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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  時代は変わる・・・しかし、何処をめざすのか?

2007-12-10 13:23:35 | 国際情勢

(かつての軍事最前線“金門島”も今は観光スポット 戦車を前にポーズをとる女性は台湾からの観光客でしょうか?それとも中国本土からでしょうか。 “flickr”より By hui hui71)

台湾の“金門島”というと、中国・台湾が対峙する超緊張状態のホットスポット・・・というイメージを私は持っていましたが、随分時代遅れの考えだったようです。
金門島は台湾本島からは台湾海峡をはさんで300km近く離れ、逆に中国本土の厦門(アモイ)とは狭いところではわずか2.1kmという、殆ど本土に接するような島です。
かつては、58年の金門砲戦で多数の死傷者をだすなど文字通り“軍事最前線”で、砲台が築かれ、地雷が埋設された要塞の島でした。



しかし、軍事的にも大砲を打ち合うような時代は終わりミサイルの時代となって、金門島の軍事的意味は大きく変わったようです。
台湾駐留軍の人員は最盛期の20分の1に減らされ、昨年6月からは地雷の一部が撤去されています。
それ以上に変わったのが経済的関係で、01年、アモイ・金門間で「小三通(直接通航・通商・通信)」と呼ばれる政策が実施されて、中国との関係について規制緩和が進んできました。
今では両岸を結ぶ直航フェリーは1日12往復にまで増便され、島内には中国人専用の観光バスが走り回る状況だそうです。

福建省からがアモイ経由で金門島にわたる観光ルートが開通したのは04年12月。
05年の観光客は3320人、06年には1万7000人と、爆発的な増加を遂げているそうです。
地元商店にとって、金払いのいい中国人観光客は「最上客」だとか。

台湾本島では“独立”が焦点ですが、金門では逆に“アモイとの間に橋を架け、大陸からの大型投資を呼び込む・・・”という本土との一体化を進めたい意向があるそうです。【12月6日 産経】

“時代の変化”を感じさせる話題がもう1件。
*****蒋介石元総統の座右の銘の看板、取り外しへ******
台湾の観光名所「台湾民主記念館」(中正記念堂)の広場で、正門に掲げられた蒋介石元総統の座右の銘「大中至正」の看板が取り外されることになった。
6日、広場で賛成、反対両派のもみ合いがあり、地元記者5人がけがを負った。
「大中至正」は中庸が最も正しいという意味で、蒋介石の座右の銘。蒋は「蒋中正」とも名乗ったため、蒋介石統治の象徴とも見られてきた。
看板は、90年代に民主化運動がこの広場で起きたことにちなみ「自由広場」に変更される。
蒋介石への個人崇拝を否定し、「脱中国化」を目指す陳水扁政権の方針で、今年5月の記念館の名称変更に沿う措置。ただ国民党などには立法院(国会に相当)の議決のない名称変更は認めないとの意見もある。【12月7日 朝日】
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陳総統は6日、自身のメールマガジンで「蒋介石の威光を維持し続けることは反民主、反人権であり、反台湾でもある」と説明。
一方、国民党の総統候補、馬英九・前主席は「狙いは対立を作り、選挙で優位に立つことにある」と批判。
民進党の戦略に乗らず、冷静に対処すべきだと呼びかけたとか。【12月8日 毎日】
蒋介石を擁することが“反台湾”ね・・・、これまた時代は変わるもです。

金門島に中国本土からの観光客があふれ、蒋介石ゆかりの看板が撤去される・・・中国との“一体化”と“独立”という全く逆の流れを象徴するようですが、確実なのは時代が変化しているということのようです。
しかし、この変化は先の見えない危ういものをはらんでいます。

これまで中国と台湾の関係は「ひとつの中国」というキワードのもとで、互いにその代表権を争うというのが基本的な構図でした。
そして「ひとつの中国」が具体的に意味するもの、現実とのギャップ、あるいは、もし両者で軍事衝突が起こった場合、アメリカは中国と事を構えて軍事介入するのか・・・そういった事柄については敢えて“玉虫色”にすることでお互いが都合のいいように解釈する、その“あいまいさ”によって東アジア秩序の現状が維持されてきました。

「ひとつの中国」というあいまいなフィクション・虚構を捨てて、“独立”というかたちで白黒をはっきりさせたい・・・という台湾における民族的機運の高まりは、国連再加盟も門前払いされる現状を考えると、理解できるところです。
ただ、台湾の心情は理解はできますが、中国にとっても台湾の帰属は他のいかなる問題にも優先する特殊問題であり、“国際世論を考慮して”自制することが困難な問題でもあります。
どんな理性的な中国人でも、話が台湾に及ぶと表情が一変する・・・とも言います。

一旦事が起こると、アメリカを巻き込み、更には“集団的自衛権”から日本も決断をせまられる場面もありえます。
また、逆に台湾を再度非情に切り捨てる行為も出来ればとりたくもありません。
東アジアの住人である万事“事なかれ”主義の私としては、「ひとつの中国」に代わる枠組みができていない段階での性急な行動は控えてもらいたいというのが本音です。

アメリカも基本的には同様の考えから、台湾の独立志向をけん制してはいますが、こういう動きは中国・アメリカが外から圧力をかけるほど台湾内部で燃え盛る・・・という性格もあります。
来年3月には総統選挙が予定されています。

“統一”を党是とする国民党の馬英九候補も“現状維持”を公約に掲げており、台湾の人々も多くは“事を荒立てることはしたくない”という気持ちではないでしょうか。
その意味で今回の総統選挙自体は“統一”・“独立”がぶつかるものではないですが、総統選挙に併せて「台湾の名で国連に新規加盟を行うことに賛成か、反対か」を問う公民投票が予定されています。
北京オリンピックを控えた中国が事を荒立てることは、直ちにはないと思いますが・・・。

その中国も10月の共産党大会において胡錦濤総書記は、「いかなる台湾の政党であれ、(台湾海峡)両岸が一つの中国に属することを認めるならば、交流・交渉を願っており、いかなる問題でも話し合うことができる」と述べ、かつての江沢民総書記の「「武力行使放棄の約束はできない」などの強硬発言からすると、対話を重視する姿勢を示しています。
一方で胡錦濤総書記は「いかなる名義、方式であろうと、台湾を中国から切り離すことは絶対許さない」「主権や領土に関する問題は台湾同胞を含む全中国人が決定する」と語気を強め、台湾の国連加盟の住民投票計画などを暗に非難したそうです。【10月15日 読売】

落としどころの見えない問題ですが、時代は変化します。
中国も国民党も、中国・台湾の経済関係も。
中国の民主化が進展すれば、台湾側の議論もまた変わるのでは。
あと20年後ぐらいには、もう少し話し合える余地が出来てくるのでは。

コメント
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