孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本、世界第4位の移民大国へ 「新たな在留資格」で拡大する外国人労働者 「共生」に向けた課題も

2018-09-23 22:06:30 | 難民・移民

(ベトナムから来日したばかりの実習生。日本語などの研修会の合間に、友だちと持ち寄った弁当を囲む=大阪市中央区【9月2日 朝日】 日本が国際社会・アジア世界で重きをなそうというのであれば、日本に期待して来日した彼らの笑顔が消えることのないような社会環境を作ることが不可欠な第一歩でしょう)

外国人急増で日本社会の風景を変える大きな政策転換となる可能性も 拙速だとの指摘も
日本で働く外国人労働者や日本を訪れる外国人観光客が急増しているというのは今更の話ですが、私のように鹿児島の田舎町に住んでいると、さほど実感する機会も少ないのが実情です。

せいぜい、鹿児島市に出かけた際に、「ああ、なるほど中国系観光客が多いね・・・」と感じるぐらいです。

ただ、たまに東京などに出かけると、ファストフード店では働いているのも外国人なら客も外国人・・・・といった光景を目にして、「そういうことね・・・」とも思ったりもします。

そういう状況にあっても、日本は“外国人に門を閉ざしている”という従来からのイメージ(それは現在でもある面では事実ですが)がありますので、下記のような“日本は世界第4位の移民大国だ”という記事を見ると、ちょっと驚きます。

****日本で暮らす外国人が増加、移民流入4位に上昇****
2018年9月5日、華字紙・日本新華僑報は、「日本は世界4位の移民国家に上昇した」とする記事を掲載した。以下はその概要。

外国人の優秀な人材パワーの助けを借りて日本の技術面の起業力を上げ、国際競争力を強化しようと、日本政府は近年、外国人留学生枠を拡大し、外国人の在留資格の制限を緩和している。さらに、日本に定住する外国人への優待措置を立法化し、多文化を尊重した活力ある共生社会を目指している。

経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者統計によると、2015年の日本への流入者は約39万人で、世界で4番目の移民大国へと上昇している。

日本への移住者は「有効なビザを保有し、90日以上在留予定の外国人」を計上しているという。トップ10は、ドイツ(約201万6000人)、米国(約105万1000人)、英国(約47万9000人)、日本(約39万1000人)、韓国(約37万3000人)、スペイン(約29万1000人)、カナダ(約27万2000人)、フランス(約25万3000人)、イタリア(約25万人)、オーストラリア(約22万4000人)となっている。

日本は10、11年の7位から12〜14年に5位、15年は4位と徐々に上昇している。15年の日本への移住者を国・地域別で見ると、最も多いのが中国で、以下、ベトナム、フィリピン、韓国、米国、タイ、インドネシア、ネパールと続く。(後略)【9月6日 レコードチャイナ】
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上記は2015年の数字ですから、現在ではイギリスを抜いて第3位にも上昇しているかも。(イギリスはEU離脱騒動で、むしろ減少傾向ではないでしょうか)

6月に安倍首相が外国人労働者の受け入れを拡大していく意向を示し、外国人労働者の増加を見据え、法務省も入国在留管理庁の設置に向けて動いている・・・という状況で、この外国人労働者の増加傾向はさらに加速することが予測されています。

****<外国人労働者の新在留資格>****
政権が想定している在留資格は、一定の技術水準と日本語能力を身につけた外国人を対象に、最長で5年の在留を認める内容。

業種を所管する省庁が定めた試験で一定の知識や技術を確かめるほか、必要な日本語能力も調べる。技能実習生の場合は3年の経験があれば試験を免除する。

新たな在留資格では家族は帯同できないが、滞在中により高い専門性が確認されれば、長期滞在や、家族帯同も認められる可能性がある。【8月14日 朝日】
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****働く外国人、拡大へ一気 「移民はだめだが」最長5年の在留資格****
外国人労働者の受け入れ拡大に向け、安倍政権が新たな在留資格の創設へ動き出した。人手不足に悩む業界や中小企業からの要望が、受け入れ拡大に消極的だった政権の背中を押した。

働く外国人が急増し、日本社会の風景を変える大きな政策転換となる可能性がある。期待感が広がる一方、対象拡大は拙速だとの指摘も多い。

 ■菅長官が主導
政権の方針転換を主導したのは、急激に進む人手不足に危機感を抱いた菅義偉官房長官だった。
「介護施設を開設しても介護福祉士不足で使えない。なんとかしてほしい」
 
昨秋、菅氏の元に民間の介護事業者からこんな声が寄せられた。調査を指示すると、介護施設が人材不足で定員の8割程度までしか受け入れられないという結果が出た。厚生労働省の需給推計では、2025年度には、介護人材は約34万人不足すると見込む。
 
少子高齢化も踏まえ、早期に対策を講じた方がいい――。菅氏が安倍晋三首相に掛け合うと、首相は「移民政策はだめだけど」と釘を刺しつつ、「必要なものはやっていこう」と応じた。

 ■政権やむなく
(中略)内閣支持率を底支えする経済を腰折れさせないためには、外国人労働者の受け入れ拡大はやむを得ないとして政権は一気に推し進め、6月の「骨太の方針」には新たな在留資格を設ける構想が入った。
 
政権は来年4月の制度開始を目指し、秋の臨時国会に関連法案を出す方針。新たな在留資格の対象業種は建設業や農業など、単純労働を含む分野にも広がる見通しだ。

厚労省は単純労働への外国人受け入れに消極的だったが、同省幹部は「大きな流れの中で異論が言える状況ではなかった」と振り返る。

 ■すでに不可欠
一方、日本社会は既に、外国人労働者なしでは成り立たなくなっている。厚労省の統計では、17年に日本で働く外国人は過去最高の約127万9千人。5年間で約60万人増え、日本の就業者の約2%にあたる。

もっとも、正式に労働者として受け入れられたのは高度な専門人材とされる約24万人のみ。その他は留学生のアルバイト(約26万人)や「国際貢献」を名目にした技能実習生(約26万人)らが多くを占める。
 
特に技能実習制度は格安な労働力の確保策になっているとの指摘が絶えず、違法な長時間労働などの不正が社会問題化している。16年に成立し、昨秋施行された技能実習適正化法では制度の期間や対象職種を拡大し、受け入れ先への監督を強化させたばかりだ。

 ■課題置き去り
その課題の検証もできないまま、新しい在留資格は「導入ありき」で進む。

政権は外国人人口の増加に伴って在留管理を強化するため、法務省の入国管理局を「庁」に格上げすることや、外国人支援策の強化も検討しているが、来春までの準備期間は半年余りしかない。(中略)

 ■業界も動き急 製造・小売り・外食
(中略)「骨太の方針」は、生産性向上や国内人材の確保の取り組みをしてもなお、外国人材の受け入れが必要と認められる業種が新たな在留資格の対象になるとの「考え方」は示しているが、具体的な対象業種は明記していない。

 ■説明あいまい
「外国人技能実習制度とどう違うのか」「求められる技術レベルや日本語能力の水準は」。説明会では、制度の仕組みの説明を求める質問が出た。

経産省の担当者は「法務省から中身の説明がまだない」「(骨太に)書いてある以上のことは分からない」などとあいまいな答えに終始する一方、「要件さえ満たせば製造業も対象になる」と力説した。前のめりな経産省にせかされるように、人手不足に悩む業界は対象業種に加えてもらおうと慌ただしく動き出している。(中略)
 
 ■拡大ありきで
外国人なしでは営業が難しい小売り・外食業界の関心も高い。コンビニ各社が加盟する日本フランチャイズチェーン協会は、技能実習制度の対象職種にコンビニの運営業務を加えるよう求める申請を検討してきた。

ローソンの竹増貞信社長は「人手不足なので、きちんとしたルールができ、受け入れ側も順守する形で新たな制度を活用できればいい」と新たな在留資格に期待をにじませる。

外食企業でつくる日本フードサービス協会も、新たな在留資格の対象に加えるよう政府に要請していく方針だ。受け入れ拡大ありきの動きが広がっている。【同上】
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コンビニや外食産業が新たな在留資格に期待しているのは上記のとおり。

****コンビニも対象業種に? 外国人受け入れ拡大、新たな在留資格 業界団体、国に要望検討****
(中略)日本のコンビニで働く外国人労働者は、大手3社だけで5万人を超える。大手3社の従業員全体の6%強にあたり、全国のチェーン店の運営に不可欠な存在になっているが、「大半が留学生」(大手コンビニ関係者)で、原則として週28時間までしか働けない。(中略)
 
(日本フランチャイズチェーン協会会長の)中山氏は会見で「外国人留学生が働きやすい環境整備が必要。フランチャイズシステムは研修の場所として優れた経験を積める」とも述べ、留学生がより柔軟にコンビニで働けるよう要望していく考えも示した。
 
政権が想定している新たな在留資格は、一定の技術水準と日本語能力を身につけた外国人を対象に最長で5年の在留を認める内容。人手不足に悩む業界や中小企業からの要望が、外国人労働者の受け入れ拡大に消極的だった政権の背中を押した。

今秋の臨時国会に関連法案が提出され、対象業種は省令で定めることになりそうで、建設業や農業など、単純労働を含む分野にも広がる見通しだ。

 ■「不景気、考えているか」
ただ、格安な労働力の確保策になっているとの批判が絶えない技能実習制度の課題の検証も十分にできないまま、新たな在留資格は「創設ありき」で進んでおり、拙速な外国人の受け入れ拡大を懸念する声も出ている。

BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「外国人労働者が増えると賃金は上がらないだろう。企業にとっては安い労働力が入るメリットがあるが、景気が悪くなった時のことも考えているのか。人手不足を理由に拙速に物事を決めているのではないか」と指摘する。(後略)【9月20日 朝日】
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「技能」という建前と「単純労働力」という実態の乖離がもたらしている、“奴隷労働”とか“逃亡、その後の違法在留・犯罪”といった技能実習制度の問題はここではパスします。

“「技能」に縛られた実習生という立場は、人手不足の業界にとっては助かるが、出稼ぎ労働者に近いのが実態の実習生たちは職場に不満があっても働くしかない。そこにトラブルが起きやすい構図が生まれる。”【9月2日 朝日】

同じ過ちを繰り返すことがないように期待します。

また、外国人労働者の増加にともなって「見えない子供たち」の問題も生じています。

“政府の統計をみると、国内には、学校に通っていない外国籍の6~17歳の子どもが最大で約7万人いる。どこで何をしているのか、実態は知られていない。”【9月4日 朝日】

いつも言うように、受け入れる以上は「共生」に向けた本腰を入れた取り組み・対応がないと、「外国人が増えたせいで・・・」といった排外的感情を増長させることになったり、受け入れた外国人に惨めな思いをさせたり、日本社会・外国人の双方に悪い結果をもたらします。

産業界が外国人労働力を求めているのは欧米も同じです。
難民問題で大きく揺れるドイツでも・・・

****政府、難民申請者認める新法検討****
「少子化と労働者不足に対応するために新たな移民法の制定を要求する」
 
独アウトドア用品大手「ファウデ」のアンツィエ・フォンデービッツ社長は昨年9月、メルケル首相あてに、こんな手紙をしたためた。求めたのは、すでに就労した難民希望者に滞在許可を与えることだ。
 
同社でも12人の難民希望者が縫製作業に従事しているが、6人が認定されなかった。住居を探したり、ドイツ語を教えたりと生活基盤のために様々な投資をしてきた。「人道的な理由だけでなく、経済的にも彼らを失うのは大きな損失だ」と同社のリザ・フィードラーさん(31)は話す。
 
同社発の運動の輪は瞬く間に広がり、110社が名を連ねて有力政治家への働きかけを強めている。そこで労働社会省は、就労意思のある難民申請者に広く滞在を認める新法の検討を始めた。内務省が反対していて予断を許さないが、年内にも結論を出す予定だ。
 
ドイツは戦後の高度成長期、トルコなどと二国間協定を結び、多くの労働者を受け入れた。移民系と呼ばれる人々の割合は全人口の約24%に達する。【9月6日 朝日】
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アメリカでも産業界は移民労働力を求めていますが、トランプ大統領がまったく別の視点から受け入れを拒んでいるのは周知のところです。

増加する不法滞在者の長期収容 全く許可が出なくなった在留許可
日本も労働力は欲しいけど移民はダメ・・・という立場で、その点では難民・移民への門戸は依然として厳しいものがあります。

そうしたなかで、不法滞在者の扱いが問題にもなっています。

****不法滞在の外国人、収容が長期化 半年以上が700人超****
ビザの有効期限を過ぎても日本にとどまるなどして不法滞在となり、法務省の施設に長期収容される外国人が増えている。

母国への強制送還が困難な人がいることや、法務省が施設外での生活を認める「仮放免」の審査を厳しくしたことなどが理由で、今年7月末の時点では収容期間が6カ月以上の人が700人を超えた。

収容者の自殺や自殺未遂も起きているが、法務省は抜本的な解決策を見いだせずにいる。

「インド戻れば殺される」入管に長期収容、命絶った男性
法務省によると、在留資格を持たない不法滞在者の収容施設は全国に17カ所あり、2017年は1万8633人が新たに収容された。本人が同意すれば送還の手続きが進むが、拒否をしたり、母国が旅券の発給を拒んだりすると出口が見えなくなる。
 
16年末に収容されていた1133人中、6カ月以上の「長期収容者」は313人(約28%)だったが、17年末は1351人中576人(約43%)と人数、割合がともに増加。今年に入ってからも急増し、7月末時点で1309人中709人(約54%)だった。収容が5年を超える人もいる。
 
同省入国管理局の君塚宏警備課長によると、収容の長期化が進んだきっかけのひとつは、東京入国管理局が10年に強制送還しようとしたガーナ国籍の男性(当時45)が飛行機の中で死亡したこと。

男性を「猿ぐつわ」や結束バンドで拘束し、前かがみの姿勢を取らせていたことが問題となり、3年弱は強制送還がなされず、再開後は帰国を拒否する収容者が増えたという。また、難民申請中は強制送還されないことが知られ、申請する収容者も多くなった。
 
人道的な理由から施設外での生活を認める仮放免の対象者の減少も影響している。人数が増え、刑事事件に関与する仮放免者も出たことなどから、法務省は15年から審査を厳格化。同年末は3606人に認めていたが、17年末は3106人にとどまった。
 
収容の長期化に伴い、自殺者も出ている。茨城県牛久市郊外にある東日本入国管理センターでは今年4月、約9カ月間収容されていたインド人男性(当時31)がシャワー室で首をつって自殺。5月にも自殺未遂者が相次いだ。
 
君塚課長は「長期収容を減らす最も効果的な対応策は強制送還だ」と語るが、すぐに収容の長期化を解消する手段はないという。「現状を変えるのであれば、国民的な議論を進め、在留資格を拡大するしかないのではないか」と話す。【9月23日 朝日】
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****得られない在留許可「異常な事態****
現在、長期収容者の6割以上は難民申請中だ。難民は条約で「人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがある人」と定義されている。

日本も条約に加入しているが、運用は厳格で、昨年は1万9628人が難民申請をしたのに対し、認められたのは20人だけだった。「人道的な配慮」で特別に在留が許可されたのも45人だった。
 
難民とは別に、家族状況や素行などを考慮し、法相が裁量で決める「在留特別許可」もある。外国人問題に詳しい指宿昭一弁護士は、長期収容者の状況を精査すれば、この対象になる人が多い可能性があると指摘する。

ただ、ここ数年は日本人の配偶者や子どもがいても、許可が出ないケースが相次いでいるという。
 
法務省の担当者は「在留特別許可はガイドラインにのっとっており、厳しくも甘くもしていない」と話すが、17年に許可を得たのは1255人で、12年の2割程度。現在、在留資格のない約50人を担当しているという指宿弁護士は「多くが従前なら認められていたが、全く許可が出なくなっている。異常な事態だ」と語った。【9月23日 朝日】
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相手は同じ人間です。法律を正しく運用しているだけ・・・では済まない問題もあります。
この話に関しては論じるべき問題は多々ありますが、それはまた別機会に。
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