孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  今日も続く戦い、日本は?

2007-12-16 15:48:15 | 国際情勢

(カブールの墓地を行くアフガン女性 “flickr”より By willy61)

アフガニスタン国防省は今月10日、アフガニスタン国軍とNATO主導の国際治安支援部隊(ISAF)などが、今年2月からタリバンが占領を続けていた南部ヘルマンド州ムサカラ地区中心部を奪還したとの声明を発表しました。
ムサカラ地区はイギリス軍がタリバンとの休戦協定を結び撤退した後、タリバンが侵入し、国内最大のタリバン出撃拠点となっていました。

今回の作戦は、アフガニスタン軍とISAF部隊に加え、米軍主導の多国籍軍から米兵約200-300人が参加して行われましたが、(実態はわかりませんが)アフガニスタン軍を前面に立てた作戦であるとされています。
ブラウン英国防相は「これは重要な作戦である。最も重要な点は、アフガン軍が作戦を主導していることだ」と語っています。
また、ヘルマンド州の英軍報道官は「作戦はムサカラの入り口を突破するまで継続する。突破口が開ければ、アフガン軍が進攻する」と述べていました。【12月10日 時事】

ムサカラ地区奪還には成功しましたが、ISAFの状況は相変わらず厳しいようで、指揮するNATO、また、アメリカからは苛立ちとも思える発言が相次いでいます。

ゲーツ米国防長官は11日、アフガニスタンで紛争が激化しているとして、NATO同盟諸国に対し、アフガニスタン駐留部隊の兵力、装備などを増強するよう呼び掛けています。
また、統合参謀本部マレン議長は、NATOが主導するISAFの働きを評価しながらも、作戦能力に不足があると説明。同時に、米軍はイラクでの作戦も抱えており、アフガンでできることは限られていると強調しています。
【12月12日 時事】

来日したNATOのデホープスヘッフェル事務総長は14日、アフガニスタンでの支援活動について、「地上部隊についても空軍部隊についても完全には満足していない」と同盟国からの部隊派遣が不足していることに苛立ちを明らかにしました。
同事務総長は、“NATOはタリバンと戦うために必要な地上兵力の約90%しか得られておらず、残る10%を補充することができない現状にある”と語っています。【12月14日 AFP】

アフガニスタンに駐留軍部隊を派遣している主要8か国の国防相会議が14日イギリスで開催され、タリバンとの戦闘が激化しているアフガン南部で各国が負担共有を進めることで合意しました。
米英軍は、タリバンの攻勢で死者数と駐留経費が増大しており、今後は他国にも南部での任務分担を強く求める方針だそうです。
ブラウン英国防相は、「我々は同盟国に対し、アフガニスタンの難問解決への貢献を求めていく」と語っています。【12月15日 読売】

日本の支援を呼びかける声も出ています。
以前からも同様の話がありますが、先述のNATOデホープスヘッフェル事務総長は「ヘリコプターや輸送機など輸送能力が足りない」「日本の憲法の制約は承知しているが、例えば文民による支援として民間のヘリをアフガンに派遣することはできないか」と提案し、日本側の関係者にもこうした案を伝えたそうです。 【12月14日 時事】

その日本はアフガニスタンに関しては新テロ特措法によるインド洋上での給油活動ということになる訳ですが・・・。
聞こえてくるのは“国際貢献”とか“日米関係”といった言葉ばかり。
最近に至っては、衆議院における再可決、参議院での首相問責決議、解散総選挙といった政局がらみの話ばかりです。

今アフガニスタンで繰り広げられている戦いが何のための戦いなのか?
なぜタリバンではだめなのか?
なぜカルザイ現政権を支援するのか?
そのことはアフガニスタンに暮らす人々にとってどういう意味があるのか?
そういった一番入り口になるべき議論が殆ど聞こえてきません。

また、ISAFの苦境が報じられたりしますが、現在の全般的戦況はどうなっているのかも定かではありません。
軍事的支援によらない活動が、日本や他の国々でどのように展開せれているのかもよくわかりません。

個人的にもわからないことだらけです。
基本的なことで恥ずかしいのですが、ISAFと“米軍主導の多国籍軍”の関係がわかりません。
ISAF設立根拠である安保理決議1386は、ボン合意の付帯文書の規定に基づきその履行措置として採択されたそうです。【ウィキペディアより】

付帯文書内容は要約すれば、「この会議の参加者一同は,アフガニスタン新政府が自国の責務としての治安・秩序を維持し、安全な環境下で国連・NGO等の活動ができるように、保安部門及び国軍の創設についてアフガニスタン新政府を支援する。当面の措置としては、国連の安全保障理事会に対し、カブールならびにその周辺地域での治安維持支援を行う国連授権のある部隊の早期派遣を求める。」というものでしょうか。

一方、アメリカの「不朽の自由作戦(OEF)」の法的根拠は、国連憲章第51条の規定に基づき、攻撃開始の当日である2001年10月7日に米英両国により安保理に提出された次の書簡にあるとされています。【ウィキペディアより】

書簡は要約すれば、「米国は9.11の軍事攻撃に対する個別的又は集団的な固有の自衛の権利の行使として他の諸国とともに行動を開始したことを、国連憲章第51条の規定に基づき報告する。」ということでしょうか。

明確に趣旨は異なる二つの活動ですが、段階的に指揮権がOEFからISAFへ委譲され、06年10月の東部指揮権委譲で全て完了しています。
また、ISAFの参加国としてアメリカは15000名という最大の派兵国です。
ISAFの指揮権は各国持ち回りになっており、今現在はどうかしりませんが、今年2月からはアメリカが担当しています。

よく“ISAFと米軍主導の多国籍軍は”という表現を今でも見ますが、ISAFの枠外に存在する米軍または多国籍軍というのが何のか?インド洋上の活動もそれにあたるのでしょうが、ISAFとの関係がどうなっているのかどうもわかりません。

いずれにしても、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という日本国憲法の趣旨に照らすと、9.11の報復戦争としてのアメリカの軍事行動への協力・参加は排除されるべきもののように思えます。

しかし、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって」という日本国憲法前文の趣旨からすれば、また、アフガニスタンの地で“専制と隷従、圧迫と偏狭”が行われようとしていると考えるのであれば、これを座視して国内に閉じこもっていてよいとはならないかと考えます。

その場合はISAFに繋がる活動か、または、軍事行動とは切り離した文民支援ということになります。
現行憲法とのすり合わせは難しいかもしれませんが、将来的には、他国民を専制と隷従、圧迫と偏狭から救い出し、“基本的人権と人間の尊厳及び価値を確認し、正義を確立し、一層大きな自由の中で市民が生きていけるような世界を創っていく”【国連憲章より】活動であれば、自衛隊派兵・戦闘行為への参加もありえるのではないかと考えています。

また、将来のそのような行為においてはもちろん、現行とりうる活動においても、現地の実情を考えれば参加した日本人の犠牲を完全に避けることはできないと思われます。
決して“国際貢献”といった浮ついた抽象的文言ですむ話ではありません。

以前も別の場所で述べたように、それはその活動の趣旨を国民が理解するのであれば、また、その活動によって救われる現地の人々の生命・人権・自由を考えるのであれば、流す血は日本人としての誇りとすべきものであり、必要以上に厭うべきものではないと考えます。
逆に言えば、そのように思えるかどうか、国民の間で活動の趣旨・意味について十分な議論が行われ、ある程度のコンセンサスを得る必要があろうかと思います。

また戯言になってしまったので今日はおしまい。

コメント
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