過去に背を向けなさい
将来だけに目を向けるのです
いいですか、時がすべてをいやすのです
『ナイル殺人事件』より ポワロ
Photo from JUST
というわけで、『名探偵ポワロ』第34巻は「ナイルに死す」。
私、この作品を子どもの頃に、原作を読む前に映画で観て、
そのトリックに度肝を抜かれたんですよね、懐かしい。
サイモン・ドイルの名を、こんなにくっきりはっきり覚えていたとは、
我ながらびっくりしました。
ドラマ版の「ナイルに死す」も、とてもよかったと思います。
TVとは思えないほどロケ(もしくはセット)にも手をかけているし、
風景がとにかく美しい。船もエキゾチックでステキ。
最初に引用したポワロさんのセリフもちゃんとありました(訳は違いましたが)。
この直後の「愛がすべてなの。わかるでしょ」という問いかけに
「欠けておりました。それが、私の人生には」と返すポワロさんに
ちょっとドキッとしたり(私にも欠けております…)
ドラマの開巻、貧しいながらも愛し合っている二人の会話が
どちらの意味にもとれる、というのもいいですよね。
終幕、またこの二人の場面に戻るのですが、
この二人はこの時が一番幸福だったに違いない、と思えて、
不覚にも涙ぐんでしまいました(最近、涙腺が弱いなあ)。
そんなわけで、映画の方の『ナイル殺人事件』も借りてきてしまったのですが、
こちらはこちらで面白かった!
ドラマ版よりも一層「乗客全員が容疑者」という状況が際立っていて、
しかも、ポワロさんの推理をいちいち映像でやってみせてくれるので
どれも本当っぽくて、そりゃ子どもが観たら翻弄されるよな、と。
ピーター・ユスチノフのポワロは、外見がまったくポワロらしくないのですが、
しかしちゃんとポワロに見えてくる、というすばらしさ。名優ですね。
オールスター映画なのですが、オリビア・ハッセーがとにかく可憐。
(うちの叔父は、エジプトでこの映画のロケに遭遇して、
オリビア・ハッセーと写真を撮っています。いいなあ)
あと、マギー・スミスも出演していたのですが、さすがに若い!
衣装も一人徹底して宝塚の男役みたいなスタイルで、かっこよかった。
ベティ・デイヴィス演じる貴婦人の看護師兼付き添いの役でしたが
お互いに結構なことをげしげし言い合っていて、笑えました。
いまやマギー・スミスが『ダウントン・アビー』の伯爵夫人ですものね。
時の流れを感じてしまいます。
時の流れと言えば、子どもの時には度肝を抜かれたこのトリックも、
大人になって見るといろいろとアラも見えたりするのでした(^^;
例えば、かなりの強運に恵まれていないと成立しない!という辺りですね。
でも一方で、ファーガソンくんの恋の顛末は、ドラマ版の方が好きかも、
というのも、大人になったからこその愉しみ方なのかもしれません。