水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (91)比較

2020年10月22日 00時00分00秒 | #小説

 数(かず)では表せないから、よく分からないが、我が国が第二次大戦後、よくなったか? あるいは悪くなったか? を比較してみることにした。やっぱりアンタは暇(ひま)な人だ…と思われる方も大勢おられると思うが、これはこれで重要なので、真剣に比較してみたい。別に竹光(たけみつ)でもいいよ…と思われる方は、美味(おい)しい焼き豆腐の味噌田楽を肴(さかな)にビールでも飲んでいてもらっても、一向に構わない。[真剣と竹光の刀ギャグです]^^
 とある老夫婦の会話である。
「どうなんだろうな?」
「なにがっ?」
「戦後、この国はよくなったのかねぇ~?」
「そら、焼け野原からこんないい暮らしが出来るようになったんだから、よくなったのよっ!」
「そうかい? 俺にはそうは思えない」
「どうして?」
「確かに生活程度を比較すりゃよくなったよ。なったけど、悪くなったことも多いぜっ!」
「例(たと)えばっ?」
「例えば、悪質な事件が増えたとかポイ捨ててもなんとも思わない人が増えたとか…」
 そのとき孫娘が現れ、話に加わった。
「ポイ捨ては以前からあったでしょ?」
「いや、物資がなかった時代はなかった。拾う人は多かったが…。バ
タ屋なんて商売もあったんだぜ」
「…バタ屋?」
「ああ。拾った煙草(たばこ)の吸殻(すいがら)、そうそう! 確か…湿気(しけ)モクとか言ってたなっ! そいつの紙を取って煙草の葉を天日干ししたあと、また半紙で巻き直して、一本、いくらとかで売る商売だ」
「ふぅ~~ん…」
 孫娘は聞き流してスゥ~っと二人から消えた。
「まあ当時はフィルターがなかったから、捨てられても自然と消えちまったが…。今はフィルターがゴミでいつまでも残るからなっ! この点だけでも、比較すりゃ、かなり悪くなってるっ!」
「あなたの髪の毛も当時と比較すりゃ、かなり悪くなってる…」
「んっ!? ああ、まあな…」
 このように比較する内容は身近でよく分かるものから、社会のよく分からな事柄(ことがら)まで、様々(さまざま)ある訳だ。^^


                   完


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