孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナ ワクチン実用化には時間も 来年夏の東京五輪は? 流行長期化が懸念されるアフリカ

2020-05-10 23:16:47 | 疾病・保健衛生

(ナイジェリアのラゴスで4日、新型コロナウイルスの感染防止のためにマスクを着けて路上を歩く人々【5月8日 朝日】)

【五輪開催の前提はワクチンか?】
1年延期になった東京オリンピックですが、新型コロナの状況次第でさらに延期・・・というのは「ない」とのこと。現時点での話ではありますが。

****東京五輪「再延期プランない」コーツ調整委員長****
東京オリンピックの準備状況を監督する国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長は9日、1年延期された同大会について、「再延期するプランはないという原則のもとで(準備を)進めている」と述べた。シドニーでロイター通信などの取材に応じた。

新型コロナウイルス感染拡大の終息は見通せない状況だが、大会組織委員会の森喜朗会長も再延期は「絶対にない」との考えを示している。コーツ氏は「(従来の計画と)同じ会場、日程でできるよう努力している」とも語った。【5月10日 日刊スポーツ】
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来年の夏とは言っても、数か月前にはどうするのかを決定する必要があるでしょうから、実質あと1年でしょう。
1年で新型コロナをめぐる状況が大きく好転しているのか?

****東京五輪の運命は? ワクチン開発と懐事情の戦い ****
五輪が開催されないというリスクにも現実味

来年に延期となった東京五輪に向けた準備が時間との戦いになる中、巨大な2つの力がせめぎ合っている。 
 
一方では、科学者が新型コロナウイルスの予防ワクチンの開発を急いでいる。医療専門家の間では、夏期五輪のような大規模かつ国際的なイベントを安全に開催するには、ワクチンが欠かせないとの見解が増えている。

ワクチンが来夏までに発見され、効果が証明された上で広く入手できるようになるかは、現時点で全く見通せない。 
 
もう一方では、日本の大会組織委員会が想定外の巨額費用に直面しており、日本経済も厳しい逆風に見舞われている。コロナ危機前に1兆3500億円程度だった予算は、半分以上が税金だ。

日本は観光ブームがこれだけの支出を正当化すると当てにしており、ウイルス感染を最小限に抑えるための無観客での五輪開催は望んでいない。 
 
さらに、日本が追加的に多額の支出を負担して準備しても、五輪は結局開催されないというリスクもかなり現実味を増している。

日本はすでに、コロナ危機に対応する緊急経済対策を盛り込んだ総額25兆6000億円の補正予算を成立させている。日本の大会組織委員会のあるメンバーは「人々の理解を得るには、コストを最小限に抑える必要があることは分かっている」と明かす。 

日本の主催者はこれまで、2021年夏以降の延期は問題外との考えを示している。つまり、来年7月の開催がなければ、東京五輪そのものがなくなるということだ。また、大幅に規模を縮小した上での開催にも後ろ向きで、ウイルス感染の軽減策ではなく、解決策を見いだすことを期待している。 
 
安倍晋三首相は先週、国会での質疑応答で、東京五輪は完全な形で実施されるべきで、コロナのパンデミック(世界的大流行)が終息しなければ不可能だとの考えを示した。 
 
安倍首相は、五輪は「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」として開催されるべきだと指摘。そういう状況になければ、五輪開催は極めて難しく、その点において、治療薬やワクチンの開発が非常に重要になるとの考えを示した。 
 
日本の大会組織委員会の広報担当者は、ワクチンが五輪開催の必要条件になるかについてコメントを控えたが、世界保健機関(WHO)を含む医療・保健当局と緊密に連携していると述べた。 
 
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は感染症の専門家10人に取材し、通常通りの五輪開催に必要な条件を聞いた。

五輪はおそらく、パンデミックの最中に開催するイベントとしては、地球上で最も困難な課題だ。世界200カ国以上から何万人もの選手や当局者が開会式に出席するために一斉に集い、さらに数万人の観客が会場を埋め尽くす。しかも、誰が入場できるかに制限はなく、大会期間の2週間を密集地で過ごした後、それぞれがまた本国へと戻っていく。 
 
その答えの鍵を握るのがワクチンだ。 
 
国際保健法に関するWHOの協力センター責任者、ローレンス・ゴスティン氏は「新型コロナの波は2021年になっても続く可能性が高く、大勢の選手や観客を安全に移動、収容する唯一の安全な方法は、有効かつ広く入手できるワクチンで集団免疫を作ることだ」と話す。 
 
「ワクチン開発がどうなるかに左右される。なぜなら、ワクチンは完全に脅威を取り除くことができるからだ」。ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの専門家、アメシュ・アダルジャ氏はこう指摘する。 

科学者らの間では、1年~1年半で新型コロナ予防ワクチンの開発・流通を実現するとの見通しは、極めて楽観的だとの見方が支配的だ。新型コロナに関する研究は急ピッチで進んでいるが、これまで最短で開発されたワクチンでも4年を要しており、おたふく風邪向けだった。 
 
一方、五輪当局者は異なるスタンスをとっている。
国際オリンピック委員会(IOC)の東京大会調整委員会のジョン・コーツ委員長は先週、オーストラリアン・アソシエーテッド・プレス(AAP)とのインタビューで、ワクチンが開発されれば「素晴らしい」としたが、五輪開催の条件にはならないとの考えを示した。

ワクチン開発が間に合わない場合、ウイルス感染を広げずにどう開催できるかについては、詳細を明らかにしなかった。IOCは、コーツ氏はインタビューに応じられないとしている。(中略)

専門家の間では、ワクチンがなくても開催は可能だとの声もあるが、一般的な五輪のイメージとはかけ離れた制約や追加負担を伴うだろうと指摘されている。
 
マサチューセッツ総合病院の感染症責任者、ロシェル・ウォレンスキー氏は1つの可能性として、大会の2週間前に全員を日本に入国させ、滞在中は毎日検査を行い、帰国前の2週間は隔離を義務づけるといったことが考えられると述べる。そうなれば事実上、五輪の開催期間と宿泊日数は3倍になる。
 
レスリングなど、ウイルス感染のリスクが高い競技を排除する案も出ている。米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は、先週公表した国内イベントに関するスポーツ競技運営組織への指針で、ウイルス感染のリスクが高い競技を6つに増やした。これには、日本で人気の高い柔道や空手が含まれている。
 
一部の専門家は大会の観戦を禁止する可能性にも言及しており、これは日本にとって、投資回収の点で最も打撃が大きいだろう。組織委員会はチケットの売上高だけで900億円を見込んでおり、これには土産品の販売やホテル宿泊、レストラン利用など、日本経済全般への恩恵は含まれていない。(中略)

無観客となれば、3480億円相当の国内スポンサー契約に影響が出る可能性がある。日本の主催者は、来年の五輪への関与継続を巡り、スポンサーとの交渉を始めたとしている。
 
日本経済は低迷したまま2019年を終え、現在ではリセッション(景気後退)入りの瀬戸際にある。日銀は4月27日、2020年度(21年3月終了)の国内経済の成長率は3~5%のマイナスになるとの見方を示した。【5月7日 WSJ】
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記事後半の隔離を義務付ける方法、一部競技の中止、無観客試合等々は、現実的には疑問も多く、結局のところ、新型コロナが急速に終息して、冬場も「第2波」が起きないとか、ワクチンが速やかに開発され、実用化される以外には、東京五輪は難しそうに思えます。

日本国内の雰囲気としても、今は「オリンピック?何それ?」って雰囲気ですし、今後コロナ禍からの復旧にむけてやるべきこと多々あり、資金はいくらあっても足りない状況で、オリンピック開催のために更に税金を投入して・・・というのは困難でしょう。開催しないと、これまでに投下した資金が回収できないとしても。

【時間を要するワクチン開発・実用化】
ワクチン開発については、いま世界中の科学者たちが取り組んでいます。

****新型コロナウイルスのワクチンを「数カ月」で完成させる:英研究チームが挑む史上最速の量産への道のり****
新型コロナウイルスのワクチンの開発に、いま世界中の科学者たちが取り組んでいる。こうしたなかオックスフォード大学の研究チームが、史上最速ともいえる数カ月というスピードでワクチンを完成させる難題に挑んでいる。秋までに100万本を量産するという目標を、研究チームはいかに達成しようと考えているのか。(中略)

山積する課題
オックスフォード大学の取り組みが成功するかどうかは別として、政府や製薬企業は常に複数のプロジェクトを並行して進めるべきだと、英国免疫学会のダグ・ブラウンは指摘する。

低価格で量産可能なワクチンが期待通りのスケジュールで利用可能になるかわからなくても、開発プロジェクトには投資を続ける必要がある。ブラウンは「有望な開発案件を支援し、英国だけでなく世界各国での量産を目指さなければなりません」と話す。

オックスフォード大学のワクチンは科学的にも生産体制の面からも、まだたくさんの課題がある。量産が可能になるまでには長い時間がかかるだろう。

それに新型コロナウイルスについて不明な点も多い。例えば、集団免疫を確立するには、どれだけの人にワクチンを接種しなければならないのかといった問いには、答えが出ていない。

感染力が非常に強いはしかでは、人口の95パーセントにワクチンを接種しないと集団免疫は成立しない。新型コロナウイルスでは、感染拡大の初期段階では基本再生産数は2〜3程度だったと考えられている。この場合、人口の60〜80パーセントにワクチンを接種しなければならない。

英保健省は4月23日、イングランドの20,000世帯を対象に新型コロナウイルスの感染検査を実施する計画を明らかにした。ワクチンの接種プログラムを策定する上で、感染実態を把握することは必要不可欠だ。

ブラウンは「特定のグループから接種を始める可能性はあります」と言う。「その場合、優先すべきなのは感染した場合に危険性が最も高いと考えられているグループなのか、それとも感染率が特に高いグループなのか。子どもから接種していくのか、成人の就労者からとりかかるのか。こういったことは、現時点ではまだ何もわかっていないのです」【5月8日 WIRED】
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あまり楽観はできません。

****時間かかるワクチン開発****
 ――ワクチンについても、健康な体に接種するだけに安全性の確認は薬よりも厳しいと聞きます。開発までに、少なくとも1年~1年半はかかると言われていますが。

(植田真一郎・琉球大教授) 
ワクチンの開発は世界各国で行われていますが、そんなに簡単ではないでしょう。ワクチンにより、免疫ができたことを測定する評価方法も定まっていません。やはり十分な臨床試験が必要だと思います。
 
ワクチン開発を楽観する発言もありますが、薬剤と同じように安全性と有効性を慎重に評価する必要があります。【5月10日 朝日】
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確かに、治療薬の方は、人体実験に近いようなものでも苦しんでいる患者は投与を希望するでしょうが、ワクチンとなると健康な者に投与する訳で、いまでもはしかワクチンなどに種々の議論があるぐらいで、安全面を納得してもらうのには高いハードルもありそうです。

【アフリカ「流行は数年間続く」】
感染状況の方は、日本国内の終息は当然の条件ですが、問題は世界全体が終息するか・・・というところです。

今は欧米が感染の中心ですが、今後はアフリカや途上国が中心となるでしょう。

****世界の感染者、わずか12日間で100万人増…拡大の中心は南米やアフリカに****
新型コロナウイルスの世界の累計感染者数が9日(日本時間10日)、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計で400万人を突破した。
300万人に達したのは4月27日で、わずか12日間で100万人増加した。拡大のペースは衰えていない。

10日午前(日本時間10日午後)時点の感染者数は約402万5000人だ。国別では米国が約131万人と最多で、全世界の感染者の3割超を占める。以下、スペイン、イタリア、英国と続く。死者数は28万人に迫る勢いで、このうち約7万9000人が米国での犠牲者だ。英国やイタリアも死者が3万人を超えている。
 
最近は、感染拡大の中心が欧米から南米やアフリカ各国に移り、ブラジルの死者も1万人を超えた。欧米では行動制限を緩和し、経済活動を再開する動きが広がっているが、流行の「第2波」を懸念する声も強い。【5月10日 読売】
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アフリカ、南米以外でも、中東やインドも心配。

そうしたなかでも、一番の懸念は医療体制が不十分で、いったいどれだけ感染が広がっているのか現状も十分に把握できないアフリカでしょう。

****アフリカで数千万人感染の恐れ WHO「流行数年続く」****
世界各国で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染者がアフリカで5万人を超えた。世界保健機関(WHO)は7日、「感染防止対策に失敗すれば、アフリカで今後、数千万人が感染する恐れがある」との声明を発表。「流行は数年間続く」との見方も示し、各国に検査や感染者の隔離の徹底を呼びかけた。

WHOアフリカ地域事務局は、管内のアフリカ47カ国の感染状況を分析し、「2900万~4400万人がこの1年で感染する恐れがある」と説明した。

モエティ局長は、若年層が多いことなどを理由に、「世界の他の国のように指数関数的には感染は拡大しないだろう」とする一方、早期の終息には否定的な考えを示した。
 
アフリカ連合のアフリカ疾病対策センターなどによると、アフリカ54カ国のうち南部にあるレソトを除く53カ国で、7日時点で計5万2175人の感染が確認された。死者は2024人に上っている。今後4~6週間で多くの国で感染のピークを迎えるという。
 
国別では、欧州との歴史的な結びつきが強い南アフリカの感染者(7808人)が最も多い。南ア政府の感染対策を担う専門家のサリム・アブドル・カリム氏は「国内の感染者は今後、数十万~百万人単位に及ぶとの予測が出ている」と話す。
 
欧州との距離が近いエジプト(7588人)やモロッコ(5505人)、アルジェリア(4997人)のほか、人口が多いナイジェリア(3145人)でも感染者は増えている。一方、セーシェル(11人)やナミビア(16人)では約1カ月間、新たな感染者が確認されていない。
 
感染防止のために厳しい外出制限に踏み切る国も多いが、検査や感染者数の情報公開が十分にできていなかったり、効力が不明のまま植物や薬草入りの薬を感染防止策として採り入れたりする国も出ている。【5月8日 朝日】
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“WHOは最新のアフリカ報告書で、新型ウイルス感染拡大はアフリカでは他の地域よりも遅く、感染ペースも低いと指摘。こうしたことは感染拡大が長期化する恐れがあることを示しているとした。”【5月8日 ロイター】

「流行は数年間続く」とか、「は感染拡大が長期化」ということになると、いよいよ来年夏の東京オリンピックは「幻」となる可能性が・・・・アフリカ抜きで開催する訳にもいきませんから。

仮にアフリカを含めた世界各国の感染状況が落ち着いても、規制を緩めた韓国で再発した事例などみると、オリンピックなようなビッグイベントを行うためにはやはりワクチンが必要でしょうね。

コメント
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