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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロヒンギャ  ミャンマー国軍の「ジェノサイド」責任を問う国際批判 沈黙するスー・チー氏

2018-09-29 23:18:49 | ミャンマー

【9月4日 COURRIER JAPON】

ミャンマー国軍による「ジェノサイド」の責任を問う国連の動き】
ミャンマー西部ラカイン州のロヒンギャについては、ミャンマーにおける安全が保障されないこと、帰還した場合の国籍付与が認められていないことなどから、バングラデシュに逃れた70万人超のロヒンギャ難民の帰還は全く進まない状況ですが、ロヒンギャ追放・虐殺を主導したミャンマー国軍の責任を問う国際的な動きが強まっています。

国連人権理事会が設置した国際調査団は18日、ミャンマー国軍指導層に「特定集団を抹殺する意図があったと判断できる」とする報告書を理事会に提出しています。

****ロヒンギャ問題、刑事責任追及 国連調査団が報告書 ミャンマーに包囲網 国際刑事裁も管轄権認定****
ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題で、国連人権理事会が設置した国際調査団は18日、「深刻な国際法違反に加え、一貫した人権侵害のパターンを立証した」とする報告書を同理事会に提出した。

国軍幹部を名指しして刑事訴追を求める内容で、ミャンマーへの圧力は一段と強まり、同国への投資などに悪影響が及ぶのは必至だ。

報告書は、アウン・サン・スー・チー国家顧問と並ぶ権力者であるミン・アウン・フライン最高司令官ら幹部6人を名指しし、ロヒンギャ殺傷などの行為が民族虐殺に相当すると論じている。

ロヒンギャの存在を否定する発言を繰り返したことを挙げ「特定集団を抹殺する意図があったと判断できる」と指摘。

20世紀末のルワンダや旧ユーゴスラビアの紛争指導者と同様に、国際法廷に訴追すべき容疑者だと指弾した。

難民発生の契機となったのは2017年8月に発生したロヒンギャ系武装集団の襲撃への治安部隊の掃討作戦だが、報告書は「ミャンマー国軍や治安部隊は一般人を無差別に攻撃しており、正当化できない」と指摘。「子供を含め一般人が標的となった」として国際人道法に反すると結論づけた。

ロヒンギャ難民ら875人への面談記録や、焼失した村の衛星画像などを盛り込み、報告書は444ページに及ぶ。8月27日に公表した内容に加え、ロヒンギャの人々が住んでいた村ごとに被害の証言を詳細にまとめた。

国際調査団は名指しした6人に加え、迫害に関わった治安部隊関係者の非公開リストを「関係機関と共有する用意がある」としている。こうした情報を根拠に、欧米各国による制裁が強化される可能性が高まった。(後略)【9月18日 日経】
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調査団は安全保障理事会に対し、ミャンマー国軍がジェノサイド(民族大量虐殺)を意図していた可能性もあるとして、人道犯罪などで訴追権限を持つ国際刑事裁判所(ICC)へ問題を付託するよう勧告。
迫害の実行者に渡航禁止や資産凍結などの制裁を科すことや、ミャンマーへの武器禁輸も求めています。

この動きに並行して、国際刑事裁判所(ICC)は国軍による基本的権利の剥奪や殺害、性的暴行、強制失踪、破壊、略奪などの罪について予備調査を開始しています。

****ロヒンギャ迫害、国際刑事裁が予備調査を開始 虐殺や性的暴行の疑い****
国際刑事裁判所の検察官は18日、ミャンマー国軍がイスラム系少数民族ロヒンギャに対して犯した疑いがある虐殺や性的暴行、強制移住などの罪について予備調査を開始した。
 
(中略)予備調査では、ICCのファトゥ・ベンスダ主任検察官が正式な捜査を正当化するのに十分な証拠があるかどうかを調べる。
 
予備調査の結果次第でICCは正式な捜査を行い、さらに捜査の結果次第では起訴に至る可能性もある。
 
ミャンマーはICC非締約国だが、ICCは約2週間前、バングラデシュが締約国であることを理由に、ロヒンギャ迫害について管轄権を行使できると判断した。(後略)【9月19日 AFP】
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現実には、ICC付託には安保理の決議が必要で、中国の反対も予想されることから実現は難しいとも。

国軍のによる「ジェノサイド(大量虐殺」に対する責任を問う国連での動きに対し、ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン総司令官は、国連にミャンマーの主権に干渉する権利はないと反発しています。

****ロヒンギャ問題、「国連に干渉の権利なし」とミャンマー軍司令官****
ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ問題で、国連の調査団が先週、ミャンマー国軍の高官らを「ジェノサイド(大量虐殺)」の罪で訴追するよう求めたことを受け、同軍のミン・アウン・フライン総司令官は、国連にミャンマーの主権に干渉する権利はないとはねつけた。
 
調査団は国連安全保障理事会に対し、軍高官らの関与をめぐり国際刑事裁判所への付託を要請。またミャンマーは2011年に民政移管したとはいえ、軍が依然強い影響力を握っており、軍は政治から手を引くべきだと訴えた。
 
軍機関紙ミャワディによると、総司令官は23日に軍向けの演説の中で、いかなる国、組織、団体にも「一国の主権について干渉したり決定を下したりする権利」はないと指摘。さらに、「内政に介入する協議は誤解を招く」と警鐘を鳴らしたという。

国連調査団による提言以降、総司令官が自身の見解を公に示したのはこれが初めて。(中略)

軍はほぼ全ての残虐行為を否定し、ロヒンギャに対する取り締まりは過激派を一掃するための合法的な手段だと主張している。【9月24日 AFP】
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アメリカ国務省も迫害に関与した関係者の責任明確化を要求
人権問題には関心がないように見えるアメリカ・トランプ政権も、(かつての軍事政権に制裁を科した経緯もあってか)ミャンマー・ロヒンギャ問題については例外的に強い姿勢で臨んでいます。

ただ、「集団虐殺」や「民族浄化」といった刺激的な用語は使用していないとも。

****米国務省、ミャンマー軍がロヒンギャを組織的に迫害と報告****
米国務省は24日、ミャンマーのラカイン州で政府軍がイスラム系少数民族ロヒンギャを標的に大量殺人やレイプなど組織的な迫害を行っていたと結論付ける報告書を発表した。
 
(中略)米国務省の報告書は、隣国のバングラデシュへ逃れたロヒンギャ難民の成人1024人を対象に4月に実施した聞き取り調査を基にしたもの。既に複数の人権団体が公表している調査結果と内容は一致しているが、個々の事例の説明は個人的感情を抑制した記述となっている。

特筆すべき点は、ラカイン州でのミャンマー軍によるロヒンギャ大量殺人について「集団虐殺」や「民族浄化」といった表現を用いていないことだ。
 
報告書によると、調査対象となったロヒンギャ難民の82%が殺人を目撃し、51%が性的暴行が行われていたと証言した。

目撃者は複数の村に及ぶが、皆一様に、ミャンマー兵らが村の女性全員に家の外へ出るよう強要し、4〜5人を選び出して野原や森、家屋、学校の校舎、モスク(イスラム礼拝所)、仮設トイレなどに連行して集団レイプしたと語っている。

連行された女性の数を20人とするものや、兵士らは家々を回り「魅力的な」少女たちを選んで集団レイプしていたとの証言もある。全てではないが、レイプされた女性の多くはその後、殺害されたという。
 
報告書は「ミャンマー軍の攻撃の範囲と規模からみて、作戦は綿密に計画された組織的なものだったと考えられる」と結論付けている。
 
ロヒンギャ問題をめぐっては、国連も24日、ロヒンギャ難民支援に1億8500万ドル(約210億円)を拠出すると発表した。【9月25日 AFP】
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ミャンマー国軍とランボーの戦いを描いたエンタテイメント映画「ランボー 最後の戦場」の世界が現実に繰り広げられていたようにも思えます。

****ロヒンギャ迫害で徹底調査要求 米国務長官、ミャンマーに****
米国務省は28日、ポンペオ国務長官がミャンマーのチョー・ティン・スエ国家顧問府相と27日にニューヨークで会談し、イスラム教徒少数民族ロヒンギャの迫害について徹底調査と関係者の責任追及を求めたと発表した。

国務省は、ロヒンギャ迫害はミャンマー国軍によって「事前に計画、調整された動きだった」と非難する報告書をまとめ、近く公表するとみられている。

ポンペオ氏は会談でミャンマーの民主化を支援する立場を強調した上で、米国や国連が指摘するロヒンギャへの人権侵害について具体的な調査を進め、迫害に関与した関係者の責任を明確にすべきだと伝えたという。【9月29日 共同】
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国連人権理事会、ジェノサイドの疑いとの非難決議 反発するミャンマー国内世論
国連人権理事会は前出の調査団報告を受けて、特定の民族や宗教に属する集団を殺害する「ジェノサイド」という最も重い人道犯罪の疑いに言及する形で非難決議を採択しています。

****ミャンマー非難、決議 国連「ロヒンギャ集団殺害疑い****
ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャへの迫害などをめぐり、国連人権理事会は27日、非難決議を採択した。

決議は、特定の民族や宗教に属する集団を殺害する「ジェノサイド」という最も重い人道犯罪の疑いに言及した。国際社会の視線は厳しさを増すが、責任追及や70万人超の難民の帰還は進んでいない。
 
今回の決議は、欧州連合(EU)とイスラム協力機構(OIC)が中心となり、共同提案国は100超に上ったという。定例の理事会の審議で投票にかけられ、47理事国のうち賛成35、反対3、棄権7で採択された。中国などが反対した。

日本はミャンマー政府が設けた独立調査委員会の活動を重視する立場を表明し、投票を棄権した。
 
決議は、ミャンマー国軍幹部が少数民族の迫害を主導したとして、西部ラカイン州でのロヒンギャ迫害でジェノサイドの疑い、北部カチン、シャン両州での迫害で人道に対する罪の疑いを指摘。組織的な人権侵害はアパルトヘイト(人種隔離)に匹敵すると言及した。
 
ミャンマーでの人権侵害をめぐっては、国連の場で何度も是正を促す決議がされてきた。

ただ、今回は人権理事会が設置した調査団が今月、440ページにわたる報告を公表し、特に昨年8月下旬以降のロヒンギャへの大規模襲撃について、村の焼き打ち、村人をより分けて男性を殺して女性をレイプするといった目撃証言を記した。

決議は調査団の報告を踏まえた内容となっており、重みが違う。
 
ミャンマー政府は「外からの干渉は問題を複雑化させる」として調査団に一切の協力を拒み、人権理事会で批判を浴びてきた。

決議は調査団の活動延長に加え、証拠集めなどに当たる独立機関の設置を決め、ミャンマーはさらに窮地に立たされることになった。
 
一方で、調査団は国際刑事裁判所(ICC)での責任追及を勧告したが、実現には国連安全保障理事会の決議が必要で、中国が反対する現状では実現は難しい。

また、EUなどはミャンマー政府を批判しつつ、アウンサンスーチー国家顧問が率いる政権自体を制裁対象にしない方針で、結果として圧力を弱めている。

 ■スーチー氏沈黙、軍に配慮か
国際的な批判が集まるミャンマー国軍に対し、スーチー氏の与党・国民民主連盟(NLD)政権は表立った批判を控えている。NLDが目指す憲法改正や少数民族和平問題で軍の協力が欠かせず、関係を重視せざるを得ないからだ。
 
さらに、ロヒンギャ擁護に回れば、仏教徒が多数を占める国内世論の反発も予想される。ラカイン州の仏教徒団体の幹部は「NLD政権は外国の言うことばかりきいて、我々の声に耳を傾けない」と憤る。

州議会では政府が進めようとしている帰還に反対する決議も可決された。仏教徒による地域政党の幹部は「(ロヒンギャを)擁護するなら徹底して反発する」と話す。
 
政権が解決へ効果的な手を打てないなか、人権問題は経済にも影を落とす。ミャンマー政府によると、今年1~7月の観光客数は前年同期比で独・仏から約3割、英国からは約2割減った。人権問題に敏感な欧州の人々がミャンマー旅行を避けたとみられる。
 
外国企業からの直接投資にも影響が見える。2012年度の約14億ドルから15年度に約95億ドルまで増えたが、16年度に約67億ドル、17年度は約57億ドルに減った。
 
こうした状況が続けば、2年後の総選挙にも影響しそうだ。ラカイン州の旧軍政系の連邦団結発展党(USDP)幹部は「政府への批判が、我々の支持につながっている」と笑みを浮かべた。【9月28日 朝日】
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ミャンマー政府支援を促す日本外交
“日本はミャンマー政府が設けた独立調査委員会の活動を重視する立場を表明し、投票を棄権した”というように、日本はミャンマー批判を強める欧米とは一線を画した対応です。

同じアジアにあって、利害が強く絡むこともありますし、特にミャンマーに関しては、歴史的な関係の深さもあります。

軍事政権時代にも制裁を科す欧米とは異なる対応で、一定に軍事政権との関係も維持はしたものの、やはり関係を薄めたことで、結果的に中国のミャンマーへの影響力拡大を許したという思いもあるのかも。

****河野氏、対ミャンマー支援促す ロヒンギャ問題 ****
河野太郎外相は24日午後(日本時間25日未明)、イスラム系少数民族ロヒンギャの迫害問題に関する英仏外相主催のワーキングランチに出席した。

ミャンマーへのロヒンギャ難民の帰還と再定住を促すミャンマー政府の取り組みへの国際社会の支援を訴えた。「スタートしたばかりの民主政府が逆行しないようにアウン・サン・スー・チー政権を支えるべきだ」と語った。【9月25日 日経】
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内政不干渉という点では、人権・民主化への配慮がないと批判の多い中国外交と、ことを荒立てない日本外交は結果的によく似ています。表向きの対応はいろいろあるでしょうが、やはりレッドラインを超えた問題に対する強い意思表示は水面下等であってしかるべきでしょう。

沈黙するスー・チー氏へ高まる批判 10月に来日予定
一方、先述のような国軍の責任問う動きは、国軍の責任やロヒンギャ帰還で沈黙するノーベル平和賞受賞者スー・チー氏への批判にもなっています。

****バングラデシュ首相・スーチー“問題提起できたはず*****
国連総会でミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャの人たちが迫害を受けている問題が取り上げられた。
バングラデシュのシェイクハシナ首相はミャンマーでは実権は軍部にあるが“スーチーも世界に向けて問題提起できたはず”と述べ、ミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問が問題解決に本腰を入れないことに失望の意を示した。(シンガポール・CNA報道)【9月28日 BS1】
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****カナダ、スー・チー氏の名誉市民号を剥奪 ロヒンギャ危機めぐり****
カナダ議会は27日、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問に与えていたカナダの名誉市民号を実質的に剥奪することを全会一致で決めた。ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャの危機を受けた動き。
 
カナダ政府は2007年、長期の軟禁を経験したミャンマーの民主活動家で、ノーベル平和賞受賞者でもあるスー・チー氏に対し、名誉市民号を授与した。カナダ名誉市民号はこれまでスー・チー氏のほか5人にしか与えられていない。
 
しかし、スー・チー氏がロヒンギャに対するミャンマー軍の残虐行為を非難することを拒むと、同氏の国際的な名声は失墜。カナダ政府は先週、同軍の行為は「ジェノサイド(大量虐殺)」であると宣言していた。【9月28日 AFP】
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スー・チー氏が沈黙しているのは、軍や世論に配慮した政治的判断もありますが、彼女自身も大方の世論同様、、ロヒンギャへの共感は薄いこともあるように見えます。(今年1月までロヒンギャ危機でミャンマー政府を支援する国際諮問機関のメンバーだったビル・リチャードソン氏によれば、スー・チー氏は逮捕拘束されたロイター記者を「裏切り者」と呼んでいたとか【9月5日 WSJより】)

そのスー・チー氏が会議で来日した際に、福島の農村を視察するそうです。

****スー・チー氏が福島訪問へ 農村視察、自国のモデルに****
ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が、10月上旬に東京で開かれる「日本・メコン地域諸国首脳会議」での訪日に合わせ、福島県の農村を訪問することが29日、分かった。日本政府関係者が明らかにした。
 
ミャンマーの農村は人手不足が深刻で、農業の担い手不足に直面する日本の取り組みを視察し、自国の農村の発展モデルにしたい考えとみられる。
 
スー・チー氏が訪れるのは福島県南部の泉崎村。高齢化や耕作放棄地の問題で人手不足に直面する農業と、働く場が不足している障害者の福祉施設などが連携する「農福連携」に取り組む現場を視察する。【9月29日 共同】
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「農福連携」もいいですが、ミャンマー・日本の間には、もっと時間をかけて話し合うべき問題があるようにも・・・・。
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