孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  物価上昇に国民の不満 当局は金利引き上げへ 高騰著しい住宅価格

2010-12-27 19:53:44 | 国際情勢

(“flickr”より By yulizardwy http://www.flickr.com/photos/yulizard/4732665823/

不動産投資や経済の過熱によるインフレ
日本の恒例「今年の漢字」は“暑”でしたが、同様のイベントは中国でもあるそうです。(どちらが先かはしりませんが)

****今年の漢字は「漲」=インフレを懸念―中国*****
27日付の香港紙リンゴ日報によると、中国の多くのポータル(玄関)サイトなどで、今年を象徴する漢字に物価上昇を意味する「漲」が選ばれた。
中国の公式統計では、11月の消費者物価は前年同期比5.1%上がったとされる。しかし、実際の上昇率はこれよりはるかに高いとみられ、インフレ懸念の高まりから、中国人民銀行(中央銀行)は26日、今年2度目の利上げに踏み切った。【12月27日 時事】
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上記記事にもある11月のインフレ率については、08年7月以来、2年4カ月ぶりの高水準となっています。
****中国:消費者物価5.1%上昇 11月インフレ拡大*****
中国国家統計局は11日、11月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比5.1%上昇したと発表した。同6.3%上昇を記録した08年7月以来、2年4カ月ぶりの高水準となった。同4.4%上昇だった10月を大幅に上回り、上昇率を「3%」とする政府目標も5カ月連続で上回った。不動産投資や経済の過熱によるインフレが拡大している。
11月の生産者物価指数(PPI)も同6.1%上昇と10月の同5.0%上昇を上回った。原材料の価格上昇圧力が根強いことを示しており、今後も製品価格に転嫁されてCPIを押し上げる可能性がある。
中国人民銀行(中央銀行)は10日、金融機関の預金準備率を20日から0.5%引き上げると発表。11月も預金準備率を2度引き上げ、金融引き締めでインフレを抑制する強い姿勢を示している。【12月11日 毎日】
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住民の生活に対する満足感が全体的に低下
物価上昇に対する中国国内の不満は大きく、政府の統治能力や経済政策への信頼への影響を懸念する指摘もあります。
****中国国民、生活への不満高まる 政府の信頼低下*****
2010年12月21日 12:30 発信地:北京/中国
中国国民の間で生活に対する不満が高まり、政府の統治能力や経済政策への信頼も低下しているとの報告書を政府系シンクタンクが発表した。(中略)
今年は、雇用や社会保障への満足感が、過去4年間で最も低い水準となった。報告書は「2010年になって国際金融危機の影響が徐々に現れ、都市および郊外の住民の生活に対する満足感が全体的に低下した」と説明している。

■高まるインフレ不安
一方、物価上昇を吸収する力が大幅に低下する中、インフレーションに対して高まる国民の不安を示すように、不安に感じることのリストのトップに挙げられたのは物価だった。
中国の消費者物価指数(CPI)は11月に前年同月比で5.1%上昇。過去2年で最大の上昇幅で、中国政府の年間目標である3%を大幅に上回っている。
また医療制度改革や、上昇する一途の不動産価格に対する不安も高まっていた。政府に期待する政策のトップは、住宅価格の抑制だった。主要都市の不動産価格は、11月に前年同月比で7.7%上昇。前月比では0.3%、3か月連続の上昇となった。【12月21日 AFP】
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経常黒字→元売り・ドル買いの市場介入→過剰流動性
中国当局も、物価安定重視に転換しています。
****中国、物価の安定に注力 金融引き締め方針確認****
中国共産党・政府は12日までの3日間、2011年の経済運営について話し合う中央経済工作会議を開き、物価の安定にさらに力を注ぐ方針を決めた。金融政策の引き締めへの転換と、景気を下支えするための積極財政の継続も確認した。
会議には、胡錦濤(フー・チンタオ)党総書記(国家主席)や温家宝(ウェン・チアパオ)首相ら党や政府、人民解放軍の首脳・幹部が出席した。(中略)
新華社は米国や日本など先進国の金融緩和策が世界に資金をはんらんさせているとして、「中国内のインフレ予想が短期のうちに低下することは難しい」とする分析を伝えた。【12月13日 朝日】
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上記記事では“引き締め政策への転換”とありますが、あくまでも成長を減速させることのない範囲で・・・ということのようです。
“中国の金融政策を「適度に緩和的」から「穏健」にシフトするとされたが、これは成長率を減速させる「引き締め」ではなく、緩和状態から平常状態へ戻すだけである”【12月27日 Searchina村上尚己】
中国人民銀行は、25日に預金・貸出金利(期間1年)を0.25%引き上げ、それぞれ2.75%、5.81%にすると発表しました。09年以降の世界的な景気回復過程において、今年の10月に続き2度目の利上げです。

世界経済のけん引役である中国の責任
****中国:追加利上げ インフレ阻止、重い責任*****
中国の追加利上げは、カネ余りを意味する「過剰流動性」が同国で抜き差しならない問題となったことを示し、国際金融界では異例となるクリスマスの利上げ発表につながった。世界経済のけん引役である中国がインフレ阻止に失敗すれば、同国への依存を深める日本経済を含む世界経済全体に悪影響が及ぶだけに、物価安定に向けた中国の責任は重大だといえる。
中国は、輸出振興で巨額の経常黒字を計上する一方で、輸出減少に直結しかねない人民元相場の上昇を防ぐため元売り・ドル買いの市場介入を加速。このため、元が市場にあふれ購買力が増し物価が上昇、金融引き締め強化による過剰流動性の解消が急務となっていた。

半面、引き締めが行き過ぎれば企業活動などに悪影響が出て、景気が失速する恐れもある。失業率上昇などが社会不安に発展すれば一党独裁の中国共産党に対する不満が爆発しかねず、経済成長を大きく減速させるわけにはいかない。
中国経済は景気過熱を防ぎながら、成長も持続させなければならないという重大な局面に立つ。同国政府は今後、経済動向を見極めながら、さらなる利上げや預金準備率引き上げを慎重に進めることになりそうだ。【12月25日 毎日】
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昔、日本も世界経済を牽引する「機関車」を期待された時代もありました。
第一次石油危機後の世界不況を克服するため、1978年、ボン・サミットでは、経済状況のよい日本、西ドイツが機関車役を果すことが確認されています。
今は、その役割は中国経済に代わっています。“世界経済のけん引役である中国がインフレ阻止に失敗すれば、同国への依存を深める日本経済を含む世界経済全体に悪影響が及ぶ”という状況です。
日本経済に悪影響が及ばないように中国当局の努力に期待しましょう。

農民なら、唐の時代から今までずっと働き続ければマンションが買える
中国社会の物価上昇のなかでも特に国民の不満が大きいのは住宅価格の上昇です。
****家を買おうにも高すぎる、北京っ子の怒りネットで拡散*****
天高く高騰する住宅価格に対する北京っ子たちの怒りが、皮肉まみれのメールとなって、サイバースペースを飛び交っている。内容は、農民と泥棒と売春婦がそれぞれ家を買うまでに何年かかるかというものだ。
(中略)
ネットでどんどん広まっている話題の電子メールには色々なバージョンがあるが、いずれも、北京中心部で広さ100平方メートルのマンション(目下の値段は約300万元、約3700万円)を買うには、どれだけ働かなくてはならないかという内容。これが正確とは言えないが、面白いのだ。

いわく、ごく平均的な農地を耕している農民なら、自然災害さえなければ、このマンションを買えるようになる。唐の時代(618年-690年、705年-907年)から今までずっと働き続ければ。
月収1500元(約1万9000円)の平均的なブルーカラー労働者の場合、19世紀半ばのアヘン戦争のころから週末返上で今までずっと働き続けたなら、北京でマンションが買えるかもしれない。
売春婦の場合、18歳から46歳になるまでひたすら休みなく客を毎晩1人ずつとり続ければ、つまり客1万人の相手をすれば、買えるかもしれない。
泥棒が自宅購入資金を手に入れるには、盗みを2500回働かなくてはならない。
――とは言うものの、この計算には内装や家具や家電製品の費用は含まれていない、とメールは指摘する。

別バージョンの人気メールでは匿名筆者が、拡大する格差社会において一般市民が直面するジレンマを暗い諦めと共に描き出している。
「生まれてくるだけの金がない。帝王切開は5万元もかかるので。勉強するだけの金がない。学費は少なくとも3万元かかるので。どこかに住むだけの金もない。1平米は少なくとも2万元はするので。病気にかかることもできない。薬価は少なくとも10倍に水増しされているので。死ぬ金もない。火葬には少なくとも3万元はかかるので」【12月27日 FINANCIAL TIMES】
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こうした事態を受けて、温家宝首相は13年の任期終了までに住宅価格の高騰を抑制する決意を表明しています。
****中国首相:住宅価格の高騰抑制を表明 13年までに****
中国の温家宝首相は26日、中国中央人民放送のインタビューで「私の任期中に住宅価格を必ず合理的な水準にする」とし、13年の任期終了までに住宅価格の高騰を抑制する決意を表明した。
また、最近の物価高騰で「中低所得者の生活はいっそう困難になっている」と指摘。今回の追加利上げや預金準備率(中央銀行が金融機関から強制的に預かる準備金の割合)引き上げなどで「物価を合理的な水準にすることができる」と強調した。
不動産の高騰を抑えるため、政府は投機的な取引へのローン規制などの対策を講じているが、温首相は「十分ではない」と認め、投機取引への規制強化で住宅価格を抑制する考えを示した。低所得者向けの住宅を来年、1000万戸建設する方針も明らかにした。
住宅価格をめぐっては、中国人民銀行の最近の市民調査で75.5%が「高すぎる」と回答するなど不満が高まっている。【12月26日 毎日】
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中国は独自の政治・経済システムで驚異的な経済成長を実現しました。
現在の物価上昇は、先進国の金融緩和策で生じた過剰流動性の中国国内への流入が影響していますが、経常黒字の状態での元売り・ドル買いの市場介入という中国当局の政策の結果でもあります。
独自の政治・経済システムが経済安定にも的確に対応できるか注目されます。


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