働いた。
しかし、人口比の感染率が特に低い国の1つとなった主な要因は、政府からのメッセージが明確だったと評価されている。
「COVID-19(新型ウイルスによる感染症)との戦争」を宣言した諸外国とは異なり、ニュージーランド政府は何よりも「COVID-19に対して団結」するよう市民に訴えた。アーダーン首相は、ニュージーランドのことを繰り返し「500万人のチーム」と呼んでいる。
新型ウイルス対策についてニュージーランド政府に助言した、オタゴ大学公衆衛生学部のマイケル・ベイカー教授は、「ジャシンダ(アーダーン首相)はリーダーとして、コミュニケーション能力が実に見事で、共感力も優れている」と評価する。
「それに、彼女の発言は理にかなっていたし、理にかなっているという部分を市民は本当に信頼したのだと思う。政府の指示の順守率は高かった」
ベイカー教授は、効果的なパンデミック対応には、「科学と指導力が一体になる必要がある」と指摘する。
科学的知見は、日々の記者会見でアーダーン氏の隣に立っている保健省のアシュリー・ブルームフィールド長官が提供してきた。(中略)
「ブルームフィールド氏は、感染者数の増加について今後の展望を明確に伝えていたので、アーダーン首相がロックダウン開始を宣言した時、市民はその理由を理解していた」
経済より健康を優先
新型ウイルスの最新研究について、政府に助言し定例会見にも参加してきたオークランド大学の准教授、スージー・ワイルズ博士は、アーダーン氏や政府が明確に市民の健康を最優先してきたことが、COVID-19対応の鍵だったと言う。
経済への影響を恐れて行動制限を遅らせたほかの国は現在、はるかに困難な時期に突入している。
ワイルズ氏は、「住民が死んでしまったとか、どんどん死んでしまうのは言うまでもなく、経済にとって打撃のはずだ」と述べた。
「強く、優しく」
アーダーン首相は、ロックダウンの詳細や今後の感染者数の見通しについて市民に伝える際、優しさという面にも焦点を当ててきた。
首相の公の場での発言のほとんどは、同じメッセージで締めくくられている。「強く、そしてお互いに優しく」と。
アーダーン氏はカジュアルな服装で定期的にフェイスブックに登場し、常に笑顔で、私生活の一部を共有している。
一方で、市民からの質問に答える際には、決して事態を過小評価しない。
ニュージーランド国内では、そうしたアーダーン氏の振る舞いや揺るがない姿勢が称賛されている。
「優しいだけでなく、きっぱりと決断する。おかげで私たちは、何をしてよくて、何がだめないのか、はっきり分かる」と、オークランドを拠点に活動する保険監督官のトマス・ウェストン氏はBBCに述べた。
これに対してアーダーン首相は、医療関係者の働きや、市民がロックダウンを支持してくれたことが成功に結びついたと称賛している。「ニュージーランド人は自分たちの力を証明してくれた。最も素晴らしい方法で」
アーダーン氏は最近、ニュージーランド国民への影響を考慮して、自分と閣僚、そして公共サービスの責任者について、今後6カ月間20%減給すると発表した。(後略)【4月22日 BBC】
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ここのところは新規感染者はゼロになったとか。
【オーストラリアとの間で鎖国緩和へ】
その「成功例」ニュージーランドのお隣の大国オーストラリアもほぼコロナ沈静化に成功し、両国は「鎖国」を解いて往来を再開させることで合意しています。
****豪とNZ「鎖国」緩和へ=往来の早期再開で合意****
オーストラリアとニュージーランド(NZ)は5日、首脳同士がテレビ会議システムを通じて協議し、新型コロナウイルスの感染抑止に成功したとして、両国間の往来を早期に再開する方針で一致した。
両国は出入国を原則的に禁止することで鎖国状態となっており、緩和に向けた一歩を踏み出すことになった。
NZは2日連続で新規感染者がゼロで、豪州も感染者の増加が小康状態となっている。感染の深刻な脅威が遠のいた隣国との相互往来を再開することで、新型コロナ対策で打撃を受けた経済のてこ入れなどにつなげたい考えだ。
NZ側の発表によると、NZと豪州は両国間に「安全渡航圏」を設定して渡航に関する制限を緩和。緩和の内容は不明だが、14日間の隔離措置などが不要になるとみられる。
保健、輸送面などでの態勢が整い、ウイルスが拡散しないとの安全性が確認された段階で速やかに実施する。再開の時期には言及していない。【5月5日 時事】
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個人的な話をすれば、1日も早く旅行ができる状況に世界が復旧して欲しい私としては、その第一歩としてオーストラリア・NZ両国が往来を再開するというのはグッドニュースです。
日本もこの先新規感染者が減少すれば、いち早く沈静化している中国との往来が・・・というのは、個人的期待です。
【異なるアプローチの豪・NZ 経済的ダメージはNZが深刻】
それはともかく、「成功例」NZに並ぶほどの成果を示しているオーストラリアがとった手法は、NZとは異なり経済活動はさほど制限せず、ソーシャルディスタンシング(他人との距離確保)を要とするものでした。
異なるアプローチで良好な成果を出したことは興味深いところですが、当然ながら経済に対してはNZの方が深刻なダメージがあります。
****コロナ抑制した豪とNZ、経済的代償が異なる訳****
両国はコロナ対策で異なるアプローチをとった
ニュージーランドは新型コロナウイルス感染拡大を抑え込むため、世界有数の厳しい封鎖措置(ロックダウン)を実施した。オーストラリアは異なるアプローチを取り、ソーシャルディスタンシング(他人との距離確保)の措置をとる一方、経済は比較的オープンな状態を保った。
いずれの戦略も衛生面の効果は同様だったと思われる。新規感染者は著しく減少し、ニュージーランドでは1日平均わずか2人、オーストラリアは1日10人前後に収まっている。
ただ、経済的・社会的なコストはニュージーランドのほうが相当大きくなる見通しだ。各国が制限を課すべきか解除すべきかを思案する中、これらは戦略の違いによる潜在的なトレードオフ(得失評価)を示す例として参考になる。
ニュージーランドのジェシンダ・アーダン首相は3月下旬、劇的な措置を講じなければ数万人が死亡すると国民に警告した。その時点でおよそ100人の感染が確認され、死者はいなかった。
新ルールの下、食品スーパーやドラッグストアを除くほぼ全業種の会社が休業し、家族以外の他者と交流すること(葬儀に参列することも)が制限された。政府対応を数値化したオックスフォード大学の厳格度指数によれば、同国のロックダウンは世界の中で最も厳しい部類に入った。
「もしレベル4の制限を行わなければ、実際にどのような事が起きたかはわからない。だが諸外国を見ると、この破滅的なシナリオが多くの国々で展開されている」。アーダン首相は4月27日、コロナとの「闘いに勝利した」と宣言する中でこう述べた。
一方、オーストラリアは厳格なソーシャルディスタンシング措置を導入。公共の場で集まることができる人数は2人までに制限された。だが多くの企業は営業を続け、資源採掘や建設作業、飲食店の持ち帰り販売などは継続されていた。
ニュージーランドは28日、一部の経済分野で制限の緩和に乗り出した。サービス業のオンライン受注や建設業・林業会社の営業が可能となり、サーフィンや私有地での狩猟など一部のレジャー活動も解禁された。
ニュージーランドの戦略は物議を醸している。オークランド大学のサイモン・ソーンリー講師(疫学)は、ウイルスの完全排除を目指せば必ず失敗し、経済面でも衛生面でもウイルスそのものより深刻な結果をもたらすと主張。同氏を含めた6人の「プランB」と称する学者グループは制限緩和を求めるロビー活動を行っている。
失業率の上昇など長期的なロックダウンの影響を受ける「市民の間に、慢性的な不幸が広がるのが最大のリスクだ」。同国の主任科学顧問を務めたピーター・グラックマン氏はこう指摘。「小規模企業の多くが行き詰まっており、回復は難しいだろう」
異なる軌道を描く経済
世界中の国々が、経済的な痛みを和らげる制限緩和と新たなコロナ感染拡大を後押しするリスクの間でバランスを図ろうとしている。
4月14日付の学術誌サイエンスに掲載された論文によると、恐らく一度限りのロックダウンでは十分でなく、物理的な距離を確保する措置を2022年までは断続的に行う必要があるだろうという。
ニュージーランドの感染者数(確認済み・推定を含む)は1500人前後で安定し、オーストラリアは約6700人だ。(人口は前者が約500万人、後者は約2500万人)。
これはソーシャルディスタンシングに加え、積極的な検査実施と広範囲のマスク使用により感染拡大を抑えてきた韓国や台湾などに近い水準だ。
ニュージーランドとオーストラリアはいち早く中国との往来を遮断。遠く離れた島国という地の利を生かした。また両国とも主要産業への影響を相殺するため、ニュージーランドでGDP比6%相当、オーストラリアで同約16%相当という世界的に見ても大型の景気刺激策を繰り出した。
しかし、両国の経済が描く軌道は異なる。エコノミストの予想ではニュージーランドの4-6月期の国内総生産(GDP)は1-3月期に比べ20%のマイナス成長となる。これに対し、オーストラリアは約13%のマイナス成長にとどまる見通しだ。
オーストラリア・ニュージーランド銀行 (ANZ)によると、2020年末にニュージーランド経済は年初と比べマイナス10.4%、オーストラリア経済はマイナス4.7%に縮小する見通しだ。
またニュージーランドの失業率は、政府予想によると昨年末の4%から13.5%に上昇する可能性がある。オーストラリアの失業率は、豪中央銀行によると6月までに約2倍の10%に上昇する見通し。
HSBC (シドニー)のチーフエコノミスト、ポール・ブロックサム氏は、ニュージーランドが希望を託すのは、急激なV字回復ではないかと話す。ハリケーンや地震の直後には、復興に向けた取り組みがV字回復をもたらすことが多い。一方、オーストラリアが思い描くのは緩やかなU字回復だろうという。
「再開すれば、人々はしばらく我慢していたことを全部やりたがるだろう。(低迷からの)反発があると思われる理由はそこにある」【5月1日 WSJ】
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ロックダウンしても(NZ)、しなくても(オーストラリア)、同じような成果を得られるなら、経済へのダメージが少ない後者の方が・・・という話にもなります。
ロックダウン方式の妥当性に関しては、以下のように疑問を示す向きも。
****海外のロックダウン、死者数爆発でなぜ“成功”か****
大半の欧米諸国では、「強制力を伴うロックダウンが新型コロナウイルスの感染拡大の制御に多大な成果を挙げている」との説が広く受け入れられている。
その論拠となるのは、「人と人との接触の最小限化イコール爆発的な感染拡大の防止」「都市封鎖や外出禁止令イコール感染者数の減少」あるいは「厳しい対策を実施した方が感染を食い止めることができる」という前提だ。
しかし、爆発的な感染拡大により都市封鎖令や外出禁止令が1カ月以上にわたって出されているにもかかわらず、ニューヨークやカリフォルニアなど米国の一部の州ではいまだに感染確認者や死亡者の数が驚異的なスピードで増加している。新規入院者数や死者数は減り始めてはいるものの、完全には峠を越していない。
さらに、ロックダウンが感染制御の最重要の要因であるなら、完全なロックダウンをしていない「ユルユル3密国家」であるわが国の相対的・絶対的な感染者数や死者の少なさの説明がつかない。
日本では米国より早く感染が確認されているから、ロックダウン状態ではない超過密の首都圏の3密状態は、ニューヨーク級あるいはさらにひどい感染爆発に、より早くつながらなければならないはずだ。(中略)
日本という明らかな例外が存在するロックダウンの前提は、疫病政策の基礎として妥当なものなのだろうか。一部の州で経済活動が再始動する米国から分析をお届けする。(後略)【5月4日 岩田 太郎氏 JB press】
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ロックダウンの有効性は、開始時点での市中感染の広がり具合など、いろんな条件にもよりますので、なかなかその検証は難しいところでしょう。
もし、日本がこのまま沈静化に成功するなら、厳格なロックダウンもせず、広範な感染者検査もせずに収まった稀有な事例になるのかも。
ただ、日本の場合は、法律・規則によらない自粛に向けた同調圧力みたいなものが作用しており、これを「民度」と捉えるのか、「ウザイ」ものと感じるかは人によって異なるかも。
それぞれの国はそれぞれの事情があり、単純な比較は難しいです。