孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

温暖化対策  世界の流れ、日本の対策

2007-12-06 17:23:04 | 環境

(カナディアン・ロッキーの氷河 写真右下の“1982”と言う標示は、当時そこまで氷河があったことを示すもののようです。 “flickr”より By le sara )

バリ島で国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)が開催されていることもあって、毎日温暖化関連のニュースが入ります。

(1)世界の流れ
異様なくらいに熱心なヨーロッパ各国ですが、ドイツ政府は5日、2020年までに同国の温室効果ガス排出を90年比で最大40%削減する目標を定め、その方策として計14の法案や通達をまとめたエネルギー・環境包括案を閣議決定、環境先進国として世界を主導していく方針だそうです。
包括案のなかには、風力・太陽光などによる発電割合を25~30%に引き上げること、09年以降に購入された新車は、排気量でなく二酸化炭素の排出量で課税することなどの施策が含まれています。【12月6日 朝日】

先月15日にはイギリス政府が温室効果ガス排出60%削減を明記した気候変動関連法案を策定しましたが、ブラウン首相は2050年までに1990年比で最大80%削減できそうだとの見通しを示しています。
首相は「イギリスは低二酸化炭素社会のリーダーを目指す」と宣言しています。【11月21日 産経】

これまで“後ろ向き”とされていたアメリカでも、州レベルでの取組みが進んでいますが、先日TVを見ていると、有力企業のグループのほうからCO2のキャップ・アンド・トレード実施を政府に要望する動きになっているとか。
いろいろ思惑はあるのでしょうが、先行するヨーロッパの同システムと連動させる考えのようです。

アメリカ連邦政府も、上院の環境公共事業委員会で5日、温室効果ガスの排出削減を義務付ける超党派の法案を可決しました。
今後、上下院本会議での可決、大統領署名は必要ですが、委員会レベルで削減義務を盛り込んだ法案を可決したのは初めてで、流れが変わりつつあることを示しています。【12月6日 読売】

なお、ヒラリー上院議員は、温室効果ガスの排出を2050年までに1990年レベルから80%削減することを柱とする包括的な環境・エネルギー政策を発表し、京都議定書後の国際的な温暖化対策の枠組みづくりでも米国がリーダーシップをとり、国際的な指導力を回復させるとしているそうです。 【11月6日 朝日】

(2)日本の評価
そんななかで“日本は・・・”と言うと、すこぶる評判が悪いようです。
****バリ会議:日本がワースト賞総なめ 環境NGOの批判集中*****
COP13で、京都議定書に定めのない2013年以降について、温室効果ガス削減目標を示さない日本に非政府組織(NGO)の批判が集中、NGOが4日選んだ「本日の化石賞」の1位から3位までを日本が総なめにした。
地球温暖化防止の交渉を妨げている国に批判を込めて贈る同賞は、世界の300以上のNGOが参加する気候行動ネットワーク(CAN)が投票で毎日選ぶ。
初日の討議で日本は「ポスト京都」の枠組みの要件を提案したが、先進国の削減目標を示さなかったことが1位の理由となった。
2位は、10周年を迎える京都議定書を「汚した」との理由。
3位は、発展途上国への技術移転に真剣さが見られないなどとして日本、米国、カナダの3カ国に贈られた。【12月5日 毎日】
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こんなものあります。
*****バリ会議、「日本とカナダが進展の障害」と環境団体が警告****
環境保護団体などは5日、先進国を対象とした拘束力のある温室効果ガス削減の数値目標から日本とカナダが離脱する恐れがあると警告した。
米国環境トラストのアンダーソン氏によると、日本は強制力のある統一した温室効果ガス削減目標を課すよりもむしろ、各国が自主的な削減目標を設定し、国際社会が進行度合いを検討するシステムにする案を復活させたという。同氏は「最も困るのは、そのほうが米国がより積極的になると日本が考えていることだ。現大統領の下ではそうかもしれないが、最終合意の交渉時には大統領は変わっているのに」と話している。【12月5日 AFP】
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(3)日本の対策
もとより自然界の、しかも長期にわたる複雑な現象の因果関係を科学的に明快に説明することは今の科学レベルでは非常に困難なことです。
温室効果ガスにしても、「本当だろうか?」という疑念は完全には払拭しきれませんし、異論を唱える研究者も多いかと思います。
しかし、100%明らかになるまでは行動しない・・・というのでは恐らく手遅れになる危険が非常に大きいと思われます。

11月に承認された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第四次評価報告書では、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇の殆どは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い。」とされています。
ここで言う“可能性がかなり高い(very likely)”とは確率90-99%を意味するそうです。
また、同報告書は「温暖化を最小限にとどめるためには世界の二酸化炭素(CO2)排出量を2050年には半減させる必要があり、この20~30年の取り組みが極めて重要」との認識をしめしています。

現段階で得られる最高レベルの専門的知識を集めての世界的コンセンサスですから、日本政府が明確な異論を唱えるのでなければ、この方向で動くことが求められます。
10月に来日したIPCCパチャウリ議長が会議特別講演で「何かを変えたいならまず自ら行動を」と呼びかけたのに対し、福田首相は開会式で「温暖化は大量生産、大量消費を繰り返すこれまでの経済活動が行き詰まりつつあることを示す。大胆にかじを切らねばならない時だ」と述べたとか。【10月19日 毎日】

その認識にしては日本の現状はあまりに鷹揚な感じがします。
日本の温暖化対策については、「日経エコロミー」で橋本賢氏が、特に産業界側からの対応について詳しく解説されています。(http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20070731cb000cb 
日本という国は温暖化対策にかぎらず、長期的ビジョンに欠けるきらいがあるようにも思えますが、橋本氏のサイトによると、日本政府も何もしていない訳でもないそうです。
以下、政府対策について抜粋します。

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05年に京都議定書が発効し、「6%削減」の目標を国際的にコミットしたのを受けて、政府はマスタープランにあたる京都議定書目標達成計画(主な内容は下記)を策定しました。

・日本経団連自主行動計画(産業界による自主目標の設定と取り組み)
・建築物の省エネ性能向上(大型ビルの建築・修繕時における取り組みを政府に届出)
・BEMS・HEMS普及(ビル・住宅のエネルギーを適切に制御するシステムの導入)
・電力会社による取り組み(原子力発電の稼動時間を増やす、石炭→天然ガスへの燃料転換など)
・新エネルギーの導入推進(バイオマス、風力、太陽光発電など)
・コージェネレーション、燃料電池の導入推進(熱電併給による総合効率向上)
・低燃費の自動車や省エネ家電の普及

しかし、現状は6%削減の目標に対し、2005年の排出量は逆に1990年比で7.8%増。
経済産業省と環境省が今年7月に「見直しに関する中間報告」を発表、「対策の進捗は極めて厳しい状況にある」と評価しています。
中間報告では「特に排出量の伸びが著しい業務部門・家庭部門の対策について、抜本的に強化することが必要」としています。
主な具体的施策は次のようなものです。
 
・自主行動計画の強化(業務部門の適用拡大、目標強化)
・国民運動(1人1日1kgCO2削減)
・機器対策(省エネ基準設定対象機器の拡大、目標強化)
・大企業の技術・資金を利用した中小企業の排出削減(削減効果を大企業が自主行動計画の目標達成に利用)
 ちなみに温暖化ガスの排出権取引制度や環境税については、引き続き「今後の検討課題」として従来どおりの位置づけに据え置かれています。【「日経エコロミー」 橋本賢氏】
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日本では自主行動が原則となっています。
これは公平な目標値・制限値を上からかぶせることが困難なことが背景にあります。
そんな事情で「日本版キャップ・アンド・トレード」もEUのように義務型の制度ではなく、省エネ設備への補助金をインセンティブに、企業の自主参加をベースとしたものだそうです。
(橋本賢氏 http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20071029cb000cb )

しかし、“6%削減の目標に対し、逆に1990年比で7.8%増”という現状は“自主行動”の限界を示しているようにも思えます。
CO2の無対策の放出は、かつての公害問題における“有機水銀等の有害物質垂れ流し”と同様に、もはや社会的に容認されない行為であるという厳しい認識にたった施策が必要とされるように思えます。

同時に、消費者が“生産者がどれだけ温室効果ガス削減努力をしているのか”わかる仕組みを導入することで、削減努力の程度が製品販売に影響するかたちで、企業に“自主的な”削減努力に向かうようなインセティブを持たせられれば、事情は随分と変化するように思えます。

コメント
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