孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

プラスチックごみによる海洋汚染を防ぐにはリサイクルよりは焼却?

2018-09-10 23:18:49 | 環境

(太平洋のプラスチックごみを回収するための巨大な浮遊装置(オーシャン・クリーンアップ提供)=米カリフォルニア州で、AP【9月10日 毎日】)

【「太平洋ゴミベルト」の回収始動
最近話題になることが多い「プラスチックごみ」については、6月5日ブログ“プラスチックごみ対策  欧米のストロー禁止より急務なアジア・アフリカにおけるゴミ回収システム”でも取り上げたことがあります。

一番問題視されているのは、プラスチックごみが最終的に海洋に投棄され深刻な海洋汚染を引き起こしていることで、海流の関係でプラスチックごみが集積する「太平洋ゴミベルト」と称される海域があるそうです。

****プラスチックだらけ! 世界中のごみが流れ着く「太平洋ゴミベルト」は本当にひどかった****
「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる160万平方キロメートルを超える北太平洋上の海域には、大きな潮の流れに乗ってプラスチックごみが集まってくる。

オランダのNPO「オーシャン・クリーンアップ」の研究者たちは、飛行機を使って上空から観察したり、ボートを使ってこの海域を調査した。

その結果、この海域に漂うプラスチックごみの量が急増し、これまで考えられていたよりも16倍多い可能性があることが分かった。

海に捨てられたり、川から海に流れ出た全てのプラスチックごみは、その場で沈むか潮に流される。こうしたプラスチックごみの大半は、最終的に「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる大きな海域へと運ばれる。

その大きさは、スペインの面積の3倍以上、トルコあるいはアメリカ・テキサス州の2倍以上だ(日本の面積の4倍以上)。(中略)

太平洋ゴミベルトは上空から一見すると、ただの大海原のようだ。しかし実際には、世界中のごみが集まってきている。これらのごみは、海の生き物にからまったり、それを食べ続けることで、生き物の命を奪ったり、わたしたちの食料供給に影響を及ぼすほど体内に蓄積されている。

プラスチックは毎年、3億2000万トン以上生産されている —— 相当量が最終的に海に行き着き、その大半は太平洋ゴミベルトのような海域にたまっているのだ。(中略)

若き起業家ボイヤン・スラット氏が立ち上げたオランダのNPO「オーシャン・クリーンアップ(Ocean Cleanup)」は、一部で異論も出ている手法によって、太平洋ゴミベルトのごみを回収しようとしている。また、ゴミベルトの問題の規模についても研究を進めている。(中略)

彼らが注目したのは、世界に5つある巨大な旋回(環流)の中でも、最も大量のプラスチックごみが潮の流れによって世界中から運ばれてくる海域だ。その大きさは、160万平方キロメートルを超える。(中略)

この結果から、太平洋ゴミベルトには少なくとも1兆8000億個、7万9000トンのプラスチックごみがあると推計した —— プラスチックごみは日々、この瞬間にも増えている。(中略)

しかし、これらの推計も、この海域のプラスチックごみの量を実際より大幅に少なく見積もっている可能性がある。なぜなら、調査は北太平洋旋廻の全体ではなく、その「一画」でのみ実施された。

また、多くの研究者たちは、はるかに大量のマイクロプラスチックのごみが、海中のより深いところにあると考えている。

オーシャン・クリーンアップは、この「一画」にあるプラスチックごみを回収する計画を進めたいと考えている。だが、多くの研究者は、そもそも海にプラスチックごみを捨てるのを止め、海を汚さないことが最善策だと考えている。【4月1日 BUSINESS INSIDER】
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“海にプラスチックごみを捨てるのを止め、海を汚さないことが最善策”であることは間違いありませんが、なかなかそうした取り組みが進まないのであれば、また、すでに深刻な汚染が生じていることから、スラット氏の計画する回収事業は有意義なことでしょう。(5年間で半減できるとか・・・・計画では)

特に、「太平洋ゴミベルト」が存在するということは、考えようによっては非常に好都合な話です。広く海洋に拡散するのでなく、ある地域に自然がごみを集めてくれているのですから、その地域で集中的に回収すれば、非常に効率的に回収が可能になります。(「ゴミベルト」が存在しなければ、広い海洋全体からの回収は不可能でしょう)

各紙が報じているように、上記“若き起業家ボイヤン・スラット氏”(2013年にボイヤン・スラット氏が「オーシャン・クリーンアップ」を立ち上げたのが18歳のとき! すごい行動力です)のプラスチックごみ回収事業がスタートしたとのことです。

****海のプラごみ回収装置、太平洋へ出航 オランダのNPO****
海に漂流するプラスチックごみが世界的に問題になるなか、オランダのNPOが、海のプラごみを回収する装置を開発した。8日、この装置が米西海岸のサンフランシスコから、実験と回収のため太平洋に向けて出航した。漂流プラごみの回収装置は世界で初めてだという。
 
開発したのは、オランダのNPO「オーシャン・クリーンアップ」。「システム001」と名付けられた装置は、全長600メートルのパイプに深さ3メートルの「カーテン」がつけられている。海面にUの字形に浮かべ、海流や波、風の力でプラごみを集める仕掛けだ。GPS(全地球測位システム)やカメラも備えている。
 
サンフランシスコから約445キロの沖合で2週間の試験をしたあと、さらに約2200キロ離れた米西海岸とハワイの間の「太平洋ごみベルト」に向かう。ここは日本の4倍にあたる面積に、1兆8千億個ものプラごみが集積するとされる海域だ。

集めたプラごみは船で回収し、サンフランシスコに陸揚げしたあと、欧州に送り、リサイクルする。回収したプラごみを初めて陸揚げするのは半年後の予定だ。(中略)
 
今後2年間で装置を60個に増やし、5年間でこの海域のプラごみを半分にするという目標を掲げる。
 
当初は長崎県対馬沖で実証試験を行う予定だったが、技術や予算的な制約から断念した。「日本の人たちの支援に感謝している。将来、日本の海域に装置を設置できるようにしたい」と話した。【9月10日 朝日】
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拡大する使い捨てプラスチック製品の使用規制 消極的な日本への批判も
一方、“海にプラスチックごみを捨てるのを止め、海を汚さない”ための規制は、形の上では最近急速に進展しています。

****使い捨てプラ製品規制拡大 世界60カ国超が禁止・課金****
レジ袋や発泡スチロール製食器など、海洋汚染を引き起こす使い捨てプラスチック製品の生産を禁止したり、使用時に課金したりする規制を導入済みの国・地域が、少なくとも67に上るとの調査結果を国連環境計画(UNEP)が30日までにまとめた。

日本はスーパーが個別にレジ袋を有料化する例などがあるが、国として使い捨てプラスチック製品を禁止したり課金したりする規制はない。

今月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)でもプラスチックごみ削減の数値目標を盛り込んだ文書に署名せず、取り組みの遅れが鮮明になっている。【6月30日 共同】
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上記記事以後も、連日のように規制を設ける国・地域のニュースが報じられていますので、上記の“67”という数字はさらに増えているのではないでしょうか。

ニュージーランド プラスチック製レジ袋禁止へ【8月10日 NHK】
仏、来年からリサイクル不可のプラスチック包装材使用に罰金【8月13日 AFP】
<ブルンジ>ポリ袋使用禁止、大統領が署名 20年から施行【8月15日 毎日】

****サンフランシスコ市も禁止条例****
アメリカでは、すでに投棄されたプラスチックごみの回収と合わせて、新たなごみを出さないための対策に関心が高まっていて、小さいためにリサイクルが進まないと指摘されているプラスチック製ストローなどの提供を禁止する動きが広がっています。

カリフォルニア州のサンフランシスコ市では来年7月から、市内の飲食店が使い捨てのプラスチック製のストローやコップ、ふた、フォークなどを客に提供することを禁止するための条例が先月成立しました。

これに先だって同じカリフォルニア州のマリブ市がことしの6月から、ワシントン州のシアトル市が7月から、市内のすべての飲食店で使い捨てのプラスチック製ストローなどの提供を禁止する措置にすでに踏み切っています。

また、アメリカの大手コーヒーチェーンのスターバックスは、2020年までに使い捨てのプラスチック製ストローを全面的に廃止するほか、アメリカのハンバーガーチェーン最大手のマクドナルドも年内にアメリカの一部の店舗で試験的に提供をやめる計画を明らかにしています。【9月10日 NHK】
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こうした流れにあって、日本ではあまり規制は進んでおらず、国際的に批判もあるようです。

****海のプラごみ、日本に批判相次ぐ G7文書に署名拒否****
カナダの先進7カ国首脳会議(G7サミット)で日本と米国が、深刻化する海のプラスチックごみを減らすための数値目標を盛り込んだ文書に署名せず、環境団体から11日、「恥ずべきことだ」などと批判が相次いだ。
 
海洋ごみ問題に取り組む環境団体JEAN代表理事は「海から恩恵を享受している日本は、プラスチックごみ問題に率先して対応する必要がある。長年政府と連携して削減に取り組んできた立場として理解できない」と不満を示した。
 
環境団体グリーンピースは「日米が署名しなかったのは恥ずべきこと。必要なのは業界の自主規制ではなく、使い捨てプラスチックの禁止」との声明を公表した。【6月11日 共同】
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なお、東日本大震災の津波の影響もあって、前出ボイヤン・スラット氏らが試験的に回収したプラスチックごみを解析した結果、全体のおよそ30%が日本からのものだと見られるとの数字も出ています。【9月9日 NHK】

日本の業界では「欧米諸国ではプラスチック製ストローを埋め立てることが多いが、日本では焼却が中心であり、環境悪化につながっていない」という認識もあって、あまり使用規制が進んでいない現状があります。

【“リサイクル”が引き起こした海洋汚染
一方、日本社会で進んでいるのはプラスチックごみのリサイクル。

では、プラスチックごみの“リサイクル”を進めていけば海洋汚染を防げるか・・・と言えば、必ずしもそうならいようです。

むしろこれまでは、欧州や日本で“リサイクル”されたプラスチックごみが中国に輸出され、中国で投棄されていた、中国が輸入禁止した後は、アジアやアフリカなどにごみ輸出が向かい、そこで海洋に投棄される・・・という実態もあるようです。

****世界最大のごみ捨て場」中国の終焉ー日本のプラスチックごみはどこへいく****
(中略)
世界のごみ捨て場
これまで世界では、とりわけ豊かな国が、環境保護の美辞麗句とは裏腹に、貧しい国にごみを持ち出してきた。
 
環境規制の厳しい先進国では、ごみ処分にともなうコストも高くなりやすい。これは安価にごみを引き取り、規制の緩い開発途上国に持ち出して処分する「ごみの輸出」を促す土壌になってきた。

なかでもプラスチックは、多くの素材以上にリサイクルのコストが高くなりやすい。そのため、世界で回収されたプラスチックごみの14パーセントしかリサイクルされていない。

日本の場合、慶応義塾大学の大久保敏弘教授らのチームによると、プラごみだけで年間500億円分以上が輸出されている。

輸出されたプラごみの多くは、その他のごみと同じく、最終的に開発途上国で投棄されることになる。開発途上国の郊外や貧困層の多く暮らす地域では、海外から運び込まれたごみがうず高く積み上がっている光景や、そのなかからまだ使えそうなものを拾い集める人々の姿が珍しくない。

これら世界のごみの多くを引き受けてきたのが中国だ。(中略)

「もうごみは受け入れない」
(中略)「世界のごみ捨て場」をやめるという中国の方針を、国連環境計画(UNEP)は「我々が汚染を打ち負かすのを手助けする」と評価している。その一方で、中国の決定はごみ輸出国に動揺をもたらした。(中略)
 
そのため、中国に代わる「世界のごみ捨て場」として、ヴェトナム、タイ、マレーシアなどのごみ処理場が活況を呈している。
 
しかし、先述のように、東南アジアの多くの国自身が、中国にごみを輸出してきた。そのうえ、これらの国は中国よりはるかに面積が狭い。したがって、これらの国のごみ処理場が遅かれ早かれ一杯になることは、容易に想像できる。
 
だとすれば、各国はこれまで以上にプラごみ削減に取り組まざるを得ない。(後略)【7月16日 六辻彰二氏 YAHOO!ニュース】
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日本社会が積極的に取り組んでいるプラスチックごみ全体のリサイクルについては、上記のような観点から見直す必要もありそうです。

専門家からは、下記のような「リサイクルを廃止すべし」との意見もあるようです。
素人としては、どのように評価すべきかはわかりかねますが、少なくとも単にリサイクルしたから自己満足的によしとするのではなく、最終的にどのように処分されているのかという点を確認することは必要でしょう。

****海を救え。プラスチックのリサイクルは廃止に****
ミッコ・ ポーニオ(フィンランドの公衆衛生の専門家で、ヘルシンキ大学で一般疫学の非常勤教授を務める)
 
表題は、普通の人にとっては変な響きがあるだろうが、世界の「リサイクル」業界が海洋のプラスチックゴミ問題を大きくしてきたことは悲しい事実である。

私が「リサイクル」をカッコ書きにしたのは、消費者から回収されたプラスッチクのうち実際にリサイクルされているのはほんの一部であるからだ。

回収されたものは汚れがあり、また混合物が多すぎるため、例えば食品包装業界が求めるような高水準の原料を製造することは不可能である。

回収されたプラスチックのほとんどは、単に焼却されるか集積されるかで、土地、河川、そして海に直接投棄されることさえある。(中略)

本当に海を救うことを大事に思うなら、プラスチックや紙のリサイクルは廃止するべきである。焼却処理というわかりやすくて妥当な代替策もある。(後略)

・・・・・解説:国際環境経済研究所 理事長 小谷勝彦・・・・
EUは海洋プラスチック問題に対処すべく、「プラスチック戦略」として、プラスチック・ストローの使用禁止や廃プラのリサイクルを強化しようとしているが、フィンランドの公衆衛生学者Dr.Mikko Paunioが、6月28日、Global Warming Policy Foundation(GWPF)に掲載した論文を紹介した。

「海洋プラスチック汚染の75%は中国等における不法投棄であるが、25%はヨーロッパからリサイクル目的で中国に輸出され、処理できないものが河川、海洋に流れたものである。(中略)

中国政府は、今年1月、廃プラの輸入禁止を実施したが、行き場を失った廃プラは環境規制が緩やかなアジア諸国に流れ込み、かえって海洋汚染を悪化させる。
 
EUの廃プラスチック・リサイクルは、商流として中国等で最終処理を行うシステムであり、今後、EUがリサイクルを強化するということは、再利用できない廃プラの海洋投棄が増大する。」と警告している。

廃プラの処理には、Landfills(埋立)、Recycling(リサイクル)、Incineration(焼却)があるが、環境NPOやブラッセルのEU官僚たちは、Incineration(焼却)を、ダイオキシンなどの大気汚染に加えて、焼却のために燃料を使用することから温暖化面から敵視してきた。

同様に、Landfills(埋立)も温室効果ガスであるメタンを発生することから嫌われており、Recycling(リサイクル)が最も好ましいとしてきた。
 
ところが、2015年までの廃プラの累積処理は、79%がLandfills(埋立)、Incineration(焼却)は12%に対し、Recyclingは9%にとどまっているのが実態である。

現在、高温焼却法の確立でダイオキシン除去は技術的に克服され、燃えにくい生ごみも廃プラを燃料として使うことで、LNGや石炭の使用削減につながることからIncineration(焼却)は実績を上げてきている。さらに焼却灰も溶融化することでLandfills(埋立)での汚染も無くなりつつある。

Dr.Mikko Paunioは、「EU域外への廃プラ輸出を禁止するとともに、温暖化の観点からも問題がないIncineration(焼却)を増やすべき」と主張している。

今後、日本国内でも海洋プラスチック問題が議論されるが、我が国は市民の分別回収の努力に支えられた廃プラの国内法制度を整備してきた。

ところが、現実には、廃プラが有価物として中国に輸出されており、今回の中国政府の輸入禁止で、国内での処理の議論が起こってくるだろう。
 
日本の識者の皆さんに、「EU起因で起こっている海洋プラスチック汚染」の現実を示し、情緒的ではなく冷静な議論を期待する。【7月20日 国際環境経済研究所 理事長 小谷勝彦】
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個人的には、パラノイア的なゴミ分別にはいささか辟易しているので、焼却で問題ないなら焼却で・・・と思ってしまうのですが。

なお、アジア・アフリカのゴミ回収システムが不十分な地域では、ストロー・レジ袋などのプラスチック製品の使用を厳しく制約すべきでしょう。
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