孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン 今夏の洪水被害いまだ癒えず、政府食糧配布も中断

2007-12-15 14:28:29 | 災害

(バケツで家から水をくみ出す少女 2007年8月パキスタン・カラチ “flickr”より By -NB)

今年、インド東部・バングラデシュ・ネパールの南アジア地域は6月以来のモンスーン期の豪雨により大規模な洪水にみまわれ、インドが1800人、バングラデシュが569人、ネパールが105人(8月14日時点集計)という2500人近い死者を出しました。
もちろん被害は死者や負傷者だけにとどまらず、住宅・財産の流出、食糧不足による飢餓、農地・農作物の被害、伝染病の蔓延・・・多岐かつ長期にわたります。

バングラデシュは11月にはサイクロン「Sidr(シドル)」の直撃により、再び死者4000人超とも、1万人に上るのではないかとも言われる被害を出したことは、記憶に新しいところです。

上記のインド東部・バングラデシュが豪雨被害を出していた頃、パキスタンでも大きな自然災害がありました。
6月26日、パキスタン南部地域はサイクロン「Yemyin(イエミン)」に見舞われました。
その後のモンスーン暴風雨も重なって洪水が発生。
バロチスタン州全体とシンド州北部に大きな被害を出し、死者420人、行方不明者1千人以上が発生し、被災者は250万人。
10月18日時点の報道でも、なお30万人以上の人々が避難生活を余儀なくされています。【JADE‐緊急開発支援機構】
現地の住宅は日干しレンガづくりのため、水没すると泥化して流出してしまい、住民は難民となってしまうとも聞きます。

当時それほど大きなニュースにもならなかったこともあって、この「イエミン」によるパキスタンの被害を私は今まで知りませんでした。
私を含め一般的には“数百人規模の犠牲者の災害”はアジア・アフリカではさして珍しくもなく、「またか・・・」と見過ごされていきます。

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パキスタン南部で今夏にあった大洪水の影響が深刻だ。栄養不足で皮膚病やマラリアなどに感染する子どもが相次ぐ。冠水した田畑での作物栽培も当面は難しい。政府の食料配布はすでに中断されており、飢餓の発生が懸念されている。【12月14日 朝日】
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日本のNGO「JADE―緊急開発支援機構」がシンド州カンバルで11月から巡回診療をはじめ、現地の医師と看護師計6人が二手に分かれ、これまで約3000人を診たそうです。
とくに子どもは栄養不足で抵抗力が下がり、病気にかかりやすくなっていると伝えられています。

JADEの調査によると、農家1世帯あたりの平均年収(月収ではありません。)は被災前の約8万円から約1万3千円に減ったそうです。
来年3月には田植えが始まるが、「すべてを失った農民に種を買う余裕はない。これから多くの餓死者が出る恐れがあり、国連にも警告した」と話すJADE現地責任者の話も紹介されています。

また国際的NGO「セーブ・ザ・チルドレン」は生活用品(鍋など)、衛生用品(石鹸・浄水剤など)の配給を行っています。
パキスタンもこれから冬を迎えるため、新住居を確保が必要になります。
セーブ・ザ・チルドレンでは、ナツメヤシの葉、マンゴ木、竹などといった自然の素材を利用したシェルターを提案しています。

パキスタン政府は8月、資金難を理由に食料配布を中断。
人びとは生き残った家畜を売ったり、日雇い仕事をしたりしてかろうじて生計を営んでいるとか。

“命の重さ”とか“人権”とか、ここで正義のだんびらを振り回すつもりもありません。
ただ、こういった被災者を救援するような政府の取り組みがあれば、「(世論調査で)67%がムシャラフ大統領の即時辞任を求めている」【12月14日 共同】といった事態も改善できるし、イスラム原理主義に人々を追いやることもなく、国際的にもイスラム過激派との戦いの一画にパキスタンを留め置くこともできるようになるのでは。
政府や国際支援のお金の使い方として“効果的”と考えるのですが。
人々が政府・国際世論に背をむけてしまったあとでは対応は“非効率”です。


(被災地からラクダで避難する住民 “flickr”より By saipahi)
コメント
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