孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  カリフォルニアをどげんかせんといかん・・・のですが

2009-07-12 22:01:07 | 世相

(“flickr”より By mars_discovery_district
http://www.flickr.com/photos/marsdd/533599024/)

【見えない新芽】
イタリア・ラクイラで開催された主要国首脳会議(G8サミット)の首脳宣言では、世界経済の現状を「株式市場の回復など安定化の兆しが見られる」とする一方、「状況は依然として不確実であり、経済や金融の安定に大きなリスクが引き続き存在する」としています。

ひと頃のような急速な悪化は一段落したものの、出口はまだ見えない状況は日本を含め各国共通です。
米労働省統計局が7月2日に発表した統計によると、全米の6月の失業率は9.5%に達し、5月の9.4%から更に悪化しました。

“失業率がここまで悪化したのは、実に26年ぶりのことだ。最後に失業率が10%を超えたのは82~83年の不況のとき。当時のアメリカは、79年の石油危機と21.5%にまで上昇した高金利の後遺症に苦しみ、貯蓄貸付組合(S&L)の崩壊に直面していた。
失業率は再び大台に乗るのだろうか。何人かの楽観的なエコノミストは、金融回復の「グリーンシュート(新芽)」が出ていると指摘したがるが、多くの州の大地はむしろ枯れ果てているように見える。特にカリフォルニア州やオレゴン州、ネバダ州といった失業率が11%を超える西部の州では、新芽はまったく見えない。
それでも、現在の「大不況」は1930年前後の「大恐慌」ほどではない。当時は景気低迷が43カ月続き、平均失業率は25%近くに達した。今回の不況はこれほど長くは続かないだろうが、皮膚感覚では深刻だ。”【7月5日 Newsweek】

【住宅バブルがはじけて】
映画の都ハリウッドとハイテク企業の拠点シリコンバレーを抱え、流行の発信地でもあるカリフォルニア州では、住宅市場の低迷が長引き、失業率が5月には11.5%を記録するなど景気後退で税収が急激に減少、赤字が260億ドル(約2兆5000億円)に達する深刻な財政危機に陥っています。
住宅バブルとその崩壊は全米的なことですが、とりわけカリフォルニア州では不動産市場が過熱し、州の経済全体が不動産投機を中心に回っていたこともあって、住宅バブル崩壊の痛手も大きかったようです。
そうしたなかで、議会では福祉・教育予算のカットで財政再建を目指す共和党と、税収増を掲げる民主党が対立。予算を組めないまま新年度を迎えています。

すでに2月段階で、シュワルツェネッガー知事は20万人以上の州職員に給与なしの自宅待機を命じ、各地の保健所や運転免許試験場がいっせいに休業となっています。この休業は2週間おきの金曜日ごとに実施されるとのことで、職員は月2回の休日の増加と引き換えに、給与を約10%カットされます。

財政収支の均衡化に向けた予算が合意に至らないまま7月1日の新年度入りとなったことを受けて、シュワルツェネッガー知事は1日、財政非常事態宣言を発令。
州当局は納入業者などへの支払いを停止し、将来の支払いを約束する「IOU」(借用書)を発行することになりました。

****財政難の米カリフォルニア州、ついに「借用証」****
深刻な財政難に陥っている米カリフォルニア州は2日、納入業者などへの支払いができなくなったため、通称「IOU」と呼ばれる借用証の発行を始めた。
返済の保証はなく、金融機関が換金を拒めば、ただの紙くずとなる恐れもある。アーノルド・シュワルツェネッガー知事はすでに非常事態を宣言したが、事態は深刻度を増している。
AP通信などによると、同州の赤字は260億ドル(約2兆5000億円)に達し、とりあえず33億ドル(約3200億円)分の借用証を印刷することにした。金利は3・75%で、10月2日が換金の期限。福祉団体や自治体への支払いにも用いる。
金融危機に陥っている金融機関が換金に応じるケースは限定的とみられ、州政府が資金を工面するには、支出の大幅カットしかない。同州は1992年に暫定的に借用証を発行したことがあるが、本格的な発行は30年代の大恐慌時以来となる。【7月3日 読売】
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【ターミネートできない財政赤字】
2003年、カリフォルニア電力危機などによって60億ドルにも上る負債を抱えた州の財政をどう再建するか、経済をどのように活性化させるかが特に重要視され、シュワルツネッガーは「増税なき財政再建」を掲げて知事に当選しました。
しかし、事態を打開できないシュワルツェネッガー知事への市民の不信感も高まっており、“共和党員のシュワルツネッガー氏は主演映画「ターミネーター」で有名。州財政の安定化を公約し知事に就任したものの、財政赤字を「ターミネート」(処理)できずにいる。”【7月3日 ロイター】とも。

州議会の多数を占める民主党は歳出削減の必要性で共和党と一致していますが、増税には共和党とシュワルツェネッガー知事が反対しています。
民主党と共和党の対立はカリフォルニア州だけのことではありませんが、カリフォルニア州では予算と増税は3分の2以上の賛成が必要とされることが事態を難しくしている側面もあるようです。

さすがに、州上院の民主党幹部が増税の要求を撤回すると表明するなど、議員の間では歩み寄りもみられ、合意の可能性も出てきた・・・とも報じられていますが【7月3日 ロイター】、いまのところ合意に至ったとの報道はまだ目にしていません。

【「注視はするが、自州で解決すべき問題」】
こうしたカリフォルニア州の財政危機の救済に、連邦政府は消極的のようです。

****カリフォルニア州の財政危機、米政府は支援に消極的******
米ホワイトハウスのギブズ大統領報道官は16日、カリフォルニア州の財政問題は同州が解決する問題と述べ、支援に消極的な姿勢を示した。
ホワイトハウスのギブズ大統領報道官は、政府による緊急融資の可能性について質問された際「われわれは引き続きカリフォルニアが抱える問題を注視していくが、残念ながらカリフォルニアの財政難は同州が解決しなければならない問題」と語った。
景気後退(リセッション)や失業率の上昇、住宅市場の低迷により、カリフォルニアの税収は大幅に落ち込んでいるが、財政赤字拡大で公債発行による資金調達は困難になっている。
州財務官は、資金を手当てしないと数週間以内に財源が枯渇し、50日以内に財政破たんするとの見方を示している。

同州はここ1年近く連邦政府による支援を模索しているが、ガイトナー財務長官は春に、財政難に陥っている州への支援を検討しているものの、7870億ドルの景気対策に盛り込まれた計画以外は考えていないことを明らかにした。
ギブズ報道官は「明らかに国内の多くの州は景気低迷の影響で財政がひっ迫している」と指摘。今までにないような規模の財政支出で州に資金が向かうようにしたことで、オバマ大統領がこの問題に一部対処したと述べた。
連邦政府が地方政府への支援に消極的だったのは今回が初めてではない。1975年にニューヨーク市は深刻な財政危機に陥ったが、当時のフォード政権は同市への支援を拒否した。
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は15日、カリフォルニア州の財源が7月末までに枯渇するかもしれないとし、同州債を格下げする可能性を示した。【6月17日 ロイター】
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日本でも夕張市の事例のように安易な救済策はとられませんので、ましてや自助努力の国アメリカではなおさらでしょう。
“黄金の州”復活に向けてシュワルツェネッガー知事が道筋を描けるのか、残された時間はあまり多くありません。

コメント
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