孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  石油パイプライン盗掘で大事故 悲しい貧困

2007-12-28 22:03:29 | 世相

(2007年World Press Photo Contestで受賞した有名な写真
ロイターカメラマンAkintunde Akinleyes撮影、
ナイジェリア首都ラゴスで2006年12月26日起こったパイプライン爆発事故、顔からすすをぬぐう男性。 
“flickr”より dicciomixteco)

アフリカの軍事大国ナイジェリアは世界有数の産油国ですが、紛争や部族対立などのニュースが絶えません。
40年前には200万人の餓死者を出すビアフラの惨劇があり、現在も反政府勢力が日常茶飯事のように外国人誘拐を繰り返し、ときに石油施設への攻撃を行っています。
多くの組織が入り乱れて、金銭目的の誘拐も多いようです。
このあたりの事情は7月7日の「原油価格とナイジェリア “ビアフラの悲劇”の記憶」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070707)でも取り上げました。

上記ブログから一部再録します。
油田があるナイジェリア南部はニジェール川河口の“ニジェール・デルタ”と呼ばれる地域。
250以上の言語を話す40以上の民族が住むと言われています。
ナイジェリアの政治的実権は北部出身者で占められていること、年間数百億ドルもの石油利益があるにも関わらず南部地域住民の3分の2は1日1ドルの貧困線以下の暮らしを余儀なくさせられていること、石油開発で環境破壊が進行していることなどから、このニジェール・デルタでは激しい反政府活動が続いています。

先日、そんなナイジェリアの石油パイプライン事故のニュースがありました。

*****ナイジェリアの石油パイプラインで火災、少なくとも45人が死亡******
首都ラゴス近郊の石油パイプラインで25日、住民が地中のパイプラインから原油を盗み取ろうとしている最中に引火して火災が発生し、少なくとも45人が死亡した。
 ナイジェリアでは国民の9割が1日2ドル以下で生活しているため、大きな危険を冒して原油を盗もうとする者が多く、こうした事故がしばしば発生している。
 昨年の12月26日には、別の地域でパイプラインが爆発し、250人以上が死亡した。【12月27日 ロイター】
****************************************

最初見出しを見たとき、反政府勢力の妨害活動かと思いました。
実際今年の5月には、ニジェールデルタ解放運動(MEND)が3つの主要石油パイプラインを破壊する事件もありました。

しかし、今回は石油盗掘から生じた事故です。
ナイジェリアで産出される原油の5%は窃盗団などの組織によって盗まれているともいわれます。【06年12月27日 ウィキニュース】
そして、そこには大勢の住民がおこぼれにあずかろうと群がります。
そして何らかのきっかけで石油に引火、爆発、火災、大勢の犠牲者・・・そんな事故があとをたちません。

今回の記事でも触れているように、昨年の同時期にも同様の大惨事がありました。
昨年12月の事故では、25日夜窃盗団がパイプラインの一部に穴を開けて5台のタンクローリーで15万リットルの石油を満載して逃亡。
その後、多数の人々が残った石油を盗んでいました。
そして早朝ごろに大規模な爆発が起こりました。
付近の住宅に燃え広がったため、寝ていた住民の多くも死亡しました。
引火原因については、窃盗団の1人がマッチで故意に火をつけたとの説もあったようです。


昨年5月にもやはり200人規模の犠牲者を出す同様の事故がありました。
過去10年間に同様の事故によって2,000人が死亡していると言われています。
ですから、住民も石油盗掘がいかに危険かは十分に承知していると思いますが、それでもその石油に石油缶を手にして群がる人々・・・缶1杯の石油に命を懸ける・・・貧困のなせるわざです。

遺体の幾つかは人だとわからないほど黒こげになります。
昨年12月の事故ときの地元男性のコメント「たかだか数千ナイラのためにこんな死に方をするなんて! 家族にだって遺体の区別なんか付かないだろう」【06年12月27日 AFP】

石油は膨大な富を生む魔法の水です。
しかし、ナイジェリアの不幸はむしろこの魔法の水でもたらされているようにも思えます。
富の独占、広範な貧困、油田地帯を巡る民族紛争・・・。
みんなが“石油さえ手にすれば・・・”と争います。

石油を梃子にロシア経済を立て直し、なんだかんだ言っても国民の支持を集めているプーチン大統領などは、その意味では非常にうまくやったのかもしれません。

それにしても、缶1杯の石油に命を懸ける貧困を思うと、悲しいとしかいいようがありません。


コメント
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