goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ  謀略渦巻くなかで和平に進展なし 大統領選への好位置につけるティモシェンコ氏

2018-09-02 22:15:42 | 欧州情勢

(ユリア・ティモシェンコ氏(同氏の公式サイト  https://www.tymoshenko.ua/ より)【8月17日  藤森 信吉氏 JB Press】

上記記事に“ティモシェンコはかれこれ20年間、政治的立ち位置とともにヘアースタイルを変えながら・・・”とありますが、例のトレードマークだった三つ編みは止めたのでしょうか?

そのあたりを云々するとセクハラ発言になりますし、ましてや「さすがの“美しすぎる政治家”も拘留生活と寄る年波で・・・・」なんて論外です。)

選挙を控えて、真相はやぶの中
ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力の指導者が爆殺され、対立するウクライナ政府が関与したのか、ロシアが見放して“首のすげ替え”をはかったのか・・・・いろいろな憶測が飛び交っています。

****ウクライナ親露派指導者が死亡…両陣営、非難の応酬 戦闘激化の懸念****
ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」が首都と定めるドネツク中心部のカフェで8月31日、爆発が起き、指導者で首長のザハルチェンコ氏(42)が死亡した。タス通信が伝えた。

「人民共和国」当局や支援するロシア政府は、ウクライナ政府が関与したテロ行為として非難。

一方、ウクライナ側は関与を否定した。同氏の死亡により、同地域で続くウクライナ政府軍と親露派勢力の戦闘がより激化する恐れがある。
 
インタファクス通信によると、「人民共和国」当局者は31日、爆発で同氏の側近らを含む11人が死傷したと明らかにした。さらに「拘束した容疑者らは、ウクライナ政府による関与を認めた」などと説明した。
 
プーチン大統領は哀悼の意を示すとともに、「この地域の安全を揺るがす卑劣な犯罪だ」と批判。ロシア外務省のザハロワ報道官は「ウクライナ政府の関与はほぼ疑いようがない」などと述べた。
 
これに対し、ウクライナ政府側は「ロシア政府の主張は事実ではない。ザハルチェンコ氏の殺害は、『人民共和国』側とロシア側支援者の間での内部抗争によるものだ」と主張した。
 
実際、「人民共和国」では今秋に首長を決める選挙があり、ウクライナも来年3月に大統領選を控えている。

ロシア側は、ウクライナに対して強硬姿勢を取り続けるザハルチェンコ氏を「人民共和国」の指導者から外し、新たに選出されるウクライナ大統領とより協調的な対話ができる指導者を誕生させようとしている−との観測も出ていた。
 
「人民共和国」は2014年、ドネツクの州庁舎を占拠した親露派集団が一方的に樹立を宣言。その後、ザハルチェンコ氏が指導者に就任した。【9月1日 産経】
*********************

「人民共和国」もウクライナも選挙を控えて、何が起きても不思議ではない状況ですし、ウクライナにしても武装勢力にしても、あるいはロシアにしても何でもやりかねないところがありますので、真相はやぶの中です。

ウクライナでは、反ロシア政府派のロシア人ジャーナリストが暗殺された・・・・という事件を、ウクライナ当局がおとり捜査のために偽装して発表するという出来事もありました。

****暗殺偽装のロシア人記者、実際に暗殺計画あった ウクライナ人の男に禁錮刑****
ウクライナ治安当局のおとり捜査で自身の殺害を偽装して世界を驚かせたロシア人ジャーナリスト、アルカディ・バブチェンコ氏をめぐり、実際に同氏の暗殺を計画したとして逮捕・起訴されていた男に禁錮4年6月の判決が言い渡された。ウクライナの治安当局が1日、明らかにした。
 
今年5月、ウクライナ当局は反ロシア政府派のバブチェンコ氏が自宅で暗殺者に銃で撃たれ殺害されたと発表。

ロシアとウクライナ双方に衝撃が走ったが、翌日の記者会見にはバブチェンコ氏本人が登場。世界を驚かせると同時にジャーナリストや報道の自由を支持する団体からは非難の声も上がった。

バブチェンコ氏の暗殺を偽装したウクライナ当局は激しい批判を浴びたが、偽装は実際に暗殺を阻止する唯一の手段だったと主張していた。(後略)【9月2日 AFP】
*********************

進展が見られない和平交渉
今回の爆殺にしても、5月の暗殺偽装にしても、こういう訳のわからない話はともかく、肝心の和平交渉はどうなっているのか・・・・というのが本筋の話ですが、ほとんど進展していないように見受けられます。

7月16日にのフィンランドの首都ヘルシンキで開催された米ロ首脳会談では、プーチン大統領から東部での住民投票実施の提案があり、トランプ大統領は「考える時間が欲しい」との対応だったとも。

****プーチン氏、ウクライナ問題解決の「具体案」トランプ氏に提示 ロシア大使****
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、米国のドナルド・トランプ大統領にウクライナ問題解決の具体案を提示していたことが明らかになった。

プーチン大統領がウクライナ東部での住民投票の実施を示唆したとの報道が出た後、ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使が20日、明らかにした。
 
アントノフ大使は、モスクワで開催された専門家や記者との会合では詳細に関する言及を避けた。
 
アントノフ氏のコメントに先立ち、米ブルームバーグ・ニュースは19日、プーチン大統領がフィンランドの首都ヘルシンキで開催された米ロ首脳会談で、親ロシア派が支配するウクライナ東部ドネツクとルガンスクにおける住民投票の実施を求めたと報道。

プーチン大統領が同日開催したロシア外交官らとの密室会談の参加者とされる人物の発言を引用し、トランプ大統領はプーチン大統領に対し、考える時間が欲しいので、住民投票案を発表するのは待ってほしいと頼んだと伝えた。

しかしアントノフ大使は、プーチン・トランプ両大統領はヘルシンキでの首脳会談では一切密約を結んでいないと主張している。
 
一方、米国務省のヘザー・ナウアート報道官はツイッターに、「トランプ政権としては、ウクライナ東部における住民投票を支持することは考えていないことを明らかにしておきたい。『住民投票』は無効である。ウクライナのドンバス地方の紛争解決に向けて、わが国は引き続きミンスク合意を支持していく」と投稿した。
 
欧米諸国がさまざまな危機をめぐって対立する中で半ば忘れられているウクライナ紛争では、これまでに1万人以上が死亡し、今も毎日のように親ロ派とウクライナ軍が戦闘を繰り広げている。
 
ミンスク合意は2015年、フランスやドイツの仲介でウクライナ政府と同国内の親ロシア派の間で結ばれた停戦合意を指すが、ほとんど順守されておらず、和平プロセスは実質的に頓挫している。【7月21日 AFP】
*******************

ロシアが力づくで侵略したロシア系住民が多い東ウクライナの帰属・地位に関する問題を住民投票で決めるというのは、ウクライナ政府にとっては考える余地のない“悪質な提案”でしょうが、トランプ大統領にとってはそうでもないようです。

いずれにしても、トランプ大統領のロシア疑惑が決着していない状況では、トランプ大統領としてもロシアと協調することは難しいでしょう。

ティモシェンコ元首相 3度目の挑戦で大統領職をつかめるか?】
ウクライナ東部の状況が進展しないなかで、汚職が蔓延し、経済問題でも活路が見いだせないポロシェンコ大統領のポロシェンコ人気は落ち込んでいます。

そうした政治状況で、再び人気を集めているのが、ロシアとのガス契約に関する職権乱用事件で逮捕されたティモシェンコ首相で、3度目の挑戦となる次期大統領に向けて、ポロシェンコ大統領の倍ほどの支持率を集める好位置につけているとか。

****ユリア・ティモシェンコ3度目の挑戦****
ウクライナ大統領選挙が来年3月31日に迫るなか、「美しすぎる政治家」ユリア・ティモシェンコが支持率トップを独走している。

世論調査におけるティモシェンコ人気は安定して推移しており、大統領選の決選投票進出が濃厚である。
 
一方で再選を目指す現職ポロシェンコは今年に入り支持率が急落している。ティモシェンコにダブルスコアを付けられ苦戦中である。

大統領選挙における投票先(%)

(出所) 世論調査機関レイティング・グループ http://ratinggroup.ua

ティモシェンコ人気
「オレンジ革命」(2004年)の立役者の一人で、「美しすぎる首相」として我が国でも有名になったユリア・ティモシェンコは、これまで、2度、大統領選挙に挑み、どちらも得票率2位で敗れている。
 
2009~2010年大統領選挙では決選投票に進むもヤヌコヴィッチに惜敗、マイダン革命後の2014年大統領選挙では得票率12.8%で得票率54.7%のポロシェンコに第1回投票での当選を許した。
 
しかし、ドンバス内戦と経済危機が長期化するなか、ティモシェンコは有権者の不満を吸収して支持率を回復、今日、3度目の大統領選出馬を表明するに至っている。
 「
ウクライナにとって最重要な問題は何か(最大3つまで、レイティング・グループによる2018年7月調査)」

・ウクライナ東部の軍事紛争 62%
・賄賂・汚職 39%
・賃金・年金支給額の低さ 34%
・就職口の少なさ、失業 33%
・公共料金の値上げ 24%
「あなた個人にとって最重要な問題は何か(同上)」
・賃金・年金支給額の低さ 47%
・公共料金の値上げ 41%
・ウクライナ東部の軍事紛争 34%
・物価上昇 29%
・賄賂・汚職 24%
・就職口の少なさ、失業 19%

現大統領のポロシェンコは「マイダン革命(「尊厳の革命」)によって、ウクライナ国民は、自由と民主主義とヨーロッパ化を選択した」と自画自賛しているが、上記の世論調査結果を見る限り、国民は、緩慢な経済回復と内戦に不満を抱いている。
 
「革命最大の成果は、EUとのビザなし渡航体制発足によるEU圏への出稼ぎ労働増」という笑えない話すらある。

世論の4分の3は「ウクライナは正しくない方向に進んでいる」と見なしているように、現状は現職に不利に働いている。
 
とはいえ、すべての責任をポロシェンコに帰すのはやや酷であろう。
 
内戦長期化はロシアの干渉によるもので、電気・ガスなどの公共料金の値上げについても歴代政権が放置してきたツケをまわされたようなものだ。
 
ようやく「革命」後、国際通貨基金(IMF)の要求で、輸入エネルギー価格に見合う公共料金の引き上げが段階的に実施されているところだ。
 
しかし、平均的な家計にとって値上げは既に限界に達しており、3月に行われるはずだったガス料金引き上げは延期を重ねている。(中略)

公共料金の値上げは、政権支持率を著しく落とすことになる。

その一方で、改革の不徹底のいくつかは、ポロシェンコの責任といっていいだろう。有力財閥(オリガルヒ)の利権は維持され、彼らの事業に有利な法律や規制が新たに採用されたりしている。
 
また現役閣僚や政治家、高級官僚の蓄財ぶりや汚職、オリガルヒとの癒着ぶりも相変わらず報道されている。
 
ポロシェンコが「パナマ文書」に登場したことは記憶に新しいところだ。ポロシェンコ自身、ウクライナ有数の資産家であり続けている。

ポロシェンコ大統領の巻き返しはあるのか
これまでのウクライナ政治のパターンを振り返ると、現職が利用可能な資源を総動員して投票日前までに支持率を回復した例は多い。
 
その過程で「お友達」新興財閥(オリガルヒ)や地方ボスの資金・動員力や傘下メディアの力に頼ることになり、汚職対策や改革は途中で頓挫することになる。また、有権者の歓心を買うため公共料金も据え置かれたのは前述した通りである。
 
今日、このような選挙対策に国際的な批判が向けられている。
 
7月に行われたEU-ウクライナ・サミットでは共同宣言内で「選挙前の期間を含めて、改革のペースは維持されねばならない」と釘を差された。
 
IMFはガス料金値上げがない限り新たな融資を行わないと明言しており、欧米諸国も、汚職対策法内の骨抜き条項の削除をポロシェンコ政権に求めている。

現政権は、ヨーロッパ化を国是としているため、このような要求を無視できない。
 
ヤヌコヴィッチ前大統領はIMFの融資条件を蹴ってロシアの援助に走ったが、現政権がロシアの財政支援に頼ることは有り得ない。
 
欧米は、ウクライナに他の選択肢がないことを理解しているため、政治的配慮なしに圧力をかけられるわけだ。
 
現政権の今一つの選挙対策はナショナリズムによる動員である。

ポロシェンコは、分裂状態にあるウクライナ正教会の一派であるキエフ主教座と親密な関係にあり、キエフ主教座を中心としたウクライナ正教会の統一を画策している。
 
国家に接近して「国教」に近い立場を狙うキエフ主教座と、選挙アピールの材料が欲しい現職との利害が一致している形だ。
 
いずれにせよ、ロシアとの事実上の戦争状態の中で国内世論の過半が「ヨーロッパ路線」、「EU・NATO(北大西洋条約機構)加盟」を支持している以上、単なる「ヨーロッパ化」「EU・NATO」を主張するだけではティモシェンコを筆頭とする他の候補者との差別化は計れない。
 
有権者の支持をさらに獲得するには、これまでとは異次元な方法でナショナリズムに訴えるしかないが、逆にウクライナ東部・南部の有権者の支持を失うことにもなる。
 
ドンバスの一部およびクリミア半島の有権者がウクライナ政治から消えたとはいえ、ハリコフ、ドニプロ(旧ドニプロペトロフスク)、オデッサなどの百万都市を抱える地域は軽視できない。
 
逆にティモシェンコは東部・南部でも高い支持率を得ており、ナショナリズムを控えてオリガルヒ批判を前面に押し出す作戦が今のところ功を奏しているとみることができる。

「美しすぎる」大統領の誕生?
ティモシェンコと現職ポロシェンコが決選投票に進んだ場合、ティモシェンコを警戒する有権者が現職の安定感に流れ、またオリガルヒや地方ボスの支援・動員を取りつけてポロシェンコが再選する、とみられていた。
 
しかし、複数の世論調査結果はいずれもポロシェンコの支持率が5位前後に低迷していることを示しており、この予測は怪しくなってきた。
 
仮にポロシェンコが何とか決選投票に辿り着けたとしても、ティモシェンコよりアンチ率が高いため一騎打ちでも不利、ということになる。
 
こうなると、欧米の批判を覚悟したうえで、大統領陣営がなりふり構わぬ動員に出ることは十分に予想される。
 
ティモシェンコは強引な政治手法で敵が多い政治家である。副首相時代、経済界の利益を無視した改革を強行し業界を大混乱に陥れ、汚職の嫌疑で逮捕・失脚させられた。(中略)
 
思えば、ティモシェンコはかれこれ20年間、政治的立ち位置とともにヘアースタイルを変えながらウクライナ政界の最前線で活動し続けている。還暦を再来年に控えたティモシェンコ、3度目の正直となるか。【8月17日  藤森 信吉氏 JB Press】
********************

上記グラフを見ると、ティモシェンコの人気が上がったということではなく、ポロシェンコの人気が激減したというのが実態のようです。

“有権者の支持をさらに獲得するには、これまでとは異次元な方法でナショナリズムに訴えるしかない”という結果が、冒頭の爆殺事件でなければいいのですが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする