孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮でマラリア激減  韓国・日本のマラリア事情

2010-12-21 20:14:02 | 世相

(北朝鮮ではありませんが、アフリカ・シエラレオネでのマラリア対策としての蚊帳配布事業の様子です。
破れたまま使っていたり、使い方そのものがわからず魚取りの網に使ったり・・・という話も聞きます。効果をあげるためには、単に配布するだけではなく、指導する現地の人材の育成が必要です。“flickr”より By United Methodist News Service http://www.flickr.com/photos/umcommunications/5226497545/ )

【「根絶の前段階」】
ちょっと意外な感じがした記事、北朝鮮のマラリア患者数が激減しているというものです。
****北朝鮮のマラリア患者、8年間で95%減少*****
米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が15日、世界保健機関(WHO)の報告書を引用して伝えたところによると、北朝鮮のマラリア患者数は昨年1万4800人で、8年前の2001年(29万6500人)と比べ95%減少した。
報告書によると、マラリアをなくすため、昨年1年間に北朝鮮当局が180万ドル、WHOが120万ドルをそれぞれ支出。住民に殺虫剤処理された蚊帳を提供したほか、感染が疑われる患者に対する採血検査も無料で実施した。北朝鮮当局も積極的に動いており、現在は「根絶の前段階」にあるとWHOは評価した。ただ、北朝鮮からマラリアが完全になくなるまでには数年かかると見込んでいる。【12月15日 聯合ニュース】
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意外に思ったのは、マラリアは“熱帯地域の病気”というイメージがあったので、寒い北朝鮮とうまくむすびつかなかったこと、それと、先軍政治を推し進め民政を顧みない北朝鮮がマラリア対策にそれなりに動いているということ、その2点です。

進む感染予防対策
先進国での患者が多くないためあまり注目されることがありませんが、マラリアは世界的には、これまで毎年100万人規模の死者を出す人類にとっての大きな脅威です。
ただ、世界的にも最近は対応が進んで、犠牲者は減少傾向にあるようです。

****マラリア死者数、78万人に減少=対策強化に資金必要―WHO*****
世界保健機関(WHO)は14日、マラリアに関する最新の報告書で、2009年の世界全体の死者数が推計78万1000人と、約100万人だった2000年から一貫して減少していると発表した。感染予防対策の効果を評価しているが、活動資金は目標を下回っているとしており、各国による拠出を訴えている。
それによると、09年の感染者数は2億2500万人。増加傾向をたどっていたが、05年の2億4400万人をピークに減少に転じている。死者数の減少率は南北アメリカ、感染者の減少率は欧州が最も大きかった。【12月15日 時事】
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北朝鮮におけるマラリアの蔓延は、関係者の間では以前から問題視されていたようです。
「国内経済が破たんし、公衆衛生にまで手が回らないのが原因」とのことです。
****過去の病気ではない感染症 日本に油断 *****
・・・・「今、国際社会が頭を痛めているのは、北朝鮮でのマラリアの蔓延だ」 WHOマラリア対策本部長の古知新(こちあらた)氏の口から、こんな意外な言葉が飛び出した。同氏によると、WHOに報告される北朝鮮のマラリア患者は年間一万七千人。「国内経済が破たんし、公衆衛生にまで手が回らないのが原因」とみる。
ちなみに日本の土着マラリアはすでに一九六二年に絶滅している。ただ海外から帰国した日本人や日本に来る外国人が持ち込む、いわゆる「輸入感染症」が年間百件余り発生している。

さて北朝鮮でのマラリアの流行は、日本へも影響があるのか。古知氏は続ける。
「マラリアを媒介する蚊が三八度線を越えて韓国に、豆満江を越えて中国に飛来し、感染を拡大させている。こうなると中韓両国は、自国の中だけで対策を講じても意味がなくなる。中韓で広がったマラリアが、旅行者や移住者を通じて日本に持ち込まれる危険性は十分にある」【06年12月24日 東京】
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三八度線を越えるハマダラカ
南北間を飛び交うのは砲弾やミサイルだけではないようです。
マラリアを媒介する蚊が三八度線を越えて韓国にも拡大しているとのこと。

****マラリア、北朝鮮から韓国に定着の兆し ソウル大研究チームが警告****
韓国のソウル大学の研究チームは29日、北朝鮮からマラリアが急速に拡大し、韓国国内に定着し始めていると警告した。
研究チームの責任者、Chae Jong-Ilソウル大教授(寄生虫学)によると、かつてマラリアに感染するのは国境警備の兵士がほとんどだったが、最近では一般市民の感染者も同じくらい多いという。
Chae教授は「マラリア感染者のほとんどが、北朝鮮との国境から10キロ以上離れた村の住民だということを考えると、再発生したマラリアは韓国に定着しつつあるといえる」と指摘し、マラリア対策で韓国と北朝鮮が協力する必要があると訴える。

韓国でマラリアは根絶したと考えられていたが、1993年に症例が確認され、その後2007年までに合計2万3000例が確認されている。Chae教授は、熱帯地域で発見されるマラリアよりも致死性の低い、三日熱マラリアの流行であることを確認したという。
韓国は前年、マラリア対策として北朝鮮に対し、治療薬や殺虫剤、検査キット、蚊帳などを提供した。また、資金援助も2001年の53万ドル(約5500万円)から2007年の141万ドル(約1億5000万円)に引き上げている。
韓国政府によると、2002年に24万1190人だった北朝鮮のマラリア患者は、2006年には9353人に激減しているという。【08年4月29日 AFP】
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日本では・・・
なお、南北朝鮮でのマラリア感染に対し、日本では殆んど感染事例がありません。
そのあたりの事情については、ウィキペディアによると次のようなことだそうです。
****現在の日本で土着マラリアが流行していない理由 ****
明治時代~昭和初期の日本では、全国で土着マラリアが流行し多数の感染者を出した。戦後も500万人を超える復員者による再流行が危惧されたが、1946年の28,200人をピークに減少し、現在では外国でマラリアに感染し、日本に帰国してから発症する例が年間100~150例程度あるものの、土着マラリアは流行していない。その理由としては、マラリアの媒介者であるハマダラカの多く発生する水田地帯の環境変化、稲作法の変化などによる発生数の減少や、日本の住宅構造や行動様式の変化により夜間に活動するハマダラカの吸血頻度が低下したことなどがあげられる。しかし、これらの状況が温暖化や自然災害などにより変化した場合は再び流行を起こす可能性もある。【ウィキペディア】
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コメント
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