孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・オランダ  派遣の選択

2007-12-03 14:23:09 | 国際情勢

(イラクに向かう米海軍の強襲揚陸艦キアサージ 殆どミニ空母ですね “flickr”より By VetFriends.com )

先月15日にバングラデシュを直撃して4000人を超す犠牲者をもたらしたサイクロン「Sidr」については、一昨日に取り上げたばかり(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071201)ですが、ひとつ書き忘れたことがあったので追加します。

******
サイクロンの直撃を受けたバングラデシュ南部の被災地で、米海軍の強襲揚陸艦キアサージで到着した部隊が救援活動を行っている。
イスラム教徒が大半を占めるバングラデシュはイラクにおける米国主導の戦争に強く反対しているが、Jim Hoeft海軍大尉は「信じている宗教に関係なく、苦しみは世界共通だ。われわれはここまで4500キロを全速力で移動してきた」と語った。
米軍はキアサージの浄水装置で数千リットルの飲料水を製造し、被災地に空輸している。【12月1日 AFP】
******

強襲揚陸艦キアサージはヘリコプター約20機を搭載しており、負傷者の医療輸送も行っています。
アメリカはさらに米海軍艦船2隻を投入していますが、両船はキアサージと同様ヘリコプターを搭載、医療チームが乗船しており外科手術設備があります。【11月24日 AFP】

一方、バングラデシュのMatin暫定通信相は27日、サイクロン「Sidr」の被災者救援活動を行っている米海軍とパキスタン軍医療部隊は「彼らはわれわれのために活動しており、必要以上に滞在することはない」と語ったそうです。
イラク侵攻で反米感情も強いイスラム教徒を抱えるバングラデシュ当局は、米軍の関与をたびたび控えめに扱っており、米軍の救援活動の広報に消極的な姿勢がうかがえると報じられています。【11月28日 AFP】

実際の活動にあたっている米軍人の気持ちは多分冒頭の発言にかなり近いものだと思いますが、当然ながらアメリカとしては、単に“善意”ではなく、イラク、アフガン、イランなどの対イスラム国の関係で大きな問題をいくつも抱える現状で、イスラム国バングラデシュ援助に関する何らかの思惑があっての行動でしょう。

ただ、そうであるにせよ、その迅速な行動力は“さすが”とも言うべきものがあり、また、この活動によって助かる人々にとっては、思惑云々はどうでもよい話でもあります。

全く別のニュース、アフガニスタンに関するもの。
*******
オランダ政府は11月30日、アフガニスタン南部ウルズガン州に駐留するオランダ軍部隊について、来年8月までの駐留期限を2010年まで2年間延長することを閣議決定した。
部隊の規模は現在の約1650人から約1400人に縮小されるが、国際治安支援部隊(ISAF)の主力の一角が撤退する事態は回避される見通しとなった。
オランダ軍は、米英軍やカナダ軍とともに旧支配勢力タリバンとの戦闘が激化しているアフガン南部の治安維持を担ってきたが、昨年7月以降の部隊の死者が12人に達し、国内で撤退を求める声が高まっていた。【12月1日 読売】
*******

オランダ政府は、駐留部隊の大幅な規模縮小も視野に、他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に増援を要請してきたが、各国とも激戦地帯への派兵には消極的で、後任部隊が見つからなかったとも報じられています。
当面の減員分はフランスやチェコが補充するとか。

アフガニスタンでのISAFの戦闘が是認されるべきものかどうかという議論については、今回はしません。
この記事をとりあげたのは、オランダも本音では早く撤退したい、でも後任が見つからずそれが出来ないという苦悩が印象に残ったからです。
自国のみ撤退を決められない理由が、他のNATO諸国への配慮なのか、対米関係を考えてのことなのか、それとも自国が抜けた後のアフガンの戦局を憂慮してのことなのか・・・それは分かりません。
オランダに限らず、犠牲を伴う派兵はできれば避けたい、でも何らかの理由で実施している・・・という国が殆どでしょう。

アフガニスタンがどうかは別としても、内戦・紛争で住民に多大の被害が予想され、あるいは実際に発生しており、なんとしてもその事態を止めないといけない・・・そういう場面もあろうかと思います。
日本は平和憲法のもと、直接的な戦闘行為を伴う自衛隊派遣は行いません。
個人的には、“平和憲法”、あるいはそれに象徴される日本の姿勢に長年シンパシーを感じてきました。
いまでも、その精神、その意図するところは十分に尊重すべきものと考えています。

しかし、最近どうも「いまのままでいいのかな・・・」と思う機会もあります。
空虚な“国際貢献”とかを論じるつもりもありませんし、ましてや対米関係などを云々するつもりもありません。
ただ、どうしても直接的な“力の行使”によってしか住民の生命が守れない場合もあり、そのとき「日本は派遣できません。」「民生分野で支援します。」ですむのか?
同時代を生きる人間として、それでいいのか?
自国の安寧だけを考えればそれでいいのか?
そのような思いがします。

「自国だけよければいいなんて言っていない」との反論もあるでしょうが、結果として多くの命が失われる事態を座視するのであれば同じです。
「派遣できる国が派遣して、日本は他の分野で・・・」という意見もあるかもしれませんが、どこの国も派遣したくてしている訳でもないでしょう。
もし、他の国も拒否したら日本はどうするのでしょうか?
そもそも自国が禁じている行為を他国に期待すること自体が奇妙とも言えます。

もとより、“力の行使”だけが紛争解決の手段であるとは思いません。
NGOなどが行っている軍事とは切り離した活動が有効な場面、むしろ軍事色が出ないほうが活動しやすい場面も多々あると思います。
しかし、場面によっては力で住民の命を保護するしかない場面もあるかと思います。
そういったときの対応を問題にしています。

随分と政治・社会の現実から遊離した話をしているとは思います。
ただ、外の世界で起きている苦しみにもう少し真剣な目を向けてしかるべきでは・・・そんな気がしています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする