孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  移民改革法(通称・DREAM法)案、採決に入れず

2010-12-23 19:09:09 | 世相

(5月1日 ホワイトハウス前でオバマ大統領に移民改革実施を求める集会に参加した母子 幼少時に親に連れられて入国したなど本人に不法滞在の責任を問えない不法移民を対象にしたDREAM法案でしたが、今回も実現されませんでした。 “”より By nflravens  http://www.flickr.com/photos/nflravens/4570051206/ )

【「新START」は何とか批准へ
中間選挙の歴史的敗北、その後の共和党の攻勢を受けて苦しい議会運営が続くアメリカ・オバマ政権は、懸案事項だった米ロ核軍縮条約「新START」の批准にようやく漕ぎつけました。

****米ロ核軍縮条約「新START」、米上院が批准承認*****
米上院(定数100)は22日、米国とロシアの核兵器数の新たな削減目標を設定する新戦略兵器削減条約(新START)の批准を、賛成71、反対26の賛成多数で承認した。ロシア側も批准に向けた手続きを進める方針で、オバマ大統領が唱える「核のない世界」の推進につながる重要な条約が、近く発効することになる。
オバマ大統領は、上院で批准が承認された後にホワイトハウスで記者会見し、「過去20年間で最も重要な軍縮合意だ。我々はロシアとともに核兵器を削減し、米国はより安全になる」と語った。
新STARTは、米ロが配備する戦略核弾頭数の上限を1550発、ミサイルや爆撃機などの運搬手段の上限を800に制限し、互いの配備状況を査察することも定めている。今年4月、オバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領が署名し、両国が今年中の批准を目指してきた。【12月23日 朝日】
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年内批准に失敗すれば、議会構成が不利になる来年以降の批准の見通しがたたず、オバマ大統領が唱える「核兵器のない世界」、ロシアとの核軍縮、関係「リセット」に大きな影響が出る問題だっただけに“やれやれ・・・”といったところです。

共和党が望む「ブッシュ減税」の全面延長を期間限定で認める代わりの“政治取引”とも言われてはいますが、オバマ大統領やバイデン副大統領、クリントン国務長官が共和党の主要上院議員に電話をかけ、批准に賛成するよう土壇場の説得工作を行った成果でもあり、多くの共和党議員が賛成に回ったことは「安全保障を政争の具にしない」という良識の表れとも言えます。

与野党対立のなかで消えた“DREAM(夢)”】
しかし、「ブッシュ減税」延長、「新START」批准といった重要法案のかげで、移民改革法(通称・DREAM法)案については採決に入れず、同法案は頓挫しました。
「DREAM(夢)法」は、16歳までに米国に入り、高卒か同等の学歴を持つ不法移民で、幼少時に親に連れられて入国したなど本人に不法滞在の責任を問えない場合を対象とし、最低2年間、大学に通うか米軍に入隊し、かつ罪を犯さないなど「素行善良」であれば永住権を申請することができるというものです。

****米移民改革法案が頓挫 オバマ氏任期中の成立困難に*****
米議会上院は18日、オバマ政権が推進する移民改革法(通称・DREAM法)案について採決に入れず、同法案は頓挫した。年明けからは今年の中間選挙で大勝した共和党が下院の過半数を占める新会期に入るため、共和党の反発が強い移民制度改革をオバマ政権が任期中に進めることはきわめて難しくなった。
上院(定数100)はこの日、審議を打ち切って法案採決に入るかどうかの採決を行ったが、賛成は55票にとどまった。同法案は下院をすでに通過しているが、上院では少なくとも60票の賛成がなければ反対派の議事妨害を制限できず、今会期中の採決はほぼ絶望的になった。オバマ大統領は同日、「大変失望した」との声明を出した。

オバマ大統領は、一定条件のもとで不法移民の合法化に道を開く一方、国境警備を強化して新たな不法移民の流入を防ぐ包括的移民制度改革を公約にしてきた。しかし、共和党には法を犯した移民を免責することへの反発が強く、改革を進められずにいた。
DREAM法は本格的な制度改革に着手するまでの当面の代替策の位置づけで、合法化の対象を、親に連れられて渡米した若くかつ高学歴の不法移民に限定した。「優秀な不法移民に就労の機会をあたえ、米国の活力とする」という利点を強調して共和党穏健派の取り込みを図ったが、共和党のオバマ政権に対する対決色が濃くなる中で賛同を得られなかった。【12月20日 朝日】
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2年前の大統領選でオバマ氏の当選を後押ししたヒスパニック(中南米系)の支持をつなぎとめるため、オバマ大統領は2年後の大統領選までに移民問題で一定の成果を上げる必要があります。
今回のDREAM法は包括改革と違い「優良な不法移民」だけが対象で、不法移民の取り締まり強化を訴える共和党にも受け入れられやすいとの読みがあり、オバマ政権は反対派の説得に手を尽くしましたが、下院では共和党のほぼ全員が反対に回っていました。【12月21日 朝日より】

****不法移民を救う「夢」はまた消えた*****
・・・・ドリーム法が成立すれば、全米で80万人ともいわれる優秀な若い不法移民に社会参加の道が開かれるはずだった。米軍の新兵採用活動への強力な後押しになるとの期待もあった。
だが反対派に言わせれば、不法移民に「恩赦」を与える行為はさらに多くの不法移民を呼び寄せる結果を招きかねない。大学か軍隊かという事実上の二者択一を突き付けることで、貧困層の若者に軍への入隊を強いることにもなる。
さらに、兵役を全うしても永住権を認められないケースが多そうなことも問題とされた。共和党の反対を抑え込むため提出された修正法案で、永住権取得の要件が厳しくなったためだ。

それでも法案成立を求める草の根運動は盛り上がった。テキサス大学など各地の大学で学生がハンガーストライキに突入。不法滞在者の若者の「カミングアウト」も相次いだ。
年内に必ず採択する、と民主党のハリー・リード上院院内総務は強気だった。だが核軍縮条約「新START」の批准など、年内に成立させたい重要法案はめじろ押し。国民の55%が法案に賛成しているとはいえ減税に比べると関心は低く、共和党への圧力にはならない。米軍の同性愛者受け入れ法は上院を通過したが、ドリーム法は結局否決された。
不法移民の長年の悲願は、今回も「夢」に終わってしまった。【12月29日号 Newsweek】
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This is America
法案が下院を通過した際の下記記事の、「不法移民の私を議会で証言させる米国ってすごい」という対象女性の言葉が非常に印象的でしたが、彼女の夢は残念ながらかないませんでした。
****ドリーム法と女性の死 米の不法移民に救済を*****
かつてロサンゼルス郊外パサデナの公園でインタビューしたことがあるタム・トランさんが亡くなっていたことを知人から聞いた。
彼女はベトナムから小舟で脱出したボートピープルの両親を持ち、ベトナム国籍も米国籍も与えられない“無国籍人”だった。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)を優秀な成績で卒業。自分のような学生に米国で活躍する道が開けるよう、優秀な不法移民の若者に滞在資格を与える通称「ドリーム法」成立を訴える運動をしていた。
知らなかったが、その後、東海岸の名門ブラウン大大学院に進んでいたという。だが今年5月、友人の運転で出かけたメーン州でトラックと衝突し、死亡。27歳だった。
ところで、長らくたなざらしになっていたそのドリーム法案が8日、米下院を通過した。今後の上院での審議はさらなる厳しさが予想されるが、成立に向けて大きな一歩を踏み出したことはまちがいない。
トランさんは議会で証言に立ち、自らの苦難を訴えたこともある。といって、米国を憎むふうはまったくなかった。「不法移民の私を議会で証言させる米国ってすごい」と明るく話したのが印象に残っている。生きていれば、下院通過の知らせに、どんなにか喜んだことだろう。冥福を祈りたい。【12月10日 産経】
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「新START」批准に一部野党も賛成し、不法移民に議会で証言させるのもアメリカ、財政赤字のもとで高額所得者も対象とする「ブッシュ減税」を延長し、DREAM法成立を阻んだのもアメリカ・・・です。

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