孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ経済  景気回復に遅れ

2010-12-04 21:15:38 | 国際情勢

(8月6日 シカゴ金融街で行われた雇用を求めるデモンストレーション “flickr”より By ProgressIL
http://www.flickr.com/photos/progressil/4866865432/ )

中国などの新興国が急速に台頭してきている今も、アメリカ経済が世界経済の中心にあることは変わりありません。日本を含めた世界の国々の動向は、そのアメリカ経済の緊密に動きにつながっています。
アメリカ経済の立ち直りの遅れが、先の中間選挙での与党敗北の最大の原因であり、オバマ政権を苦しい立場に追いやっていることは周知のところです。

【「4人に1人の子供が空腹に直面している」】
今日、「4人に1人の子供が空腹に直面している」・・・という記事を見て、アフリカかどこかの話かと一瞬思ったのですが、驚いたことにアメリカの話でした。
****子供4人に1人、十分な食事なく 米、景気低迷長期化で****
米国で、「4人に1人の子供が空腹に直面している」という米農務省の報告書が波紋を呼んでいる。景気低迷の長期化を背景に、子供に十分な食事を与えることができない家庭が増えているためという。
農務省が先月発表した報告書によると、所得不足で食事を欠いたり、公的な食糧支援を求めたりしたことのある世帯は昨年約1740万世帯(全米世帯数の14・7%)に上った。
景気後退前の2006年と比べ30%も増えており、「雇用問題など国の経済状況を反映している」(コンカノン農務次官)といえる。
こうした食事を十分に提供できない「食糧不安定」な家庭に暮らす子供は約1720万人。17歳以下の子供の約23%、およそ4人に1人にのぼる。
不安定な食生活は、子供が将来、退学したり、犯罪者に転落したりする要因になるとの指摘もある。

一方で、「政治的効果を狙い数字は誇張されている」と米シンクタンク、ヘリテージ財団のロバート・レクター氏は米NPRラジオに語った。政府が、議会で審議中の無料給食の拡大など子供向け栄養計画法案の後押しを狙ったという。【12月4日 産経】
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「政治的効果を狙い数字は誇張されている」のかもしれませんし、たとえ好況時であってもこうした数字をとればあまり大差のない結果がでるのかも、あるいは日本でも同様なのかもしれません。
ですから、数字そのものに過剰に反応するのも間違いかもしれませんが、こういう数字が発表されること自体がアメリカの経済状況をある意味で反映しているようにも思えます。

失業率:7カ月ぶりの高い水準
失業率のほうも芳しくないようです。
****米国:失業率9.8%に悪化 11月****
米労働省が3日発表した11月の雇用統計(速報値)によると、失業率が9.8%と前月比で0.2ポイント悪化し、4月(9.9%)以来7カ月ぶりの高い水準となった。失業率の悪化は3カ月ぶりで、米雇用改善の遅れを改めて裏付けた。景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数も、市場予想(14万人増)を大幅に下回り、季節調整済みで前月比3万9000人増と、前月の17万2000人増から増加幅が大きく縮小した。雇用市場の強さを示す指標となる民間部門の就業者数も5万人増にとどまった。
市場では、株価の上昇や年末商戦の好調な滑り出しなどを受けて、米景気の先行きへの楽観論が広がっていたが、雇用回復の遅れが裏付けられたことで、米景気の先行きへの懸念が再燃する可能性も出てきた。
同日朝のニューヨーク市場では、米雇用統計の悪化を受けてドルが売られ、円相場は一時、前日午後5時比で1円超も上昇し、1ドル=82円台後半で取引されている。【12月3日 毎日】
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アメリカの失業率が0.2ポイント悪化すれば、円が1円以上上昇し、日本の輸出産業は大きな影響を受ける・・・というのが経済的つながりの一例です。

難航する財政再建策
ところで、経済の立ち直りが遅れるアメリカですが、他の国々同様に、もうひとつ、財政問題も抱えています。
これまで財政再建を重視する欧州各国に比べ、景気回復を重視してきたように見えるアメリカですが、やはりアメリカにとっても財政問題は避けて通れない問題です。

****米国:超党派の財政再建案を否決 議会提出ならず*****
米政府の財政再建策を検討する超党派の「財政責任・改革国家委員会」は3日、歳出削減と税制改革で2035会計年度(34年10月~35年9月)に財政赤字ゼロを目指す最終報告書案の賛否を問う委員18人による投票を実施したが、議会審議にかけるため必要な14人の賛成票を得られなかった。投票は賛成が11人、反対が7人。民主、共和両党から反対が出た。ガソリン税率の引き上げや、厳しい年金改革などに理解が得られなかった。
オバマ大統領は声明で、報告書について「多くの具体的な提案を含んでおり、今後数週間で綿密に研究したい」と述べ、来年2月に議会に提出する予算教書に反映させる考えを示した。
最終案は、政府職員の10%削減や年金受給年齢引き上げなどで、9年間で3兆8850億ドル(約321兆円)の財政赤字を削減。単年度の赤字額を国内総生産(GDP)比で、10年度の8.9%から20年度に1.2%に下げる内容だった。【12月4日 毎日】
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公務員の雇用や年金など社会福祉支出削減を伴う財政再建案は、どこの国でも受入れが難しい問題です。
「小さな政府」への保守層の支持が強いアメリカでも、やはり具体的な「痛み」の話となると躊躇するようです。

【「ブッシュ減税」延長と新START批准問題
経済政策としては、いわゆる「ブッシュ減税」延長の取り扱いでも、与党・政府と野党・共和党の協議が難航しています。これにはロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の批准問題が絡んでいます。
****オバマ米大統領:新START妥協模索へ 共和党指導部と協議****
オバマ米大統領は11月30日、11年1月に下院議長に就任する共和党のベイナー下院院内総務、マコネル上院院内総務らとホワイトハウスで会談し、年末に失効する減税措置延長の取り扱いや、米露が調印した新戦略兵器削減条約(新START)の批准などを巡って協議した。
民主党が大敗した11月2日の中間選挙後、オバマ大統領が共和党指導部と協議したのは初めて。ペロシ下院議長ら民主党指導部も出席した。

「ブッシュ減税」と呼ばれる個人所得税の減税をめぐっては、年収25万ドル(約2100万円)以上の高所得世帯を含めた全国民の減税延長を求める共和党と、高所得者を除いた中低所得層の減税延長を主張するオバマ政権とが対立している。会談で両者の溝は埋まらなかったが、双方は継続して協議することで合意。今後、ガイトナー財務長官、ルー行政管理予算局長が議会と交渉し、共和、民主両党の妥協点を模索する。
またオバマ大統領は会談で、新STARTの年内批准や、財政赤字削減の進め方についても超党派の協力を求めた。大統領は協議後の記者会見で、「生産的な会合だった。意見の相違はあるが、我々は良識ある共通の土台が必要なことで合意した」と述べた。
共和党のマコネル上院院内総務も記者団に「有益で率直な討議ができた」と評価。その一方で、ブッシュ減税の合意後でなければ、上院で新START批准の協議はできないとの見通しを示した。【12月1日 毎日】
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新START年内批准を人質にとられたような形です。

もっとも、アメリカの経済・財政について考えると、イラク・アフガニスタンで「戦争」という最大の浪費活動を行いながら、とにもかくにも維持できているというのは大したものだ・・・と感心してしまうのが率直な印象です。やはり日本経済などとは格が違うのでしょう。

コメント
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