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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナ対策としてのスマホによる接触追跡 異次元の監視社会へ突入する入口か

2020-05-01 22:45:31 | 民主主義・社会問題

(香港のデモ参加者は身バレ防止にマスクをつけるが、逮捕者が相次いでいるという。【4月16日 PRESIDENT Online】)

【感染拡大抑制に役立つスマホアプリの世界的な開発競争】
新型コロナ対策として各国がスマホを活用した接触追跡に乗り出していることは周知のところです。

****コロナ感染経路、スマホ使った「接触追跡」の最前線****
新型コロナウイルスの感染経路を把握し、感染拡大抑制に役立つスマートフォン・アプリの世界的な開発競争が展開されつつある。 
 
スマホアプリの2大メーカーであるアップルと、アルファベット子会社グーグルは前週、感染者の近くにいた人を見つけ出して本人に通知することができるアプリを共同開発すると発表。「コンタクト・トレーシング(接触追跡)」と呼ばれる技術への注目が高まるきっかけになった。
 
◎携帯端末を新型コロナ対策に使う方法 
スマホや一部の携帯端末は、基地局やWiFi、GPS(全地球測位システム)などを介して、位置情報を送り続けている。スマホの場合、近距離無線通信技術のブルートゥースで近くの端末と接続もできる。 

こうした位置情報は、個人もしくは集団が外出禁止命令を守っているかどうか、監視する手段となり得る。また、ウイルスを保持する人と接触したかどうかを見極め、検査や隔離の必要性を判断することにも使える。 

スマホのメッセージ機能を利用すれば、体調の聞き取りをしたり、位置情報や身体データを通じた健康状態の「点数化」をしたりすることも可能だ。 

◎スマホを接触追跡に役立てるには 
ブルートゥースを用いると、スマホは近くにある他のスマホを識別する。感染者が出た場合、その感染者に近づいたスマホからの識別情報が記録されリスト化されているために、そうしたリストにあるスマホが、持ち主に検査を受けるよう、あるいは自主隔離するよう通知する。 

基本的には、スマホを使った接触追跡は、多くの人手を使って患者の渡航記録を聞き取り、さらに接触者に電話したり戸別訪問したりする従来の手法よりも効率的だ。 

しかし、ブルートゥースは到底、完璧な対策とは言えない。この技術は、咳をされても特に問題ないような15フィート(約4.5メートル)の距離があったり、近距離でもあっても壁を挟んでいたりする場合でも、スマホに記録が残ってしまう。

それでも開発者らは、スマホ同士がいわゆる握手できる距離に近づいたことを正確に判定することが可能になる方法を目指し、鋭意努力しているという。 

ブルートゥースは、都会の雑踏のほぼ全員を接触者とみなしてしまいかねないGPSや基地局のデータに比べれば、精度は高い。 

◎これらの方法は今使えるか 
シンガポールが世界に先駆け、ブルートゥースを利用した接触追跡アプリ「トレース・トゥギャザー」を開発した。強力な政府の監視システムを感染追跡に転用すると表明して話題になったイスラエルも、「ザ・シールド」と呼ばれるアプリを持つ。また、インドも接触追跡アプリを保有している。 

韓国は位置情報データを駆使して接触追跡をしており、台湾は位置情報を隔離の強制に使っている。中国はアプリに基づくさまざまな追跡システムを導入しつつある。 

こうした取り組みは、政府系調査機関や公衆衛生当局が主導して世界中で進んでおり、欧州連合(EU)はドイツが音頭を取って加盟国が接触追跡のプラットフォーム開発で足並みをそろえることを目指している。いくつかの欧州諸国は、これと別に独自のアプリ開発も手掛けており、英国も開発作業中だ。 

米政府はまだ、アプリ開発を進めていないものの、少なくとも2つの大学の研究グループと、ある特任ソフト開発チームが州や自治体から公認を得ようとしている。【4月18日 ロイター】 
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こうした手法は、別の見方をすれば、国家による国民の行動監視技術が確立されたということにもなります。

上記記事で多くの国の名前があがるなかで、日本の名前が出てこないのはなぜか?
技術的な問題か? それとも、こうした手法に対する拒否感が強いのか?・・・と思っていたら、日本政府も他国にならい、感染者が接触した人々を洗い出す携帯アプリを5月上旬から導入するようです。

【「監視社会と言われればそうかもしれないが、得る物も多い」】
上記の国々のなかで大きな成功を収めたとされているのが韓国。
一方で、その「監視」側面への警戒もあります。

****仏出身の文明評論家「韓国は監視が厳しい社会」=韓国ネット反論****
2020年4月29日、韓国・朝鮮日報は、フランス出身の著名な文明評論家であるギ・ソルマン氏が、韓国の新型コロナウイルスの防疫対策を評価しつつ、「韓国は監視が厳しい社会」と指摘したと報じた。 

ソルマン氏は、韓国では、李明博(イ・ミョンバク)政権時代、政府の国際諮問委員を務めたほか、度々訪韓している「知韓派」でもあるという。 

ソルマン氏は、フランスの時事週刊誌「ル・ポワン」とのインタビューで、韓国の防疫対策について「最高の結果を出した」とし、「選別的な隔離措置という隙がなく厳格な対策で、感染者数の割に死者が少なかった」などと評価。

「集団感染が確認された際は全員を検査し、重症患者は入院させ、それ以外の患者は施設で隔離させるという措置を取ることにより、社会全体を封鎖することを回避できた」などと語ったという。 

一方、携帯電話の位置情報を収集し、感染者の移動履歴を追跡した対策については「韓国人はこれを受け入れたが、それは韓国人が非常に監視された社会で生活しているからだ」と指摘。

携帯電話の位置情報による行動の追跡が、私生活と個人の自由を侵害するとして拒否感を示すフランス人は多いといい、ソルマン氏は「非常に監視された社会」との表現を用いて、不快感を示したという。 

これに、韓国のネットユーザーからは「感染者を追跡することは、都市を封鎖したフランスよりも、はるかに賢明な判断だったと思う」「感染者の行動経路が把握できなければ接触者の隔離や訪問先の消毒も難しくなる」「監視社会と言われればそうかもしれないが、得る物も多い」「感染者の行動履歴の把握を監視うんぬんと言うのは間違いだ」「韓国人は社会に監視されていると感じたことはない」などと、ソルマン氏の指摘に反論する声が多く上がっている。 (後略)【5月1日 レコードチャイナ】
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【新型コロナウイルスへの対策を口実に、国民を完全な統制下に置くことまで目指されてもいる】
問題は、新型コロナ対策としてのスマホによる「接触追跡」導入によって国民の行動監視が可能となり、その「うまみ」を経験した国家が、感染終息後にこうした「監視」を放棄するのか? といったところでしょう。

国民の側も、いったん「新型コロナ対策」として受入れ、その実用性を認識すれば、こういう「行動監視」システムへの抵抗感は薄れます。

更に言えば、ポスト・コロナの「行動監視」を視野に入れて、現在の「感染防止」対策が作られているのでは・・・といった懸念も。

****ロックダウンでスタートする完全監視社会? ロシア・モスクワの場合****
(中略)
感染者の行動監視のためにスマホアプリを開発。だけど…
まず、モスクワ情報技術局(DIT)のEduard Lysenko局長は、このほどラジオ番組において、感染者の行動を監視すべく、スマートフォンアプリを開発したと説明。

表向きは、これ以上の感染を防ぐため、市民を守る目的と語られたのですが、実際に初期バージョンの同アプリを検証した専門家から、明らかに違法な監視ツールだと非難されています。

ただ位置情報を把握するだけのはずなのに、同アプリからは、ユーザーの連絡先などの個人情報が筒抜けとなり、勝手にスマホの設定を変えたり、カメラを操作して監視可能になっていたそうですね。

おまけに、開発に何千万円も注ぎこまれたわりには、セキュリティレベルは非常に脆弱で、暗号化されることなく、各種データが海外のサーバまで送られかねないんだとか。

全市民にID発行
さらに、この監視アプリに加え、モスクワでは、全市民に個別のQRコードのIDを発行予定。このIDなしに、薬局や買い物、近所の散歩であっても、勝手に出歩けば罰金刑や懲役刑を科すという厳しい内容のようです。

どうやらロシアでは、海外の影響力を排除して、閉じられたインターネット社会を築き、国民を完全な統制下に置くことまで目指されてもいるみたいですが、新型コロナウイルスへの対策を口実に、その流れが加速していきそうな勢い。

いまや街頭の監視カメラからショップの買い物履歴、アプリにID管理まで組み合わせ、誰がどこで何をしているのか、すべて掌握しようとの狙いのようです。

アプリはいったん配布中断に
なお、さまざまな問題点を指摘された監視アプリは、ひとまず配布が中断され、いま初期のフィードバックをもとに、さらなる高い完成度を目指しつつ、開発に磨きがかけられているそうです。(後略)【4月8日 GIZMODO】
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【政府もビジネスサイドも導入できないまま、そのチャンスをうかがっていた。コロナ下で監視のレベルが異次元に突入】
ロシアのように、感染防止を名目に、「監視社会」への扉が開かれるのではないか・・・という疑念・批判があります。

****新型コロナにケータイが効く? ビッグデータという名の私の情報が使われる****
新型コロナウィルス(COVID-19)が広がる世界で、スマートフォンを使った「感染拡大防止策」が次々に実施されている。日本政府も、感染者が接触した人々を洗い出す携帯アプリを5月上旬から導入すると発表した。

「これは安心」とあなたは思っているかも知れない。けれど、これが前代未聞の個人監視プログラムなのだ。保健医療対策に、携帯電話を使って個人の行動を監視するという新奇な発想は、まさにビッグデータ時代のパニックの申し子として、ウィルス以上の速さで地球上に拡散している。

まず、先に感染が広がった中国、韓国、台湾などで、政府がスマホの位置情報を利用し始めた。(中略)

続いて感染者が急増した欧州、イギリス、アメリカも、官民共同でブルートゥースを使ったデータ収集アプリの開発に着手している。(中略)日本政府が計画している携帯アプリも、これとほぼ同じ仕組みだ。

緊急事態はビジネス・チャンス 
多くの政府が、検査の受けにくさや、病院のベッド、医療従事者の防護服の不足など、保健医療体制のお粗末さを露呈するなかで、携帯監視プログラムが救世主とばかりに登場したそのスピードは、驚くばかりだ。なぜだろうか?

私はデジタル監視技術について20年以上取材・研究を続けてきたが、コロナ下で監視のレベルが異次元に突入したことは間違いない。

これに匹敵するのは20年前の9.11で、あのときはアメリカ政府が「テロとの戦い」を掲げて、ほとんど地球上の全員を潜在的に「テロリスト」とみなす監視政策を始め、空港での指紋採取・写真撮影などがその後の国際的スタンダードになっていった。

今回のコロナ対策でも、ほとんどすべての人々を潜在的「感染者」とみなして特定、追跡しようとするところがよく似ている。

9.11後の監視拡大が私たちに教えたのは、監視技術はそれ以前から準備されていたということだ。例えば指紋や顔認証といった生体認証技術は、通常では(少なくとも20年前は)人々の抵抗感が強いため、政府もビジネスサイドも導入できないまま、そのチャンスをうかがっていた。

 9.11で人々がショック状態に陥っている間に、アメリカ政府は「愛国者法」を成立させ、その拡大解釈によって、秘密裏に市民の携帯電話やメールを大量に監視してきたことを、エドワード・スノーデンは2013年に告発した。

カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインは著書『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』で、対テロ戦争がセキュリティ産業を急成長させ、デジタル監視を戦場だけでなく、日常にも押し広げてきたことを指摘している。

そして今、コロナ「感染拡大防止」をうたい、携帯監視が登場した。個人を尾行するような技術はあまりにプライバシー侵害的でこれまで表に出しにくく、普段なら政府や企業が必死に否定する秘密の機能だ(スノーデンの告発を受けたグーグルやアップルが監視活動への協力を否定したように)。

が、官民共同の監視プロジェクトは今や大義名分を得て表舞台に登場し、この機会に市民権を得ようとしている。

20年前と違うのは、IT企業、データ産業、アプリなどを開発するスタートアップ会社がビジネスとして巨大化していることだ。

日本でも緊急事態宣言に経済界からの要望が強かったことを、思い出してほしい。政府は「感染対策」と言うけれど、その背景には強い商業的な動機があり、ウィルスへの恐怖をテコにした監視の強力な売り込みの嵐のただ中に、私たちが立たされていることは、知っておいた方がフェアだろう。

クラインは今、こうした新たなショックと不安を商機にした「コロナウィルス資本主義」に警鐘を鳴らしている。

ビッグデータは個人情報
私たちは、パソコンや携帯電話を通じてデジタル・ネットワーク上に様々な「電子の足跡」を残している。メールやチャットはもちろん、インターネットの検索や閲覧、ビデオの視聴や通話、ゲームの利用など、デジタル通信機器を介する行為はすべて記録されている。

携帯はどこからでも通信網に接続するために、自分の位置情報を発信している。これら膨大な個人情報がビッグデータと呼ばれている。

政府はこのビッグデータをコロナ対策に使おうとしているが、これは通信を扱っている企業の手を借りなければできない。

大手IT企業にとって政府は取りっぱぐれのないお得意様なので、「やってる感」と「スピード感」を出したい政治家に技術を提供する。

だが、これが本当の解決につながるかは、また別の話だ。対テロ戦争下で広がった監視が、世界をちっとも安全にしなかったように……。

官民が一体となってデジタル監視に着手することで、政府と民間に別々に保存されている個人情報をリンクしていく道も開ける。

個人情報は現在、あらゆるマーケティングに利用されるので、このうまみは企業側にとって将来的に非常に大きい。企業が、政府が、私たちの個人情報を見て、どんなうまみがあるのか――については、連載の回を追って明らかにしていきたい。

しかし覚えておいてほしい。私たちが使う携帯電話やパソコンから産み出されるビッグデータは、れっきとした個人情報なのだ、と。

自分のオンライン上の会話や行動をすべて実名で公開されてもいい、という人はあまりいないだろう。だからプライバシーや通信の秘密が多くの国で憲法上保障され、日本もそうした国々のひとつだ。

本人の同意を得ずに政府が個人の通信にアクセスできるのは犯罪捜査のときだけで、警察は理由を明らかにして裁判所から捜査令状を取る必要がある。

この盗聴捜査の手法がコロナ対策になし崩し的に使われ、不特定多数の人々を取り込んでいくことは、民主主義のルールが掘り崩され、だれもが犯罪者のように扱われていく、ということでもあるのだ。 (後略)【5月1日 小笠原みどり氏 GLOBE+】
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【ひとつの近未来事例、香港】
国家が国民の行動監視を行うようなったら、どういう社会になるのか?
その一つの事例が香港の今。

****恐怖のデジタル監視社会!「なぜ香港の若者がスマホを捨てるのか」****
 市民の居場所は全部ばれています 

2019年3月から続く「逃亡犯条例改正」への反対に端を発した香港のデモ。“中国化”に反対する抗議運動に発展し、人口700万人の香港で200万人(主催者発表)もが集い、中学生から大学生まで若者たちが声を上げる。その裏でデモ参加者と警察との「デジタル攻防戦」が起きている。

そもそも、ほとんどのデモは違法行為とみなされているため、参加者はマスクやサングラスで顔を隠し、身元の特定を防いでいる。それでもなぜか、逮捕される人が相次ぎ、半年間で6000人を超えている。

理由の1つに、香港当局がデモ参加者をデジタル追跡しているからだといわれる。発端は19年6月11日、通信アプリ「テレグラム」で2万人が参加するチャットグループの管理人が自宅で逮捕された出来事だ。警察が携帯電話をたどって本人を割り出したと報じられている。

デモ参加者の間で広がる「デジタル断ち」
そんな中、デモ参加者の間では「デジタル断ち」と呼ばれる行動が広がる。デジタル空間での痕跡を最小限にする取り組みで、電子マネーの利用もやめ、現金での生活に戻すようになっている。(中略)

デジタル追跡によって逮捕していることは、当局は公式に認めているわけではないが、香港中文大学のロックマン・ツイ助教授はこう話す。「警察は裁判所の命令なしに通信会社からデータを提供させているとみられます。企業が集めたデータを使って市民を逮捕できるようになっているのです」。

しかし香港の若者たちは、日本以上にデジタル漬けだ。携帯電話の普及率は280%を超え、ネットなくして日常生活は過ごせないとさえ言われる。

そもそも肝心のデモの情報もSNSを通して参加者間で共有するため、デジタル痕跡を100%消すことは不可能。私はその苦しいジレンマを目撃した。(中略)

便利さと引き換えに積み上げられていく膨大なデジタルデータに、現実の人々がのみ込まれる世界が始まっていた。【4月16日 PRESIDENT Online】
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