孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  山火事でトルコとの関係改善へ糸口 停滞する中東和平交渉

2010-12-05 18:32:47 | 国際情勢

(トルコからの消火用飛行機を迎えるイスラエル・ネタニヤフ首相(右) “flickr”より By The Prime Minister of Israel http://www.flickr.com/photos/israelipm/5231636223/

災い転じて・・・
イスラエル北部で2日、大規模な山火事が発生、各国が消火活動への支援を行っています。
****イスラエル:山火事発生、40人死亡 各国支援申し出*****
イスラエル北部ハイファ近郊の森林で2日、大規模な山火事が発生。パレスチナ人受刑者らを避難させるため、火災現場一帯にある刑務所に向かっていたイスラエル人刑務官を乗せたバス1台が火災に巻き込まれ、逃げ遅れた刑務官ら約40人が死亡した。
同日深夜までに800ヘクタールが焼失し、火災は強風で拡大中。ネタニヤフ首相は周辺各国に消火支援を要請した。
警察当局によると、森林一帯には三つの刑務所があり、刑務官らを乗せたバスが火災による倒木で立ち往生、炎に巻き込まれた。
出火原因について当局は、放火か不法投棄ごみからの出火を示唆。「テロ行為」の可能性は否定した。
欧州、ロシア、中東の周辺国は、消火用ヘリコプターや消防士の派遣を開始。今年5月にパレスチナ救援船をイスラエル軍が襲撃して以来、関係が悪化しているトルコも支援を申し出た。【12月3日 毎日】
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特に注目されるのは、5月のガザ向け支援船団襲撃で関係が悪化していたトルコとの関係です。
****イスラエル:ネタニヤフ首相がトルコ首相に謝意 山火事で*****
イスラエル史上最悪となった北部の山火事で、イスラエル軍による5月のガザ向け支援船団襲撃で関係が悪化していたトルコの消火用飛行機2機が3日、活動を開始。これを受け、イスラエルのネタニヤフ首相はトルコのエルドアン首相に電話し、謝意を伝えた。
ロイター通信によると、昨年3月にネタニヤフ首相が就任して以来、両国の首脳が会話するのは初めて。両国の関係改善のきっかけになるか注目される。
ネタニヤフ首相は電話後、「関係改善の入り口になると確信する」と発言。エルドアン首相は「人道とイスラムの観点から、助けるのは義務だ」との声明を発表した。
ただ、トルコのアナトリア通信によると、同首相は「関係を元通りにするには、(支援船団襲撃に対する)謝罪と補償が必要」という従来主張も繰り返しており、早急な改善実現は難しそうだ。
一方、火災は広がり続け、第3の都市ハイファなどの住民計1万7000人が避難。パレスチナ自治政府、ギリシャ、ヨルダンなど約10カ国・地域が機材や消防士を派遣。地元メディアは「史上最悪の火災」と報じている。【12月4日 毎日】
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関係改善を模索していた両国にとっては、山火事は「災い転じて・・・」という、丁度良い機会だったのでしょう。
何にせよ、これが改善への糸口となるのであれば結構なことです。

糸口が見つからない中東和平交渉
一方、アメリカが仲介している中東和平交渉の方は、なかなか交渉再開に向けた糸口が見つけられずに中断を続けています。
半月ほど前の下記記事の状態から殆んど進展していません。

****中東和平:入植再凍結交渉が激化 イスラエル内の反対強く*****
中東和平交渉再開を目指し、イスラエルによる占領地への入植活動再凍結を行うかどうかを巡り、イスラエルのネタニヤフ政権とオバマ米政権との駆け引きが激しさを増している。米政権は武器供与などを見返りに、占領地への入植住宅建設を3カ月凍結するよう求めているが、凍結範囲など細部で最終合意に至っていない。背景にイスラエルの右派連立政権内での凍結への厳しい反対がある。

占領地への入植活動は国際法違反で、パレスチナはヨルダン川西岸と東エルサレムでの完全凍結を交渉再開の条件に求めている。イスラエルが実施した10カ月の「凍結」が9月末に期限切れし、交渉は中断した。
ネタニヤフ首相とクリントン米国務長官は今月11日に会談。イスラエル各紙によれば米側は、▽最新鋭のF35型戦闘機20機の供与▽イスラエルに不利な国連安保理決議には拒否権の発動--などを約束。代わりに3カ月間建設を再凍結し、パレスチナと国境について交渉するよう求めた。

パレスチナは、イスラエルの占領地からの撤退と若干の領土交換を原則とした国境を提案しているが、イスラエル側は自らの立場を明らかにしていないとみられる。
ネタニヤフ首相は、米側の条件をいったんはのみ、安全保障閣議(15人)で「凍結」の了承を得る構えだったが、多数派工作に苦労している。党首を務めるリクード党からも「造反」が出る見通しだ。反対派は、▽東エルサレムでの建設容認▽3カ月後には新たな凍結要求はないとの保証--を求めている。
首相は、反対派に配慮して米側にこれらの条件を書面化するよう要請。米側は書面化に応じるが、パレスチナの反発が必至なこれらの条件を明記することは避けたい。前回の10カ月の凍結でも、東エルサレムの位置づけはあいまいにされた。
安保閣議で鍵を握るのはユダヤ教超正統派「シャス党」の閣僚2人。元来は凍結に反対だが決議を棄権する見通しとなり、安保閣議は7対6の小差で凍結を了承するとハーレツ紙が15日に報道。しかしその後、同党の宗教的指導者、オバディア・ヨセフ導師(ラビ)が反対する意向が明らかになり、2票の行方が不透明になった。
首相を含むリクード党閣僚7人の票読みも、賛成4、反対3だ。反対、賛成両派がヨセフ導師に協力を求める事態となっている。【11月18日 毎日】
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アメリカ側も戦闘機供与や安保理での拒否権発動など、随分お土産をつけたようですが、事態は進展していません。特に障害となっているのが、東エルサレムの扱いで、イスラエル側が入植活動凍結範囲に「含まない」ことを明記するよう求めているのに対し、パレスチナ自治政府側は「含む」ことが交渉再開の前提という立場です。
アメリカは「玉虫色」にして、両者を交渉の席につかせよう・・・というところのようですが。

****和平交渉再開、東エルサレム入植凍結が前提*****
パレスチナ自治政府のアッバス議長は21日、米国が直接和平交渉再開に向け、イスラエルに求めているユダヤ人入植活動凍結について、「(東)エルサレムが含まれなければ、受け入れられない」と述べ、東エルサレムでも入植が凍結されなければ、交渉には参加しないとの姿勢を改めて示した。
カイロでムバラク・エジプト大統領との会談後、記者団に語った。
和平交渉は、イスラエルがヨルダン川西岸で入植活動を再開したためパレスチナ側が反発、中断している。米国は交渉再開のため、イスラエル側に3か月間の入植凍結を求めているが、東エルサレムは対象となっていない。【11月21日 読売】
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高まる交渉のハードル
交渉再開、3か月間の入植活動凍結でさえこれだけ困難ななかで、仮に交渉が始まっても3か月間で一体何がまとまるのか・・・という悲観的な印象も感じます。
先日来日したパレスチナ暫定自治政府のファイヤド首相は「3か月あれば、国境線画定の問題は解決できるはずだ。なぜなら、この問題を交渉するのは、初めてではないからだ。イスラエル側がすべての占領地を返還し、解決しようという意思があれば、十分可能だ」と語っていますが・・・。

イスラエル側では交渉のハードルを更に高くする動きもあります。
****イスラエルが「領土」で国民投票 割譲の際の法案可決****
イスラエル国会は22日、併合地である東エルサレムとゴラン高原を含む「自国領」の割譲を決める際に国会定数の3分の2以上の賛成か国民投票での承認を義務付ける法案を賛成多数で可決、国民投票の実施を定めた法律が同国で初めて成立した。併合地の扱いはパレスチナやシリアとの和平交渉の主要争点。同法により、併合地からの撤退を伴う将来の和平合意がさらに困難になりそうだ。【11月23日 共同】
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“国際的に承認されていない併合地の返上について、実質的な「拒否権」を国民に与える法律”【11月23日 毎日】とも指摘されており、交渉は更に難しくなるばかりです。

コメント
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