誰にだって秘密(ひみつ)はある。内容がその人以外は分からないのが秘密だが、バレていたり漏(も)れている場合も当然ある訳だ。^^ 秘密には小さくて可愛い秘密からドス黒くて悪質な秘密まで、いろいろとある。「…そうそう! へそくりがあったわっ!」などど奥様方がご主人に隠して蓄(たく)えられたお金などは、まだ可愛い秘密だろう。^^
ここはとある時代の国会議事堂である。衆議院では予算委員会が開かれており、矢面(やおもて)に立たされた大臣が渋(しぶ)い顔つきで答弁をしている。
「分かりましたっ! そこまで言われるには、確たる証拠がお有りなんでしょうなっ!? 私も場合によっては腹を切らなくっちゃならないっ!」
質問した議員の手が、サッ! と上がった。
「…芋崎(いもざき)君!」
委員長が眠そうな顔で議員の名を呼ぶ。
「ははは…切腹はされなくてもいいでしょう! 辞職はしていただかなきゃならんかも知れませんが…。まあ、関係当局の捜査も入っておることですから、これ以上、私は追求しようとは思っておりません。大臣に秘密のないことを祈るのみです。以上ですっ!」
質問した議員が席に座った。
「委員長!!」
怒ったような顔つきで大臣が手を挙(あ)げる。
「はいっ! 」
「失敬なっ!! 秘密など一切、ございませんっ!!」
質問席の議員は手を挙げない。
「いいですかっ? …はい。芋崎議員の質問は、これにて終了いたしました。では、暫時、休憩いたします…」
委員長が眠そうな目を擦(こす)りながら休憩を告げると、出席していた議員達がザワザワと席を立ち始めた。
議員達が昼食に何を食べるか? という秘密までは、審議の真実以上に私にも分からない。^^
完