孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  コロナ沈静化でも非常事態継続 政権には反政府行動抑制や風紀引き締めの思惑?

2020-05-22 22:32:33 | 東南アジア

(再開したバンコク・ラチャダー鉄道市場【5月21日 FNN PRIME】)

【新規感染者が1桁かゼロでも非常事態宣言を6月末まで継続】
タイでは新型コロナ感染はほぼ沈静化し、経済活動も徐々に再開されつつあります。

****タイ新規感染、2カ月ぶりゼロ=段階的に経済正常化へ****
タイ保健省は13日、新型コロナウイルスの新たな感染者がゼロだったと発表した。新規感染者が出なかったのは3月9日以来、2カ月ぶり。タイ政府は感染状況を慎重に見極めながら、経済活動を徐々に正常化させる考えだ。
 
13日時点の累積感染者は3017人で、94%の2844人が回復している。保健省当局者は「感染を最初に克服する国の一つになるため、手洗いやマスク着用、人との距離の確保を励行し続けてほしい」と呼び掛けた。【5月13日 時事】 
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*****“インスタ映え”市場が再開 体温検査と消毒で防止策****
タイの首都・バンコク中心部。
日が沈み、徐々にテントに明かりがともってきた。

ここは、“インスタ映え”すると、日本人観光客にも人気のナイトマーケット。
新型コロナウイルスの影響で、一度は姿を消したが、15日に営業を再開した。

入り口では、体温検査と消毒などの感染防止策がとられている。

タイではこの1週間、新たな感染者が連日1桁台に抑えられ、16日の発表では1人もいなかった。
規制の緩和が進む中、17日はデパートも再開予定で、徐々に日常が戻りつつある。【5月16日 FNN PRIME】
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しかし、プラユット首相は感染の第2波を招く恐れがあるとの理由で非常事態宣言を6月末まで延長。

****タイ非常事態、来月末まで延長=反政府派は解除要求―新型コロナ*****
タイ政府は22日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全土に発令している非常事態宣言の期限を今月末から6月末に延長する方針を決めた。反政府派はプラユット首相が非常事態宣言を利用して権限を強化していると訴え、解除を求めている。
 
タイは3月26日に非常事態を宣言し、夜間外出禁止令を出したほか、外国人の入国を禁じた。3月下旬〜4月上旬に100人を超えていた1日当たりの新たな感染者は今月5日以降、1桁かゼロに抑えられている。
 
政府は商業施設の営業再開を認めるなど、今月初めから行動規制を段階的に緩和。6月は緩和対象をさらに広げる予定で、感染の第2波を招く恐れがあるとの理由で宣言の延長を決めた。【5月22日 時事】 
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【反政府行動封じ込めの狙いも 更には風紀引き締めもあるのでは・・・】
“感染の第2波”云々はもちろんわかりますが、 “今月5日以降、1桁かゼロ”という感染状況からすれば、非常事態宣言が解除されるのが普通のように思えます。

解除しないのは、新型コロナ対策ではなく、継続した方が反政府行動を封じ込めるなど、政権に都合がいいからではないか・・・と思われます。おそらくこの点は間違いないでしょう。

更に言えば、単に政治活動だけでなく、社会生活一般についても、“この際”タイの伝統にそぐわないと(軍事政権を実質的に引き継ぐ)プラユット政権が考えるものは一掃してしまおう・・・との思惑もあるのでは・・・

下記のような些細なニュースにも、そんなことを感じてしまいます。

****新型コロナでキスシーンの撮影が禁止に―タイ****
2020年5月20日、中国の映像メディアの梨視頻は「新型コロナウイルス拡散防止のため、タイの文化部がキスシーンの撮影を禁止した。特殊効果とカメラアングルで調整する」と報じた。 

記事によると、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、タイでは殴り合いやキスシーンなどの濃厚接触に関わる芝居の撮影が禁止された。

撮影チームは風通しのよい空間で作業を行い、現場スタッフは50人を超えてはならない。画面に映らないスタッフはマスクを着用し、少なくとも1メートルから2メートルの距離をとらなければならないという。(後略)【5月21日 レコードチャイナ】
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感染拡大防止のためキスシーンの撮影を禁じるなら、一般生活におけるキスもセックスも禁止でしょうか?

経済活動は徐々に再開されてはいますが、プラユット首相のお気に召さない夜の産業などは後回しにされるのでは・・・。「風紀引き締め」ですね。

そうした産業に眉をひそめる向きは多々あるかもしれませんが、タイの基幹産業でもある観光業を支えている重要分野であり、何よりも、そういう場で生計を立てている人々は、経済的にも余裕のない貧困層であり、また、社会的に弱者であることも多い人々です。

ナイトライフの再開が先送りされることは、そうした人々の暮らしが立ち行かなくなることを意味します。

****タイの一大産業「ナイトライフ」が苦境に…コロナ直撃の今****
タイのナイトライフ産業に大打撃…現状を取材

東南アジアのタイでは、バーやパブ、クラブといったナイトライフが大きな産業になっています。しかし新型コロナウイルスは、こうした夜の経済を直撃しています。

豊かな自然やビーチ、そして文化遺産…。年間4千万人の外国人が訪問する観光大国・タイ。その魅力は昼だけではありません。

夜になると街の雰囲気は一変し、バーやナイトクラブなどが、街の主役に取って代わります。中でも首都バンコクは世界でも有数のナイトライフが楽しめると評判です。(中略)       

年間6千億円の一大産業…再開はまだ先に
タイのナイトライフエコノミーは、年間で55億ドル=日本円で6千億近くを稼ぎ出しているといわれます。しかし、これらの業種はリスクが高いとして、営業が再び認められるのは早くても6月下旬、それより先になる可能性もあります。

バンコクから2時間離れたリゾート地パタヤも大打撃を受けてました。バーやパブが並ぶ通りは、ほとんどが閉鎖されたまま…再開をあきらめた店も増え始めています。 

トランスジェンダー女性も苦境
市内のとある場所を訪れると…トランスジェンダーの女性たちが支援物資を受け取るために並んでいました。ここはLGBTの人を支援する団体の施設。パタヤに住むLGBTの人の多くは、ショーやパブなどのナイトライフ産業に携わっていて、この危機で仕事を失う人が続出しています。

看護婦:
「生活で感染リスクはありますか?」
プイさん:
「気をつけて生活してます。ずっと家にいて外出してないです」

この日、相談に来てたのは、トランスジェンダー女性のプイさん。プイさんはコロナ危機が起きるまでは「ティファニーズ・ショー」という老舗のニューハーフ・キャバレーで働いていました。

芸歴は19年。コロナ危機の前は、収入は月5万バーツありましたが、仕事が途絶え、今は日々の食事を買うお金にも困っています。

プイさん:
「私はお金持ちじゃなく、田舎から出てきてパタヤで働いているんです。」
「収入がなくて、とても大変です。固定費などは変わらないから。」

商売道具である体のキレを維持するため友人と自宅でエクササイズをするのが日課です。観光産業が戻るのを待つ日々ですが、ショーのお客さんは、外国人がメインのため、再開の見通しは全く立っていません。

プイさん:
「新型コロナで、私の思い描いていたものは、全て変わってしまいました。」
LGBTの支援団体のディレクターによると、パタヤにはおよそ2万人のLGBTがいてその大半が困難に直面しているといいます。

「いまはLGBTの権利や同性婚問題は後回しで、まずは生活が最優先です。」
「感染者が0になっても、パタヤの景気が元に戻るのは、1年はかかるのでは」

厳しい対策が功を奏し、タイの感染者は大きく抑え込まれ、一度は完全に姿を消した人気のナイトマーケットが5月15日、再びバンコクに戻ってきました。
再び活気あるタイの夜が戻ってくる日を多くの人が待ち望んでいます。【5月21日 FNN PRIME】
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タイの伝統的価値観を重んじるプラユット首相が、LGBTやナイトライフ産業で働く人々の生活を気遣うことは・・・まずないでしょう。

コメント
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