孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

西アフリカ・コートジボワール  居座るバグボ大統領 国際社会との対立激化 内戦の危機も

2010-12-22 21:02:09 | 国際情勢

(09年9月の国連総会で演説するコートジボワール・バグボ大統領 今、その国連から退陣を強く迫られています。
“flickr”より By United Nations Photo http://www.flickr.com/photos/un_photo/3962422739/ )

ギニア:混乱を経て事実上初の民主的選挙による大統領誕生
アフリカ・ギニアでは先月7日に大統領選挙決選投票が行われ、11月15日には選管が野党指導者コンデ氏(72)の勝利を発表しましたが、小差で敗れたディアロ元首相(58)の支持者らの抗議行動が発生。治安部隊と衝突し、死傷者が出る混乱となり、軍当局は11月17日、非常事態宣言を発令、夜間外出も禁止されました。

対立の背景には民族問題があるとされています。
“勝利したコンデ氏はマリンケ人で、敗れたディアロ氏はプル人。フランス植民地時代、フランス人はプル人を利用してマリンケ人など他部族を間接支配。1958年の独立後、約四半世紀にわたって君臨した故セク・トゥーレ初代大統領(マリンケ人)はプル人を弾圧した。”【11月19日 毎日】
イギリスやフランスの植民地支配でよく見られる構図です。

敗れたディアロ元首相側は「選挙に不正があった」と裁判所に訴えていていましたが、12月2日、同国の最高裁判所は野党指導者コンデ氏を新大統領として承認したと発表。これを受けて、混乱はようやく収束に向かったようです。
****ギニア:コンデ氏が大統領就任式 初の民主的選挙で選出****
西アフリカ・ギニアで21日、先月投開票された大統領選で当選した「ギニア人民結集党」のアルファ・コンデ党首(72)の大統領就任式があった。コンデ氏は「社会の団結と国家の統一を求める」と国内の対立解消に向けた決意を語り、1958年の独立後、同国で事実上初の民主的選挙による大統領が誕生した。
独裁政治や軍政が続いたギニアでは、08年の軍事クーデター後に民主化要求が強まり、6月に大統領選の1回目の投票を実施。候補者24人の誰も過半数を獲得できず、先月7日にコンデ氏と「ギニア民主勢力連合」党首のディアロ元首相(58)が決選投票に臨んだ。
選管はコンデ氏の勝利を発表したが、ディアロ氏は「不正」を理由に選挙の無効を最高裁に提訴。両陣営の対立で一時は非常事態宣言も発令されたが、最高裁は今月2日に訴えを退け、ディアロ氏も敗北を認めた。【12月22日 毎日】
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コートジボワール:2人の大統領
ギニアは“事実上初の民主的選挙による大統領が誕生”という形で収まりましたが、収まらないのが隣国コートジボワールです。
大統領選挙戦を巡る混乱については、12月6日ブログ「西アフリカ・コートジボワールで「2人の大統領」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101206)」でも取り上げたところですが、事態は混迷の度を深めています。

****混乱続くコートジボワールの死者50人超に、人権侵害拡大の懸念も 国連****
国連のナバネセム・ピレイ人権高等弁務官は19日、大統領選後の混乱が続くコートジボワールで、大規模な人権侵害が拡大傾向にあるとの懸念を表明した。
ピレイ高等弁務官は、コートジボワールでは過去3日間で50人以上が死亡し、200人以上が負傷していると述べたうえで、混乱に加担した者の責任を追及していく構えを明らかにした。

11月末に実施された大統領選をめぐっては、現職のローラン・バグボ大統領とアルサン・ワタラ元首相の双方が勝利を主張。選挙管理委員会や国際社会はワタラ氏の当選を認めているが、バグボ氏側は大統領職を譲っていない。
さらに、バグボ氏はコートジボワールの治安維持活動にあたっている国連部隊1万人を「ワタラ氏を支持する武装団だ」と非難し、同部隊の撤退を要求する最後通告を突きつけた。だが、潘基文(パン・キムン)国連事務総長はこれを拒否。バグボ氏に大統領職から退くよう求めている。【12月20日 AFP】
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国際社会の批判へ内政干渉との反発
11月の大統領選決選投票の後、敗北したはずのバグボ大統領は、自分寄りの憲法評議会による当選認定を受けて大統領に就任し、軍や警察の力で国土の大半を支配し続けています。
一方、選挙管理委員会や国連、大半の国々が当選を認めたワタラ元首相は、最大都市アビジャンのホテルを仮の大統領府として、約900人のPKO部隊に守られて活動しています。

これをバグボ大統領側は、国際社会による内政干渉と批判、18日、国営テレビで「国連PKOは深刻な内政干渉をしている。即刻、国外退去するよう求めた」との声明を流しています。
国連側は、このバグボ大統領の主張を認めず、反発を強めています。
****コートジボワールPKO活動延長、退去要求拒否*****
国連安全保障理事会は20日、西アフリカのコートジボワールで停戦監視などにあたる国連平和維持活動(PKO)部隊の活動期限を、今月末から来年6月30日まで延長する決議案を全会一致で採択した。
同部隊の退去を命じたバグボ大統領の要求を拒否した。
同国では、バグボ大統領が今月4日、大統領選の選管発表に反して就任式を強行。国連の潘基文事務総長が退陣を要求したことに反発し、国連PKO部隊の国外退去を求めていた。【12月21日 読売】
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大統領職に力で居座るバクボ大統領への国際的批判は強まっています。
これまでコートジボワールに深くかかわっている旧植民宗主国フランスのサルコジ大統領は17日、バグボ大統領を「民意に反して権力の座にとどまっている。速やかに退陣する以外の可能性はない」と非難しています。
“欧州連合(EU)は17日に採択した首脳会議議長総括で、同国治安部隊によるデモ隊への発砲を非難、バグボ大統領陣営に制裁措置を発動する方針を確認した。制裁では陣営幹部への査証(ビザ)発給が停止され、EU域内の資産が凍結される。サルコジ大統領は退陣要求に応じなければバグボ氏自身に制裁が科せられると警告した。”【12月18日 毎日】
アメリカ国務省高官も16日、アメリカがバグボ大統領に対し「数日以内に国外に出なければ制裁を加える可能性がある」と警告していたことを明かしています。

アフリカ域内からも非難が強まり、ケニアのオディンガ首相は同日、バグボ大統領を退陣させるべきだとし、アフリカ連合(AU)に積極的対応を求めています。
ケニアのオディンガ首相は、07年12月に行われた自国の大統領選挙でキバキ大統領と争った際に同様の混乱状態に陥り、多くの死傷者を出した後、キバキ大統領が大統領、オディンガ氏が新設された首相職につく形で決着した経緯があります。

対立の背景については、“コートジボワールは、60年の独立後、ウフエボワニ初代大統領が、カカオ農園拡大に向けて移民の受け入れを奨励し、現在は同国人口の3分の1近くをマリやブルキナファソなど周辺国の移民やその子孫が占める。移民の多い北部のイスラム教徒らが土地所有権を剥奪されるなどの差別的扱いが問題になったこともある。バグボ大統領は南部を地盤とするキリスト教徒なのに対し、ワタラ氏は北部を地盤とするイスラム教徒で、母はブルキナファソ出身。こうした地域や宗教間の対立が、事態を複雑化している。”【12月18日 毎日】とのことです。

内戦再開の懸念も
こうした国際社会の批判が強まるほど、バグボ大統領側は外国勢力・国連PKOによる内政干渉との批判を逆に強め、事態はエスカレートしています。
バグボ大統領が掌握する軍の一部には武力行使を主張する声も出始めています。
一方、03年まで政府軍と内戦を争った北部中心の元反政府勢力「新勢力(FN)」はワタラ氏を支持しており、内戦再開の危機も懸念されています。
すでに、アビジャンのホテル近くで治安部隊の発砲に対し、ワタラ氏を支持する反政府組織「新勢力」(NF)も応戦する形の小競り合いが16日段階で起きています。

日本や欧米の常識からすれば、選挙に敗れてなお居座るバグボ大統領の対応は理解できませんが、現地の軍・警察を支配しているのはバグボ大統領側ですので、バグボ大統領に政権移譲を迫るのは難しい状況です。
アフリカではしばしばこのような混乱が見られます。
民主主義とか選挙の価値観に対する理解に差もあるのでしょうが、権力を握る側と支配される側に、民族的・宗教的・地域的な対立があり、権力を持つか否かが生活、場合によっては生命に直結するような世界にあって、そういう世界では最終的には“力”だけがものをいう・・・そういう厳しい現実があるようにも見えます。

ケニアやジンバブエでは、対立する両者が権力を分かち合う形でとりあえず混乱を収めましたが(うまく機能しているかは別問題ですが)、コートジボワールの現状は出口がまだ見えません。


コメント
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